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42.早く明日にならないかな。
しおりを挟むそんなやり取りをしているうちに、あっという間に駅に着いてしまう。
「また、後でLINEするから」
「分かった。明日は仕事場で一緒だけどくっつくなよ」
「分かったよ。人が居ない時はいいんだよな」
「まぁ、人が居ない時はな」
「やった!」
「じゃあ、俺こっちだからまた明日な」
改札の前で別れようと旭が手を離そうとすると、敦は手を握り返して引き止める。
振り返ると真剣な表情をした敦と目が合って、旭はドキッとしてしまった。
そのまま手を引かれて駅のホームの端の方へと連れていかれると、そのまま強く抱きしめられる。
「しばらくこうしてていいか?」
耳元で甘く囁かれた旭は心臓が高鳴るのを感じると、頷いて背中に手を回した。
「今日は本当に楽しかった。こんなに楽しいデート初めてだ」
「俺も楽しかったよ。お互い初めてだらけだな」
「あぁ。俺さ、今まで生きてきた中で今が一番幸せかも」
「大袈裟だな」
「そうかな。本当に好きな人と両思いになって初めてのデートしたんだからそう思うだろ」
敦の言葉に胸がキュンとなって切なくなった旭は、回している腕に力を込めた。
「そんな事されたら、離れたくなくなるだろ」
敦も同じように強く抱きしめると、二人の鼓動が重なり合う。
「じゃあ、キスしたら離れような」
旭が顔を上げると、敦の顔が近づいてくる。
ゆっくりと目を閉じると、唇に柔らかい感触が伝わってきた。
啄むようなキスを何度もされる度に、だんだんと体が熱くなっていく。
このまま時間が止まればいいのにと思いながら、敦のキスを受け入れていると、電車が到着するというアナウンスが聞こえてきた。
名残惜しそうに唇を離すと、お互いの額をくっつける。
そして、最後にもう一度だけ触れるだけのキスをした。
「それじゃあ、また明日な」
「あぁ。おやすみ」
そう言うと、敦は手を振りながら改札へと歩いて行った。
その後ろ姿を見送った後、旭も自分の最寄りの路線の改札に向かって歩き出す。
さっきまで隣に居たのに、もう逢いたくて仕方がない。
(早く明日にならないかな)
そんな事を考えながら歩く足取りはとても軽かった。
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