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73.あの二人っていつもこう喧嘩してるの?
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スーパーから出て敦の家へと向かった二人は、玄関先で部屋の中から聞こえる怒鳴り声に驚いていた。
「あの二人っていつもこう喧嘩してるの?」
「いつもはこれほどじゃないけど、たまにしてる」
顔を合わせて、どっちが喧嘩を止めようかじゃんけんをしようとした時、玄関の扉が開いた。
「おかえり、旭。荷物重かったろ」
「敦!ちょっとどけよ。明、おかえり」
競うように玄関から飛び出てきた二人に、旭と明は目を丸くしながら驚いた。
「ただいま。ちゃんとメモに書かれてた物買ってきたから、とりあえず中に入れて」
旭と明が呆れながら二人を見ると、しょげた顔をしながら部屋の中へと引っ込んでいった。
まるで犬みたいだなと思いながら、靴を脱いでから部屋に上がって、キッチンへと向かう。
テーブルの上には綺麗に積み重なった和食器と箸とスプーンと冷たい緑茶とグラスが準備されていた。
旭は明から買い物袋を受け取ると、買ってきた物をキッチンへと運んでいく。
そこには、しょげながらすし飯の準備をしている敦がいた。
「新さんと、何喧嘩してたの?」
旭が、玄関先で聞こえた怒鳴り声の原因を確かめようと敦に尋ねると、敦は泣きそうな顔をしながら旭を見つめた。
「新が俺の事いじめるんた。だから、俺もムキになって……」
今にも泣きそうな敦を見て、旭は慌てて駆け寄って涙を拭おうと、顔に手を添えた。
敦の暖かい頬の温もりが手に伝わってきたかと思うと手を重ねられ、段々と顔を近づけられる。
「旭、騙されるなよ!喧嘩の原因は何処の席に誰が座るかで揉めてただけだからな!」
それを見ていた新が、敦を睨みつけながら忠告すると、旭は胸を撫で下ろした。
「なんだ、そういう事だったのか」
旭が敦の頬から手を離して、買い物袋の元へと向かうと、敦も余計な事を言うなと言わんばかりに新を睨みつけた。
「で、誰が何処に座るか決まったの?」
椅子に座りながら、緑茶をグラスに注いで飲んでいた明が尋ねると、新が聞いてくれよと、駆け寄る。
「俺の隣には絶対に明が座るだろ、そんで、明の前に旭が座って横に敦が座るとすると、俺と敦が向かい合わせになるわけだ。それをこいつは嫌だっていうんだよ」
「嘘つくな!お前も、嫌だって言ったろ!」
また、火花が散りそうなほどに睨み合う二人を、まぁまぁと明が宥めるように間に入る。
「じゃあ、俺の目の前に敦が座ればいいじゃん」
「そうしたら、旭の前は新さんだろ。そんなの絶対に許せない」
「俺だって、明の前に敦だけは置けないな」
「じゃあ、キッチンとリビングに席分けて食べれば?」
「それじゃ、パーティーの意味ないだろ」
「もぉっ!!二人ともめんどくさいな!それじゃ、立ちながら自由に食べればいいじゃん」
明の名案に二人とも顔を見合わせながら、なるほど、と頷く。
「そうだな。リビングのテーブルなら立って食べても低くない高さだし、手巻き寿司なら皿持って食べればいいしな」
「流石、明だ!」
そうしているうちに、台所から卵を焼く香ばしい香りが漂ってくる。
「ほら、敦はすし酢の準備して、二人は買ってきた具材をお皿に並べて」
「はーい」
三人の声が重なると、四人とも笑顔になり和やかな空気が広がった。
「あの二人っていつもこう喧嘩してるの?」
「いつもはこれほどじゃないけど、たまにしてる」
顔を合わせて、どっちが喧嘩を止めようかじゃんけんをしようとした時、玄関の扉が開いた。
「おかえり、旭。荷物重かったろ」
「敦!ちょっとどけよ。明、おかえり」
競うように玄関から飛び出てきた二人に、旭と明は目を丸くしながら驚いた。
「ただいま。ちゃんとメモに書かれてた物買ってきたから、とりあえず中に入れて」
旭と明が呆れながら二人を見ると、しょげた顔をしながら部屋の中へと引っ込んでいった。
まるで犬みたいだなと思いながら、靴を脱いでから部屋に上がって、キッチンへと向かう。
テーブルの上には綺麗に積み重なった和食器と箸とスプーンと冷たい緑茶とグラスが準備されていた。
旭は明から買い物袋を受け取ると、買ってきた物をキッチンへと運んでいく。
そこには、しょげながらすし飯の準備をしている敦がいた。
「新さんと、何喧嘩してたの?」
旭が、玄関先で聞こえた怒鳴り声の原因を確かめようと敦に尋ねると、敦は泣きそうな顔をしながら旭を見つめた。
「新が俺の事いじめるんた。だから、俺もムキになって……」
今にも泣きそうな敦を見て、旭は慌てて駆け寄って涙を拭おうと、顔に手を添えた。
敦の暖かい頬の温もりが手に伝わってきたかと思うと手を重ねられ、段々と顔を近づけられる。
「旭、騙されるなよ!喧嘩の原因は何処の席に誰が座るかで揉めてただけだからな!」
それを見ていた新が、敦を睨みつけながら忠告すると、旭は胸を撫で下ろした。
「なんだ、そういう事だったのか」
旭が敦の頬から手を離して、買い物袋の元へと向かうと、敦も余計な事を言うなと言わんばかりに新を睨みつけた。
「で、誰が何処に座るか決まったの?」
椅子に座りながら、緑茶をグラスに注いで飲んでいた明が尋ねると、新が聞いてくれよと、駆け寄る。
「俺の隣には絶対に明が座るだろ、そんで、明の前に旭が座って横に敦が座るとすると、俺と敦が向かい合わせになるわけだ。それをこいつは嫌だっていうんだよ」
「嘘つくな!お前も、嫌だって言ったろ!」
また、火花が散りそうなほどに睨み合う二人を、まぁまぁと明が宥めるように間に入る。
「じゃあ、俺の目の前に敦が座ればいいじゃん」
「そうしたら、旭の前は新さんだろ。そんなの絶対に許せない」
「俺だって、明の前に敦だけは置けないな」
「じゃあ、キッチンとリビングに席分けて食べれば?」
「それじゃ、パーティーの意味ないだろ」
「もぉっ!!二人ともめんどくさいな!それじゃ、立ちながら自由に食べればいいじゃん」
明の名案に二人とも顔を見合わせながら、なるほど、と頷く。
「そうだな。リビングのテーブルなら立って食べても低くない高さだし、手巻き寿司なら皿持って食べればいいしな」
「流石、明だ!」
そうしているうちに、台所から卵を焼く香ばしい香りが漂ってくる。
「ほら、敦はすし酢の準備して、二人は買ってきた具材をお皿に並べて」
「はーい」
三人の声が重なると、四人とも笑顔になり和やかな空気が広がった。
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