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9.強引な夫
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ルドガーとソフィが一緒に暮らし始めて三日が経った。
毎日何をしているのかよくわからないソフィと、館前の草むしりを続けるルドガーの日常はあまり交わることがなかったが、食事と夜寝る時だけは一緒だった。
その夜、ルドガーはついに限界を迎えた。
ソフィと離れている間に数回抜いたが、欲望は高まる一方だった。
湯上りのソフィは良い匂いがするし、肌は滑らかで蕩けるように柔らかい。
このままでは眠れないと悟り、ルドガーはソフィに告げた。
「先に寝ていてくれ。少し夜風に当たってくる」
寝台に横になっていたソフィは目を丸くして起き上がった。
ルドガーはさっさと寝室を出て行く。
その後ろをソフィはさりげなく追いかけた。
階段を駆け下り、躊躇うことなく扉を開けるルドガーの背中を凝視する。
その背中はすぐに闇に消え、玄関扉がばたんと閉まる。
ソフィは窓を見上げ、外が真っ暗であることを確かめた。
外についていくべきだろうかと考え、階段を数段下りて足を止めた。
怖いことがあったとしても、命がなくなるわけではない。
あっさり考えを変え、ソフィは静かに寝室に引き返した。
館を出たルドガーは、ランタン一つ吊り下げ、荒れ果てた墓地の間を歩いていた。
熱を持った股間は布地を押し上げて少し痛むし、ソフィの体を思い出すたびに腰を振りたくなる。
闇の中を、白くふわふわしたものが光りながら横切った。
虫だろうかと、ルドガーが視線を向けると、反対側から声がした。
「優しくしてやってくれ」
ルドガーが振り返る。人の気配など感じなかったのに、そこには見知った顔があった。
「ローレンス!夫である俺がいる間は近づくなと言っておいたはずだ。こんな夜中に通っていたのか。ずいぶん夜目がきくものだな」
灯りの届くぎりぎりの場所に長身のローレンスが横を向いて立っていた。
周囲の闇は濃く、足場も悪い。
通いなれている愛人なのだとルドガーは考えた。
さらに、気配がしなかった理由もなんとなくわかっていた。
その物腰は完全に騎士のものだ。イーゼンが亡き英雄騎士だと言っていたが、ルドガーはそうは思わなかった。
なにせ口を聞き、動いているのだ。死人のわけがない。
「お前は変わっている」
ローレンスの偉そうな物言いにルドガーは不愉快な顔になった。
夫に遠慮しなければならない愛人の立場にあるはずなのに、ずいぶん態度が大きい。
しかしルドガーに文句を言う資格はない。
三年も妻を放置し、さらに毎日一緒にいられるわけでもない。
仕事に戻ればソフィは一人でこんな寂しい場所で夫の帰りを待つことになる。
夫が埋められない心の隙間を愛人が埋めているのだとすれば、ソフィにとっては必要な存在だ。
「ローレンス、君には感謝しなければならないと思っている。こんな寂れた場所に通い、ソフィを慰めてくれているのだからな。彼女はこんなところで生涯を終えるにはもったいないぐらい若い。
恋をしたり、遊びに行ったり、買い物をしたり、若い娘なら当然体験するようなことを何もしないで老いていく。
無為に人生を潰しているようで、きっと怒りや悲しみが絶えず襲ってくるのだろう。
それを慰めてくれる存在がいることを良かったと思っている」
頭まで下げようとは思わなかったが、ルドガーは敬意を込め、ローレンスを正面から見つめた。
ローレンスの肌は死人のように青白いが、顔立ちも良く、長身で引き締まった体つきだ。
孤独な女性を慰める役としては、申し分ない容姿といえる。
「だからお前には俺の不在の間、これからも妻を頼みたい。情けない夫だと思うし、正直に言えば、かなり不愉快だし怒りもある。
俺は夫で、一番近くにいるべきなのに、彼女にまだ指一本触れていない。口づけはしたが、それだって彼女に怒られた。愛人の君は彼女を深いところまで知っている。
実にうらやましい。俺は彼女の体をまだ何一つ知らないのに!」
せっかく夜風に当たり体を冷まそうと思っていたのに、ルドガーの股間はまたしても膨らみ、欲望がぶり返してきた。
ローレンスはしばらくの間、目をわずかに大きくして黙っていたが、かすかに微笑んだ。
「なるほど。これは、奇妙な男だ……。ただ、優しくするべきだ。慎重にことを運べ。それが俺からの助言だ」
やはり偉そうな物言いだったが、既にソフィの体を知っている男だ。
ルドガーは不愉快に思ったが、何も言い返さなかった。
ローレンスが背中を向け、ゆっくり暗闇に消えていく。
その手にはランタンの灯りさえない。
これが通いなれた愛人と、情けない夫の差かと肩を落とし、ルドガーも館に引き返した。
その夜、なんとか股間を押さえ込み、ソフィの背中越しに眠ったルドガーだったが、翌朝、頬に当たった強い刺激に目を覚ました。
ソフィが睨んでいる。さらに拳を振り上げ、ルドガーを殴っているのだ。
「ソフィ……」
あっさりソフィの拳を捕まえたルドガーは、ソフィの夜着が胸元まで脱がされていることに気が付いた。柔らかそうな白い胸の先端や、くびれた腰までくっきりと見える。
その下はかろうじて下着の中に隠れていたが、そこにはルドガーの右手が入っていた。
「え?!」
ソフィが自分でそんなことをするわけがない。
となれば、ルドガーが無意識にソフィの夜着を脱がせ下着に手まで入れていたのだ。
そんな夢を見ていた気もするルドガーは、顔を赤くして怒っているソフィに確認した。
「俺が脱がせたのか?」
急いで下着から手を引き抜くと、ルドガーはその指の匂いを嗅ぎたい欲求を抑え込んだ。
「そうよ!朝から私の体を撫でまわして気持ち悪いのよ!」
衝撃的な一言だったが、指は湿っているし、乳房の先端はピンと尖っている。
性的な刺激でソフィの体が興奮している証拠だ。
昨夜のローレンスの姿を思い出し、ルドガーは嫉妬に駆られソフィに襲い掛かった。
「夫なのだから少しぐらいいいだろう?まだ初夜もしていない!」
残念なことに、ルドガーもまだ学校を出て三年しか経っていない若い男であり、大人の男としては物足りないところがあった。
ざらついた顎を押し付け、ソフィの物欲しげな乳房に吸い付くと、舌でその先端を転がしながらしゃぶりつく。
「あっ!んんっ」
困ったことに、ソフィも性的な刺激には慣れていた。体は瞬く間に男の愛撫に蕩け始める。
顔を赤くして横を向くソフィの体を押さえこみ、ルドガーは素早くソフィの最後の下着を抜き取り、腰を押し付けた。
「いやっ!」
やっと拒絶の言葉が出たが、触れたそこは既に濡れている。
夫であるルドガーは初夜もまだなのに、ソフィの体は男の刺激に対しどう反応するべきか既に知っている。
ソフィの愛人たちがソフィの体を開発し、その快感を教え込んだからだ。
ルドガーは口惜しさと情けなさに涙ぐんだ。
「ソフィ、頼む。一回でいいから抱かせてくれ。ローレンスのおこぼれでも仕方がない。俺が悪かった。だから、頼むもう我慢できない」
絶対に嫌だとソフィは拳を振り上げたが、ルドガーは大きな体でソフィを抱きしめ無理矢理開いた股間に顔を埋め、敏感な突起に吸い付いていた。
「んっ……ああんっ……」
快感に弱いソフィは、甘い声を上げて体をのけぞらせ、力なく拳をシーツの上に投げ出した。
獣のようにルドガーはソフィの全身に口づけを繰り返し、舌で舐め、柔らかい肌に歯を押し付けしゃぶりついていた。
どこもかしこも甘く柔らかい。
やはり一夜限りの遊びとはわけが違う。
自分の妻を抱いているのだと思うとルドガーの胸にこれまでになかった感情が込み上げた。
若さ故のこだわりもある。妻に対する独占欲も純粋で強い。
「一回だけだ。ソフィ……」
ルドガーは手を止めず、絶えずソフィの体をまさぐりながら懇願した。
ソフィは激しい愛撫に身をよじり、体を火照らせ甘い声で鳴いている。
ルドガーのうごめく舌も髭の感触も、貪るような唇の動きも、ソフィから冷静な思考を奪っている。
欲望は止まらず、ルドガーはソフィの中に燃えるような肉の塊を押し付けた。
「あんっ……」
ひと際甘い声があがり、勇気づけられるようにルドガーは腰を進めた。
一気に奥まで貫こうとした瞬間、甘く蕩けていたソフィの体が一気にこわばり、両手が固くシーツを握りしめた。
「うっ……」
燃える肉の周りを包み込むソフィの中があまりにも狭く、ルドガーも動きを止める。
「ソフィ……きつい。いや、違う。何か……」
まさかとルドガーは体を引いてソフィと繋がっている場所に目を落とす。
既に夜は明け、窓から弱々しい朝の陽ざしが差し込んでいる。
その淡い光の下に、目が覚めるような赤い染みが広がっていた。
「あっ……まさか……いや、でも……」
ずるりと腰を引くと、シーツに確かな純潔の証が滴った。
逃げようとするソフィの足を押さえ込み、ルドガーはその中をそっと触れて確認し、それからよじ登るようにソフィの体を引き寄せ抱きしめた。
昨夜のローレンスの言葉が唐突に蘇った。
『優しくしてやってくれ』
最後までしていなかったのだ。そんなことがあるだろうか。
混乱しながら、ルドガーは自分の失態を悟った。
「ソフィ……すまない。知らなかった。優しくするべきだった……」
「じゃあ終わり?」
憮然とした声の響き。ルドガーは腕の中に閉じ込めたソフィの怒りに燃える目を確かめた。
もう終わりかもしれない。そう思いながらも、この男はまたもや信じられない暴挙に出た。
ソフィの足を持ち上げ、再び腰を押し付けたのだ。
これだけ怒らせたらもう二回目は許されないかもしれない。
こうなったら子供を作って縛り付けてしまうしかない。
驚くべき短慮で、ルドガーは腰を進め、痛みに泣くソフィの唇を優しくついばんだ。
「ソフィ、優しくする。今度こそ優しくするから。俺の子供を産んでくれ」
最低、最悪な男の一言に、ソフィはそれこそ驚愕し、逃げようともがいたがもう遅かった。
ルドガーは精一杯の忍耐を持って、ゆっくり動き始めた。
痛みにむせび泣いていたソフィも、次第に甘い刺激に流され力を抜いてしまう。
「あ……ん……うん……」
耳元で聞こえるソフィのか細い甘えた声に励まされ、ルドガーは何度も深く体を沈め、最後に存分に子種を吐き出した。奥の奥まで塗り付けるように腰を押し付けながら、ソフィを抱きしめ、やはり愛人の種は入れたくないと心から思った。
「ああ……」
観念したように呻いたソフィの唇を奪い、ルドガーは愛人を寝室に呼びながらも貞操を守ってきた妻を大切に抱きしめた。
「ソフィ……。すまない。寂しい想いをさせた。配属先を近くに変えてもらい、もう少し頻繁に戻れるようにする。ソフィ、ここをもう少し快適な場所に変えよう」
一時の感情に流され勝手なことを口走るルドガーを見上げ、ソフィは不機嫌に顔をしかめた。
「冗談じゃない。私の意見も聞いてくれない夫なんて欲しくない。出ていってよ!」
ルドガーはまたもや衝撃を受けた。貴族で騎士である若いルドガーは、残念ながらここまで女性に嫌われたことがない。
ソフィとは最初からうまくいかなかった。
関係がこじれている状態で、了解を得ないまま夫婦の行為に及んだことは確かに軽率だった。
ここから挽回する方法を思いつくことが出来ない。
「ソフィ……。それでも俺は君の夫だし、その、初夜もまだだった。夫婦をやり直したい。王墓の守りとかそういうのは抜きにしても、俺は君と夫婦としてやっていきたい」
「それはあなたの意見でしょう?私は?私は押し付けられた夫を嫌でも受け入れて、命令されていつでも足を開かなきゃいけないの?」
反論も出来ず、ルドガーは寝室を追い出された。
すっかり落ち込み、屋敷の外に出るとさらに憂鬱になるような光景が待っていた。
どこもかしこも墓ばかりで、他には何もない。
ルドガーは玄関先の階段に座り込み、頭を抱えた。
こんな間抜けな相談はイーゼンにだって出来ない。
「だから言ったのだ。優しくしろと」
不意に頭上から声がして、ルドガーは顔をあげた。
毎日何をしているのかよくわからないソフィと、館前の草むしりを続けるルドガーの日常はあまり交わることがなかったが、食事と夜寝る時だけは一緒だった。
その夜、ルドガーはついに限界を迎えた。
ソフィと離れている間に数回抜いたが、欲望は高まる一方だった。
湯上りのソフィは良い匂いがするし、肌は滑らかで蕩けるように柔らかい。
このままでは眠れないと悟り、ルドガーはソフィに告げた。
「先に寝ていてくれ。少し夜風に当たってくる」
寝台に横になっていたソフィは目を丸くして起き上がった。
ルドガーはさっさと寝室を出て行く。
その後ろをソフィはさりげなく追いかけた。
階段を駆け下り、躊躇うことなく扉を開けるルドガーの背中を凝視する。
その背中はすぐに闇に消え、玄関扉がばたんと閉まる。
ソフィは窓を見上げ、外が真っ暗であることを確かめた。
外についていくべきだろうかと考え、階段を数段下りて足を止めた。
怖いことがあったとしても、命がなくなるわけではない。
あっさり考えを変え、ソフィは静かに寝室に引き返した。
館を出たルドガーは、ランタン一つ吊り下げ、荒れ果てた墓地の間を歩いていた。
熱を持った股間は布地を押し上げて少し痛むし、ソフィの体を思い出すたびに腰を振りたくなる。
闇の中を、白くふわふわしたものが光りながら横切った。
虫だろうかと、ルドガーが視線を向けると、反対側から声がした。
「優しくしてやってくれ」
ルドガーが振り返る。人の気配など感じなかったのに、そこには見知った顔があった。
「ローレンス!夫である俺がいる間は近づくなと言っておいたはずだ。こんな夜中に通っていたのか。ずいぶん夜目がきくものだな」
灯りの届くぎりぎりの場所に長身のローレンスが横を向いて立っていた。
周囲の闇は濃く、足場も悪い。
通いなれている愛人なのだとルドガーは考えた。
さらに、気配がしなかった理由もなんとなくわかっていた。
その物腰は完全に騎士のものだ。イーゼンが亡き英雄騎士だと言っていたが、ルドガーはそうは思わなかった。
なにせ口を聞き、動いているのだ。死人のわけがない。
「お前は変わっている」
ローレンスの偉そうな物言いにルドガーは不愉快な顔になった。
夫に遠慮しなければならない愛人の立場にあるはずなのに、ずいぶん態度が大きい。
しかしルドガーに文句を言う資格はない。
三年も妻を放置し、さらに毎日一緒にいられるわけでもない。
仕事に戻ればソフィは一人でこんな寂しい場所で夫の帰りを待つことになる。
夫が埋められない心の隙間を愛人が埋めているのだとすれば、ソフィにとっては必要な存在だ。
「ローレンス、君には感謝しなければならないと思っている。こんな寂れた場所に通い、ソフィを慰めてくれているのだからな。彼女はこんなところで生涯を終えるにはもったいないぐらい若い。
恋をしたり、遊びに行ったり、買い物をしたり、若い娘なら当然体験するようなことを何もしないで老いていく。
無為に人生を潰しているようで、きっと怒りや悲しみが絶えず襲ってくるのだろう。
それを慰めてくれる存在がいることを良かったと思っている」
頭まで下げようとは思わなかったが、ルドガーは敬意を込め、ローレンスを正面から見つめた。
ローレンスの肌は死人のように青白いが、顔立ちも良く、長身で引き締まった体つきだ。
孤独な女性を慰める役としては、申し分ない容姿といえる。
「だからお前には俺の不在の間、これからも妻を頼みたい。情けない夫だと思うし、正直に言えば、かなり不愉快だし怒りもある。
俺は夫で、一番近くにいるべきなのに、彼女にまだ指一本触れていない。口づけはしたが、それだって彼女に怒られた。愛人の君は彼女を深いところまで知っている。
実にうらやましい。俺は彼女の体をまだ何一つ知らないのに!」
せっかく夜風に当たり体を冷まそうと思っていたのに、ルドガーの股間はまたしても膨らみ、欲望がぶり返してきた。
ローレンスはしばらくの間、目をわずかに大きくして黙っていたが、かすかに微笑んだ。
「なるほど。これは、奇妙な男だ……。ただ、優しくするべきだ。慎重にことを運べ。それが俺からの助言だ」
やはり偉そうな物言いだったが、既にソフィの体を知っている男だ。
ルドガーは不愉快に思ったが、何も言い返さなかった。
ローレンスが背中を向け、ゆっくり暗闇に消えていく。
その手にはランタンの灯りさえない。
これが通いなれた愛人と、情けない夫の差かと肩を落とし、ルドガーも館に引き返した。
その夜、なんとか股間を押さえ込み、ソフィの背中越しに眠ったルドガーだったが、翌朝、頬に当たった強い刺激に目を覚ました。
ソフィが睨んでいる。さらに拳を振り上げ、ルドガーを殴っているのだ。
「ソフィ……」
あっさりソフィの拳を捕まえたルドガーは、ソフィの夜着が胸元まで脱がされていることに気が付いた。柔らかそうな白い胸の先端や、くびれた腰までくっきりと見える。
その下はかろうじて下着の中に隠れていたが、そこにはルドガーの右手が入っていた。
「え?!」
ソフィが自分でそんなことをするわけがない。
となれば、ルドガーが無意識にソフィの夜着を脱がせ下着に手まで入れていたのだ。
そんな夢を見ていた気もするルドガーは、顔を赤くして怒っているソフィに確認した。
「俺が脱がせたのか?」
急いで下着から手を引き抜くと、ルドガーはその指の匂いを嗅ぎたい欲求を抑え込んだ。
「そうよ!朝から私の体を撫でまわして気持ち悪いのよ!」
衝撃的な一言だったが、指は湿っているし、乳房の先端はピンと尖っている。
性的な刺激でソフィの体が興奮している証拠だ。
昨夜のローレンスの姿を思い出し、ルドガーは嫉妬に駆られソフィに襲い掛かった。
「夫なのだから少しぐらいいいだろう?まだ初夜もしていない!」
残念なことに、ルドガーもまだ学校を出て三年しか経っていない若い男であり、大人の男としては物足りないところがあった。
ざらついた顎を押し付け、ソフィの物欲しげな乳房に吸い付くと、舌でその先端を転がしながらしゃぶりつく。
「あっ!んんっ」
困ったことに、ソフィも性的な刺激には慣れていた。体は瞬く間に男の愛撫に蕩け始める。
顔を赤くして横を向くソフィの体を押さえこみ、ルドガーは素早くソフィの最後の下着を抜き取り、腰を押し付けた。
「いやっ!」
やっと拒絶の言葉が出たが、触れたそこは既に濡れている。
夫であるルドガーは初夜もまだなのに、ソフィの体は男の刺激に対しどう反応するべきか既に知っている。
ソフィの愛人たちがソフィの体を開発し、その快感を教え込んだからだ。
ルドガーは口惜しさと情けなさに涙ぐんだ。
「ソフィ、頼む。一回でいいから抱かせてくれ。ローレンスのおこぼれでも仕方がない。俺が悪かった。だから、頼むもう我慢できない」
絶対に嫌だとソフィは拳を振り上げたが、ルドガーは大きな体でソフィを抱きしめ無理矢理開いた股間に顔を埋め、敏感な突起に吸い付いていた。
「んっ……ああんっ……」
快感に弱いソフィは、甘い声を上げて体をのけぞらせ、力なく拳をシーツの上に投げ出した。
獣のようにルドガーはソフィの全身に口づけを繰り返し、舌で舐め、柔らかい肌に歯を押し付けしゃぶりついていた。
どこもかしこも甘く柔らかい。
やはり一夜限りの遊びとはわけが違う。
自分の妻を抱いているのだと思うとルドガーの胸にこれまでになかった感情が込み上げた。
若さ故のこだわりもある。妻に対する独占欲も純粋で強い。
「一回だけだ。ソフィ……」
ルドガーは手を止めず、絶えずソフィの体をまさぐりながら懇願した。
ソフィは激しい愛撫に身をよじり、体を火照らせ甘い声で鳴いている。
ルドガーのうごめく舌も髭の感触も、貪るような唇の動きも、ソフィから冷静な思考を奪っている。
欲望は止まらず、ルドガーはソフィの中に燃えるような肉の塊を押し付けた。
「あんっ……」
ひと際甘い声があがり、勇気づけられるようにルドガーは腰を進めた。
一気に奥まで貫こうとした瞬間、甘く蕩けていたソフィの体が一気にこわばり、両手が固くシーツを握りしめた。
「うっ……」
燃える肉の周りを包み込むソフィの中があまりにも狭く、ルドガーも動きを止める。
「ソフィ……きつい。いや、違う。何か……」
まさかとルドガーは体を引いてソフィと繋がっている場所に目を落とす。
既に夜は明け、窓から弱々しい朝の陽ざしが差し込んでいる。
その淡い光の下に、目が覚めるような赤い染みが広がっていた。
「あっ……まさか……いや、でも……」
ずるりと腰を引くと、シーツに確かな純潔の証が滴った。
逃げようとするソフィの足を押さえ込み、ルドガーはその中をそっと触れて確認し、それからよじ登るようにソフィの体を引き寄せ抱きしめた。
昨夜のローレンスの言葉が唐突に蘇った。
『優しくしてやってくれ』
最後までしていなかったのだ。そんなことがあるだろうか。
混乱しながら、ルドガーは自分の失態を悟った。
「ソフィ……すまない。知らなかった。優しくするべきだった……」
「じゃあ終わり?」
憮然とした声の響き。ルドガーは腕の中に閉じ込めたソフィの怒りに燃える目を確かめた。
もう終わりかもしれない。そう思いながらも、この男はまたもや信じられない暴挙に出た。
ソフィの足を持ち上げ、再び腰を押し付けたのだ。
これだけ怒らせたらもう二回目は許されないかもしれない。
こうなったら子供を作って縛り付けてしまうしかない。
驚くべき短慮で、ルドガーは腰を進め、痛みに泣くソフィの唇を優しくついばんだ。
「ソフィ、優しくする。今度こそ優しくするから。俺の子供を産んでくれ」
最低、最悪な男の一言に、ソフィはそれこそ驚愕し、逃げようともがいたがもう遅かった。
ルドガーは精一杯の忍耐を持って、ゆっくり動き始めた。
痛みにむせび泣いていたソフィも、次第に甘い刺激に流され力を抜いてしまう。
「あ……ん……うん……」
耳元で聞こえるソフィのか細い甘えた声に励まされ、ルドガーは何度も深く体を沈め、最後に存分に子種を吐き出した。奥の奥まで塗り付けるように腰を押し付けながら、ソフィを抱きしめ、やはり愛人の種は入れたくないと心から思った。
「ああ……」
観念したように呻いたソフィの唇を奪い、ルドガーは愛人を寝室に呼びながらも貞操を守ってきた妻を大切に抱きしめた。
「ソフィ……。すまない。寂しい想いをさせた。配属先を近くに変えてもらい、もう少し頻繁に戻れるようにする。ソフィ、ここをもう少し快適な場所に変えよう」
一時の感情に流され勝手なことを口走るルドガーを見上げ、ソフィは不機嫌に顔をしかめた。
「冗談じゃない。私の意見も聞いてくれない夫なんて欲しくない。出ていってよ!」
ルドガーはまたもや衝撃を受けた。貴族で騎士である若いルドガーは、残念ながらここまで女性に嫌われたことがない。
ソフィとは最初からうまくいかなかった。
関係がこじれている状態で、了解を得ないまま夫婦の行為に及んだことは確かに軽率だった。
ここから挽回する方法を思いつくことが出来ない。
「ソフィ……。それでも俺は君の夫だし、その、初夜もまだだった。夫婦をやり直したい。王墓の守りとかそういうのは抜きにしても、俺は君と夫婦としてやっていきたい」
「それはあなたの意見でしょう?私は?私は押し付けられた夫を嫌でも受け入れて、命令されていつでも足を開かなきゃいけないの?」
反論も出来ず、ルドガーは寝室を追い出された。
すっかり落ち込み、屋敷の外に出るとさらに憂鬱になるような光景が待っていた。
どこもかしこも墓ばかりで、他には何もない。
ルドガーは玄関先の階段に座り込み、頭を抱えた。
こんな間抜けな相談はイーゼンにだって出来ない。
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