8 / 87
3.気の重い約束③
しおりを挟む
そもそもギルドのメンバーと楽しくわちゃわちゃ遊べたら満足だし、そういう遊び方を楽しむギルドなので、エルバさんの方が珍しい存在だったりする。
まあ、ギルドマスターのタラントさんとリアルの友人だというので、ギルドに入ったのもタラントさんが声を掛けたからだというし、マルチプレイはそもそも好みじゃないのも納得だ。
『ロッソさん、だいぶ立ち回り上手くなったね』
「本当ですか。でも、エルバさんに教えてもらった通り動くと、戦闘が楽になった気がします」
『そう? あ、俺のことはエルバで良いよ。さん付けされるの慣れてないんだ。歳は離れてるけどタメでいいよ』
「そうですか? じゃあ私もロッソで。改めてよろしくお願いします」
『じゃあロッソ、早速だけど海底洞窟に行ってみるか』
「私のランクでもいける……のかな」
『もちろん潜る前の準備は必要だろうね。さっきのドロップアイテムから、装備揃えようか』
「了解です」
そうして気付けば夜になっても、私たちは夢中で〈グラズヘイム〉をプレイして楽しんだ。
エルバは本当にいい人で、常時ソロでのプレイスタイルからとっつきにくい人なのかと思っていたけれど、単にゲーム難易度において、難しさを求めて遊びたいタイプらしい。
『初見にしちゃ、早く攻略できたな。ロッソの課金も無駄じゃないワケか』
「今回もガチャめっちゃ回したからね。でもさっきのアレは、エルバがいなかったら瞬殺だよ」
『でもパターンにハメれば、そこからは楽だっただろ』
「エルバがいればこそだよ。その武器で、本当に凄いよね」
『死神の鎌は確かに人気ないし、クセもあるけど慣れたら別にどうってことないんだけどね』
「強者は言うことが違うよね」
お互いに遠慮がない距離感になって、会話も随分砕けたものになってきた。
ここまでくると、確かにタラントさんが、私たちが気が合うと思うと言っていたのも頷ける気がする。
『ドロップアイテムもいい感じに溜まったし、ギルドに戻るか』
「そうだね。調合スキルも上がったし、色々試したい」
『よし、じゃあ一旦……あ、タラントがログインしたっぽい』
「え、あ。本当だ」
フレンドの画面を確認すると、アクティブユーザーの中にタラントさんの名前が表示されている。
『とりあえずギルドに戻ろうか』
「了解」
エルバと一緒にギルドの拠点に戻ると、案の定そこに居たタラントさんのアバターが、手を振りながらジャンプしてるのが見えた。
【よお。お二人さん、お疲れ】
オープンチャットの方から呼びかけがあり、すぐにお疲れ様と文字を打ち込んでメッセージを返す。
エルバも同じように【おつ】と、短い返事を打ったらしく、画面にその文字が表示される。
『タラントにもボイチャ繋いでもらおうか』
「うん。全然いいよ」
私が返事するや否や、エルバが個別に切り替えてボイスチャットしようと、タラントさんにメッセージを送った。
『うわ、見てみロッソ』
「え? なにを」
『ヤバい。もう二十二時過ぎてる』
「うそ。本当だ! エルバ時間大丈夫?」
『俺は明日も休みだから問題ない。ロッソは』
「私も久々に休みだし大丈夫」
二人で結構長く遊んでいたことについて盛り上がっていると、プツッと音声が入る音がしてタラントさんが会話に加わって来た。
『お疲れさん。どうよ、仲良くなったのか』
タラントさんは様子を探るように、アバターに謎のダンスをさせながらにじり寄ってくる。
『なんだよ、そのアクション。気持ち悪いな』
エルバが笑うので、私もつられて笑ってしまう。
まあ、ギルドマスターのタラントさんとリアルの友人だというので、ギルドに入ったのもタラントさんが声を掛けたからだというし、マルチプレイはそもそも好みじゃないのも納得だ。
『ロッソさん、だいぶ立ち回り上手くなったね』
「本当ですか。でも、エルバさんに教えてもらった通り動くと、戦闘が楽になった気がします」
『そう? あ、俺のことはエルバで良いよ。さん付けされるの慣れてないんだ。歳は離れてるけどタメでいいよ』
「そうですか? じゃあ私もロッソで。改めてよろしくお願いします」
『じゃあロッソ、早速だけど海底洞窟に行ってみるか』
「私のランクでもいける……のかな」
『もちろん潜る前の準備は必要だろうね。さっきのドロップアイテムから、装備揃えようか』
「了解です」
そうして気付けば夜になっても、私たちは夢中で〈グラズヘイム〉をプレイして楽しんだ。
エルバは本当にいい人で、常時ソロでのプレイスタイルからとっつきにくい人なのかと思っていたけれど、単にゲーム難易度において、難しさを求めて遊びたいタイプらしい。
『初見にしちゃ、早く攻略できたな。ロッソの課金も無駄じゃないワケか』
「今回もガチャめっちゃ回したからね。でもさっきのアレは、エルバがいなかったら瞬殺だよ」
『でもパターンにハメれば、そこからは楽だっただろ』
「エルバがいればこそだよ。その武器で、本当に凄いよね」
『死神の鎌は確かに人気ないし、クセもあるけど慣れたら別にどうってことないんだけどね』
「強者は言うことが違うよね」
お互いに遠慮がない距離感になって、会話も随分砕けたものになってきた。
ここまでくると、確かにタラントさんが、私たちが気が合うと思うと言っていたのも頷ける気がする。
『ドロップアイテムもいい感じに溜まったし、ギルドに戻るか』
「そうだね。調合スキルも上がったし、色々試したい」
『よし、じゃあ一旦……あ、タラントがログインしたっぽい』
「え、あ。本当だ」
フレンドの画面を確認すると、アクティブユーザーの中にタラントさんの名前が表示されている。
『とりあえずギルドに戻ろうか』
「了解」
エルバと一緒にギルドの拠点に戻ると、案の定そこに居たタラントさんのアバターが、手を振りながらジャンプしてるのが見えた。
【よお。お二人さん、お疲れ】
オープンチャットの方から呼びかけがあり、すぐにお疲れ様と文字を打ち込んでメッセージを返す。
エルバも同じように【おつ】と、短い返事を打ったらしく、画面にその文字が表示される。
『タラントにもボイチャ繋いでもらおうか』
「うん。全然いいよ」
私が返事するや否や、エルバが個別に切り替えてボイスチャットしようと、タラントさんにメッセージを送った。
『うわ、見てみロッソ』
「え? なにを」
『ヤバい。もう二十二時過ぎてる』
「うそ。本当だ! エルバ時間大丈夫?」
『俺は明日も休みだから問題ない。ロッソは』
「私も久々に休みだし大丈夫」
二人で結構長く遊んでいたことについて盛り上がっていると、プツッと音声が入る音がしてタラントさんが会話に加わって来た。
『お疲れさん。どうよ、仲良くなったのか』
タラントさんは様子を探るように、アバターに謎のダンスをさせながらにじり寄ってくる。
『なんだよ、そのアクション。気持ち悪いな』
エルバが笑うので、私もつられて笑ってしまう。
11
あなたにおすすめの小説
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
鬼隊長は元お隣女子には敵わない~猪はひよこを愛でる~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「ひなちゃん。
俺と結婚、しよ?」
兄の結婚式で昔、お隣に住んでいた憧れのお兄ちゃん・猪狩に再会した雛乃。
昔話をしているうちに結婚を迫られ、冗談だと思ったものの。
それから猪狩の猛追撃が!?
相変わらず格好いい猪狩に次第に惹かれていく雛乃。
でも、彼のとある事情で結婚には踏み切れない。
そんな折り、雛乃の勤めている銀行で事件が……。
愛川雛乃 あいかわひなの 26
ごく普通の地方銀行員
某着せ替え人形のような見た目で可愛い
おかげで女性からは恨みを買いがちなのが悩み
真面目で努力家なのに、
なぜかよくない噂を立てられる苦労人
×
岡藤猪狩 おかふじいかり 36
警察官でSIT所属のエリート
泣く子も黙る突入部隊の鬼隊長
でも、雛乃には……?
恋に異例はつきもので ~会社一の鬼部長は初心でキュートな部下を溺愛したい~
泉南佳那
恋愛
「よっしゃー」が口癖の
元気いっぱい営業部員、辻本花梨27歳
×
敏腕だけど冷徹と噂されている
俺様部長 木沢彰吾34歳
ある朝、花梨が出社すると
異動の辞令が張り出されていた。
異動先は木沢部長率いる
〝ブランディング戦略部〟
なんでこんな時期に……
あまりの〝異例〟の辞令に
戸惑いを隠せない花梨。
しかも、担当するように言われた会社はなんと、元カレが社長を務める玩具会社だった!
花梨の前途多難な日々が、今始まる……
***
元気いっぱい、はりきりガール花梨と
ツンデレ部長木沢の年の差超パワフル・ラブ・ストーリーです。
甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・
希花 紀歩
恋愛
24時間二人きりで甘~い💕お仕事!?
『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』
小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。
ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。
しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。
彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!?
過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。
*導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。
<表紙イラスト>
男女:わかめサロンパス様
背景:アート宇都宮様
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
誘惑の延長線上、君を囲う。
桜井 響華
恋愛
私と貴方の間には
"恋"も"愛"も存在しない。
高校の同級生が上司となって
私の前に現れただけの話。
.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚
Иatural+ 企画開発部部長
日下部 郁弥(30)
×
転職したてのエリアマネージャー
佐藤 琴葉(30)
.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚
偶然にもバーカウンターで泥酔寸前の
貴方を見つけて…
高校時代の面影がない私は…
弱っていそうな貴方を誘惑した。
:
:
♡o。+..:*
:
「本当は大好きだった……」
───そんな気持ちを隠したままに
欲に溺れ、お互いの隙間を埋める。
【誘惑の延長線上、君を囲う。】
堅物上司の不埒な激愛
結城由真《ガジュマル》
恋愛
望月かなめは、皆からオカンと呼ばれ慕われている人当たりが良い会社員。
恋愛は奥手で興味もなかったが、同じ部署の上司、鎌田課長のさり気ない優しさに一目ぼれ。
次第に鎌田課長に熱中するようになったかなめは、自分でも知らぬうちに小悪魔女子へと変貌していく。
しかし鎌田課長は堅物で、アプローチに全く動じなくて……
〜仕事も恋愛もハードモード!?〜 ON/OFF♡オフィスワーカー
i.q
恋愛
切り替えギャップ鬼上司に翻弄されちゃうオフィスラブ☆
最悪な失恋をした主人公とONとOFFの切り替えが激しい鬼上司のオフィスラブストーリー♡
バリバリのキャリアウーマン街道一直線の爽やか属性女子【川瀬 陸】。そんな陸は突然彼氏から呼び出される。出向いた先には……彼氏と見知らぬ女が!? 酷い失恋をした陸。しかし、同じ職場の鬼課長の【榊】は失恋なんてお構いなし。傷が乾かぬうちに仕事はスーパーハードモード。その上、この鬼課長は————。
数年前に執筆して他サイトに投稿してあったお話(別タイトル。本文軽い修正あり)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる