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第一章 ラバネス半島編
23.二人の王子!
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僕、アグウェル、リムルの三人は大空を飛翔してトランスベル王国へと向かった。
これだけ早く空を飛んでいるのに全く寒くない。
たぶん アグウェルが魔法の障壁を張ってくれてるのだろうな。
三時間近く空を飛んで、僕達はようやくトランスベル王国の空へと辿り着いた。
「今からどこへ行くの?」
「王子二人なら、今日は魔獣狩りをするため森に出ております。森であれば二人と会うのに絶好の場所だと思いまして」
「わかった。森へ行こう」
「任せて、二人を私の虜にしちゃうから!」
「ほどほどに、幼馴染ぐらいの親しさでお願いするよ」
リムルが張り切り過ぎそうなので、ちょっとたしなめておく。
どうやらアグウェルは魔族の能力で、王子達の動向を察知してるらしい。
めちゃくちゃ有能なんですけど。
トランスベル王国の王宮に乗り込むのではと心配していたから、森の中だったら余計な邪魔者はいなさそうだし、二人と話しをするのにいいかもしれないな。
段々と森に近づいてきたので、飛行速度を下げ、低空飛行で王子達を探す。
すると森のほうから魔獣と戦う剣戟の男が聞こえてきた。
「あれでしょうな」
「なんだか魔獣と戦っているようだけど」
「リムル、王子達を助けてお近づきになってきて」
「はーい、行ってきまーす」
僕とアグウェルを空に残し、リムルは森の中へと降りていった。
しばらくすると剣戟の音が鳴りやんだので、僕達二人もリムルの後を追って降下する。
地面に下ろしてもらって周囲を見回すと、オークの群れが地面に倒れていて、二人の王子はその死骸を見て、顔を青ざめていた。
「お前達は誰だ」
「助けてあげたんだから、ありがとうぐらい言ってほしいわ」
どうやらリムルがオークの群れを討伐したようだ。
彼女の言葉を聞いて、王子二人は気まずそうな表情をする。
「ふん、あれぐらい助けがなくても俺達の手で倒せたぜ」
「兄さん、助けてもらったんだからお礼を言わないと」
強気な発言をしているのはたぶん武闘派の兄のロナウド王太子で、諫めているのは知性派のカムシン第二王子殿下だろうな。
僕はトコトコと歩いていき、リムルの隣に立って彼女の手をつんつんと突く。
「リムルお願い、やっちゃって。ただし、やり過ぎないようにね」
「わかってますって」
リムルは僕の手を握ってニッコリと微笑むと、二人の方へ視線を向ける。
すると彼女と目が合った二人の王子は、緊張感が抜けたような表情へ変化した。
どうもリムルが魔眼でチャームのスキルを使ってるようだ。
「あれ? よく見ればリムルじゃないか。俺達を助けてくれたのか」
「そうよーん、アナタ達、二人が弱いから私が助けにきたんじゃない」
「そうか、それはありがとう。伴の兵士達と逸れたところを魔獣に襲われてね。兄さんと二人だけでは危なかった」
ロナウド王太子とカムシン第二王子はすっかりリムルと打ち解けた雰囲気でニッコリと笑う。
魅了の魔法って初めて見るけど、これほどまで性格が激変してしまうんだ……
リムルが本気をだせば、誰とだって友達になれそうだな。
三人のやり取りを感心して見ていると、リムルが片手を広げて僕とアグウェルを引き合わせる。
「今日は二人に紹介したい人がいるの。私の大事な旦那様、それと私のお父さんよ」
「旦那様? それはリムルの許嫁ということかい?」
「うん、将来を約束してるから」
「いやいやリムルの嘘だから。僕はリムルが務める『ロンメル商会』の会長をしているシオンと言います」
慌ててリムルの体を押しのけて、僕は自分の紹介をする。
すると後ろから小さな声で「一生、リアム様にお仕えするつもりなのに」とブツブツいうリムルの声が聞こえてきた。
……それは『ロンメル商会』の要員として仕えてほしいとは思うけど、僕のお嫁さんになってほしいわけじゃないからね。
今は話がややこしくなるからスルーすることにしよう。
アグウェルが僕の隣へ来て、一つ咳をする。
「リムルの父のアグウェルです。二人ともお元気そうですね」
「ずいぶんと久しぶりに顔を見たような気がする。アグウェルも元気だったか?」
ロナウド王太子は親しげにアグウェルへ声をかける。
リムルのことを幼馴染だと思い込んでいるから、アグウェルのことを知っていると思ってしまっているだろうな。
それにしてもチャームって脅威の洗脳効果だね……こんなに変わるものなの……
リムルは二人に向けて蕩けるような笑みを浮かべる。
「実は二人に聞いて欲しい話があるの。シオン様が開発した商品の製造法をトランスベル王国の王宮が教えろって言ってきてるの」
「商品の製造法なんて『商会』にとって財産じゃないか。製造法を知られれば模造品が出てくるぞ」
「そうカムシンの言う通りよ。だからシオン様は困っちゃって。だから二人に協力してほしいの。アナタ達に反対されたら、王宮も強硬手段に出れないわ。お願いだからシオン様を助けてあげて」
「うむ、他ならぬリムルの頼みです。それにシオンはリムルが務める商会の会長でもある。俺達もムゲにはできないな。いいだろう、私達がその件を止めてやりましょう」
そう言ってロナウド王太子とカムシン第二王子の二人は、心を決めた表情で大きく頷いた。
これで無事に王子二人を知り合いなれたわけだけど……この魅了の魔法って本当に解けるの?
なんだか効きすぎて心配になってきたんですけど。
これだけ早く空を飛んでいるのに全く寒くない。
たぶん アグウェルが魔法の障壁を張ってくれてるのだろうな。
三時間近く空を飛んで、僕達はようやくトランスベル王国の空へと辿り着いた。
「今からどこへ行くの?」
「王子二人なら、今日は魔獣狩りをするため森に出ております。森であれば二人と会うのに絶好の場所だと思いまして」
「わかった。森へ行こう」
「任せて、二人を私の虜にしちゃうから!」
「ほどほどに、幼馴染ぐらいの親しさでお願いするよ」
リムルが張り切り過ぎそうなので、ちょっとたしなめておく。
どうやらアグウェルは魔族の能力で、王子達の動向を察知してるらしい。
めちゃくちゃ有能なんですけど。
トランスベル王国の王宮に乗り込むのではと心配していたから、森の中だったら余計な邪魔者はいなさそうだし、二人と話しをするのにいいかもしれないな。
段々と森に近づいてきたので、飛行速度を下げ、低空飛行で王子達を探す。
すると森のほうから魔獣と戦う剣戟の男が聞こえてきた。
「あれでしょうな」
「なんだか魔獣と戦っているようだけど」
「リムル、王子達を助けてお近づきになってきて」
「はーい、行ってきまーす」
僕とアグウェルを空に残し、リムルは森の中へと降りていった。
しばらくすると剣戟の音が鳴りやんだので、僕達二人もリムルの後を追って降下する。
地面に下ろしてもらって周囲を見回すと、オークの群れが地面に倒れていて、二人の王子はその死骸を見て、顔を青ざめていた。
「お前達は誰だ」
「助けてあげたんだから、ありがとうぐらい言ってほしいわ」
どうやらリムルがオークの群れを討伐したようだ。
彼女の言葉を聞いて、王子二人は気まずそうな表情をする。
「ふん、あれぐらい助けがなくても俺達の手で倒せたぜ」
「兄さん、助けてもらったんだからお礼を言わないと」
強気な発言をしているのはたぶん武闘派の兄のロナウド王太子で、諫めているのは知性派のカムシン第二王子殿下だろうな。
僕はトコトコと歩いていき、リムルの隣に立って彼女の手をつんつんと突く。
「リムルお願い、やっちゃって。ただし、やり過ぎないようにね」
「わかってますって」
リムルは僕の手を握ってニッコリと微笑むと、二人の方へ視線を向ける。
すると彼女と目が合った二人の王子は、緊張感が抜けたような表情へ変化した。
どうもリムルが魔眼でチャームのスキルを使ってるようだ。
「あれ? よく見ればリムルじゃないか。俺達を助けてくれたのか」
「そうよーん、アナタ達、二人が弱いから私が助けにきたんじゃない」
「そうか、それはありがとう。伴の兵士達と逸れたところを魔獣に襲われてね。兄さんと二人だけでは危なかった」
ロナウド王太子とカムシン第二王子はすっかりリムルと打ち解けた雰囲気でニッコリと笑う。
魅了の魔法って初めて見るけど、これほどまで性格が激変してしまうんだ……
リムルが本気をだせば、誰とだって友達になれそうだな。
三人のやり取りを感心して見ていると、リムルが片手を広げて僕とアグウェルを引き合わせる。
「今日は二人に紹介したい人がいるの。私の大事な旦那様、それと私のお父さんよ」
「旦那様? それはリムルの許嫁ということかい?」
「うん、将来を約束してるから」
「いやいやリムルの嘘だから。僕はリムルが務める『ロンメル商会』の会長をしているシオンと言います」
慌ててリムルの体を押しのけて、僕は自分の紹介をする。
すると後ろから小さな声で「一生、リアム様にお仕えするつもりなのに」とブツブツいうリムルの声が聞こえてきた。
……それは『ロンメル商会』の要員として仕えてほしいとは思うけど、僕のお嫁さんになってほしいわけじゃないからね。
今は話がややこしくなるからスルーすることにしよう。
アグウェルが僕の隣へ来て、一つ咳をする。
「リムルの父のアグウェルです。二人ともお元気そうですね」
「ずいぶんと久しぶりに顔を見たような気がする。アグウェルも元気だったか?」
ロナウド王太子は親しげにアグウェルへ声をかける。
リムルのことを幼馴染だと思い込んでいるから、アグウェルのことを知っていると思ってしまっているだろうな。
それにしてもチャームって脅威の洗脳効果だね……こんなに変わるものなの……
リムルは二人に向けて蕩けるような笑みを浮かべる。
「実は二人に聞いて欲しい話があるの。シオン様が開発した商品の製造法をトランスベル王国の王宮が教えろって言ってきてるの」
「商品の製造法なんて『商会』にとって財産じゃないか。製造法を知られれば模造品が出てくるぞ」
「そうカムシンの言う通りよ。だからシオン様は困っちゃって。だから二人に協力してほしいの。アナタ達に反対されたら、王宮も強硬手段に出れないわ。お願いだからシオン様を助けてあげて」
「うむ、他ならぬリムルの頼みです。それにシオンはリムルが務める商会の会長でもある。俺達もムゲにはできないな。いいだろう、私達がその件を止めてやりましょう」
そう言ってロナウド王太子とカムシン第二王子の二人は、心を決めた表情で大きく頷いた。
これで無事に王子二人を知り合いなれたわけだけど……この魅了の魔法って本当に解けるの?
なんだか効きすぎて心配になってきたんですけど。
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