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第2章 グランタリア大陸東部編

67.王都アッシュの城へ行こう!

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王都アッシュに到着した翌日、僕、リムル、エレミアの三人は馬車に乗って、王城へと向かった。

僕の対面の席に座っているエレミアが、僕の姿を見て首を傾げる。


「ホントにそれで城に行くつもりなの?」

「誰のせいでこうなったと思ってるのかな」


ジト目を向けると、彼女はサッと顔を逸らした。

隣に座っているリムルは、シュンとしたまま俯いている。

昨日の夜、僕に長時間説教されたから、落ち込んでいるのだろうな。


でも……二人のイタズラによって目の周りだけ日焼けし、顔がパンダになってしまったのだから、少しぐらい怒ってもいいと思う……


そして僕は今、顔と頭を包帯でグルグル巻きにしている状態なのだ。

馬車が城の門に到着し、カイロスから預かっている王家の短剣を、エレミアは馬車の窓から城の門兵に見せると、門を開けて通してくれた。

馬車を厩舎に停め、僕達は城の兵に案内されて来賓室へ向かう。

その間も兵士は怪しむような表情でチラチラと僕を見てくる。


……ミイラ男のように顔と頭を包帯でグルグル巻きにしているのだから、警戒されてもしかたないよね。


一時間ほど来賓室で待っていると、扉をあけてカイロスが部屋に入ってきた。

そして僕の顔を見て絶句する。


「なんだその恰好は……それで城まで来たのか?」

「ちょっと昨日、色々あってね……」


僕の答えに、エレミアが表情を引きつらせる。


「でも、このままだと父上と会わせられないぞ。ちょっと包帯を取ってくれないか」

「……取ってもいいけど笑わないでよ」

「わかった。絶対に笑わないから」


カイロスは自信満々に頷く。

そこまで言われては包帯を外すしかない。

僕は意を決して、包帯を鷲掴みにして一気に剥ぎ取った。

僕のパンダ顔を見たカイロスは、両手で口を押えて悶絶する。


「……シオン、すまない……」


こうなることは包帯を取る前からわかってたよ……

笑いを堪えていたカイロスは、やっと落ち着いてきたらしく、目に浮かぶ涙を拭って、僕に話しかける。


「何があったんだ?」


僕は日焼け止め薬を開発して、自分の身で実験したことを彼に伝えた。

するとカイロスが真顔で僕の両肩をガシっと掴む。


「その日焼け止め薬は成功したのか?」

「僕の顔を見てよ。日焼け止め薬を拭かれた目の周りだけ、くっきりと黒くなってるでしょ。その他の部分は白いまま。実験は成功だよ」

「今から父上に会いに行くぞ」

「さっきは会わせられないって言ってなかった?」

「アシュラム王国にとって、日焼け対策がどれだけ重要か、シオンは知らないから、そんな呑気なことを言ってられるんだ。説明している時間も惜しい。今すぐ行くぞ」


カイロスは僕の腕を掴んで僕を強引に部屋から連れ出した。

すこし遅れてリムルとエレミアも僕達の後を追ってくる。

廊下ですれ違った人々は、僕の顔を見てギョッと驚いた顔をする。

どこへ連れて行かれるのかと歩いていると、城の上層にある庭園が目の前に現れた。


「今日はシオン達を合わせようと、父上には庭園で待ってもらっていたんだ」


そう言って、カイロスは僕達を先導していく。

しばらく庭園を歩くとアーチ型の休憩所があり、そこに豪華なマントを羽織った男性が立っていた。


「父上、先ほど話していたシオン達を連れてきたぜ」

「何だ、その顏は!」


僕の顔を見たカイロスの父上――フスタース国王陛下が大声をあげる。


……今の僕と出会ったら、みんな驚くよね……わかっていたけど、めちゃくちゃ恥ずかしい……これもみんな、あのイタズラのせいだ……


後ろへ振り返り、リムルとエレミアを睨むと、二人は慌てて視線を逸らした。

カイロスが僕の肩を掴み、片手で僕の目の部分を指差す。


「父上、もっとよくココを見てくれ」

「さっきから見ておる。耐えておるではないか」

「このままでは話にならないぜ。シオン、顔を包帯で隠してくれ」


……確かにさっきからフスタース国王陛下の肩が引くついてるもんね……


僕はポケットの中から包帯を取り出し、リムルとエミリアに手伝ってもらって、顔と頭を覆う。

その間に落ち着きを取り戻したフスタース国王陛下が、カイロスへ呼びかけた。


「もう大丈夫だ。それで話とは?」

「シオンが日焼け止め薬を開発したんだ。さっきのシオンの目の周りは日焼け止め薬を使っていない部分で、他の顔の白い部分は薬を使った部分なんだ。父上、すっごい効き目だと思わないか?」

「それは誠か。確かに目の部分以外の部分は、肌の色が白く、全く日焼けをしていなかったな。もし、そのような日焼け止め薬が開発されたなら、画期的な発明になるぞ」


そう言ってフスタース国王陛下は驚いた表情で僕を見る。

するとカイロスは、目を輝かせて、両手を広げる。


「これでアシュラム王国の肉体労働者達が苦しまなくなるぞ!」
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