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21.石への誓い
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ジルが陛下やトリスティン様の提案を躊躇っていたのは、私との時間を増やしたいだけでは、とも少し思ったけど、本当は私が王妃とか実はちょっと懲り懲りなのをわかっていたからだと思う。
でも、ジルは国王になるべきだと思う。
ジルの優しさばっかりに甘えちゃダメだもんね!
やるときはやる子です。11年間の努力は無駄じゃない。
私との結婚はジルがとても急いだので、めちゃくちゃ異例の早さの3ヶ月後に結婚式が行われることになった。結婚式と同時にジルの立太子の宣誓の儀式も行うらしく、これで正式にジルは王太子の立場になる。それまで流石に城内で暮らすわけにはいかず、私は王都にある公爵家に一時戻ることとなった。
縁切りされていたはずだけど、公爵家を継いだ兄が私との縁切りを撤回してくれていたので公爵家に戻れるようになったのだ。
ジルは最後まで私が公爵家に戻る事を反対し、実は私も離れたくなかった……でも、外聞が悪いしジルもなんだかんだと忙しいし我慢だ。
両親は回り回って王太子妃、ひいては王妃の立場になる私を都合よく喜び、公爵家へ戻ることも喜んでいた。
両親には特に愛情をかけられて過ごしていなかったし、実際お父様は実にあっさりと私と絶縁したわけで、かなり気は重かった。でも、そんな両親と一時とはいえ同じ屋根の元で暮らす状況を憂いてくれた兄が、私が公爵家に戻るとすぐに両親に御隠居生活を無理矢理斡旋し、田舎の領地へと体よく追い出してくれた。
ありがとうお兄様!
兄と姉たちは私の事をずっと心配してくれていたみたいで、昔を取り戻そうとするがごとく兄が構ってきたり、姉2人が度々嫁ぎ先から遊びに来てくれた。
今はまだ社交会へと戻るのが怖かった私は、結婚式まで公爵家で大人しくしていた。
あれだけ皆の前で大々的に婚約破棄(しかも半裸でっ!)された噂の元絶縁公爵令嬢。おまけに、彗星のごとく現れたイケメン第二王子とスピード結婚。皆の興味が尽きないのはわかりきったことで、好奇の目で見られるのはメンタル的にまだちょっとしんどい……
でも、穏やかな兄夫婦に囲まれてゆったりとした生活も送れたし、楽しい姉たちが構ってくれたから全然家にいることが苦痛ではなかった。
というか、前世の記憶が戻ってからすっかり引きこもり生活が板に着いてしまった……私に王妃なんてできるのかなぁ。
夜中になると実はまだ少しジルを喪う悪夢を見て、目が覚める事がある。そんな時隣にジルがいないことがものすごく寂しくなる。
でも泣いたら兄夫婦も姉たちも心配するから我慢我慢。
そんな私の諸々の不安をジルは見抜いているのか、結婚式の打ち合わせも兼ねて結構遊びにきてくれる。
流石ジルってば鋭くって、私が我慢しているのをしっかり見抜いていて、会うたびに王城へ来るようにしつこいぐらいに誘ってくる。
でも我慢我慢。私は未来の王妃なんだから。それに3ヶ月なんてあっという間だし!
そうジルに笑って言うと、切なそうな顔をされた。
結局ジルは私の意思を尊重してくれた。
ごめんねジル。ありがとう。でも、逃げるのは私の矜持が許さないのだ。
そんなこんなで、長かったようなあっという間だったような3ヶ月が過ぎ去って。
ーーー結婚式の日を迎えた
前日から王城へ呼ばれた私は、侍女たちにしっかりと磨き上げられた。久々だ~この感覚~。
お城の侍女というものはいい所の令嬢達なので内心少しビクビクしていたんだけど、明日から王太子妃付として私に仕えてくれる3人の侍女は皆私より若くて素直でいい子たちだった。王太子妃の侍女としてはぶっちゃけめちゃくちゃ少ない人数だけど、正直有り難かった。知らない人間にプライベート空間を常にウロウロされるのは、前世の感覚のある今の私にはしんどい。
……これもジルの配慮なのかな……
ジルとは式まで逢えない。同じ建物にいるのに逢えないのって思っていた以上に寂しかった。
そんな寂しさを胸の奥に隠したまま、準備は着々と進んでいく。
でも侍女たちがとても可愛いく気さくに色々話しかけてくれたので、心が少し軽くなった。
せっかくの一生に一度のウエディングドレスを楽しまないとね、と余裕も出てきた。
ドレスは、襟ぐりが少し開いた部分から袖口と胸元まで総レースで覆われた、真っ白なAラインのドレスだった。腰から下のスカート部分にもレースが一面施されていて、後ろは更にレースの部分が大きく重なっている。歩くとレースの部分が揺れてとても綺麗だ。
手作りのドレスを3ヶ月でここまで仕上げてもらい本当ありがたい話である。ちなみに私はもっとシンプルでよかったけど、レースに拘ったジルは断固として譲らなかった。
袖口から胸元までレースから透ける素肌がいいらしい。あれだけ熱く語られたら拒否できない……
頭は複雑に編み込めれアップにされた。
準備が一通り終わった私はやっとジルと逢うことができた。
「ジルっ!!」
やっと逢えたことで私は嬉しくて、部屋に来てくれたジルに駆け寄ろうとした。
しかし。
そのジルの姿を見て……私は固まってしまった……
真っ白のタキシードを着て、いつも垂らしている前髪をアップにして固めて流す。怖いくらいに整った顔がはっきり見えて正装したジルは、まさにこの世のものとは思えない程の美貌の王子だった……
男の人なのに、美しいって思っちゃうよもう。
「……っ! フィー。……すごく綺麗だ……もうこのまま寝室へ行こうか……」
ジルはそう言うなり動きを止めた私の元へやってくると、手をサッと取りながら腰を引き寄せて口付けをしようとする。
その一連の滑らかで素早い動きに誰もが反応できない。
「……っジ、ジルっ! だめっ! 化粧落ちちゃうっ!」
口付けをされてようやく反応できた私は、ジルを必死に止める。こんな侍女たちがいる人前でキスなんてっ!ほら皆見てるからっ!!
「うん? いいよ落ちても。どうせ今からもっと落ちるんだし」
そう言ってにっこり笑いながら私を連れて奥の部屋に行こうとするジルをなんとか止めた。一応結婚式も立太子の宣誓も今からです!
まだ少し納得しきれていないジル(納得できないのが納得できない)を連れて、王城の奥へと行く。
ここでは神殿とかは特にないため、結婚式は人前式に近い感じかもしれない。皆に披露する感じ。その時に神への感謝と祝福を述べるのだ。
ただ、王族だけは違う。
神の石と盟約を交わして、初めて王家の一員として連なる事ができる。神の石に誓う感じかな?
その為、2人だけでまずは石と盟約を交わしにいくことになっている。
私とジルは王城の奥深くかなり入り組んだ道をどんどん進んでいき、代々魔法の力で保護され王家の人間しか解除できない入り口を抜けると、鍾乳洞のような場所に辿り着いた。その台座の真ん中に神の石はあった。
……この石見たことあるかも……
あの婚約者選びのお茶会の時テーブルの上に置かれていたと思う。神の石をそんな無造作に置いてあったなんてっ!! 今知る衝撃の事実だ。
残念な私の目には、神の石はただ大きめな水晶にしか見えなかった。ただ、よく見るとほんのりと中心が虹色に渦巻いている。
石に近づくと、ほんのりと光り輝きだした。カケラの魂に反応しているのかな?
「……フィー。いい?」
「うん! 大丈夫、痛いのとかはないでしょ?」
「ふふ。ないよ。じゃあ始めよう。ーーー我ジルヴェール・アニマ・ウェントゥスはここに在るフィーリアス・ツェントリアを王家の一員として認める」
「っえっと……ーーー我フィーリアス・ツェントリアはここに石との盟約を誓う……」
言葉を発した途端、以前ジルを喪いそうになった時にもなった眩しいくらいの光に包まれる。
ーーーあ。これ、神様だったんだ。
……神様、この間はジルを助けてくれて本当にありがとうございましたーーー
光が引くまでぎゅっと目を瞑って神々に感謝していた。
カチリ
どこかで音がした。
「フィー? 大丈夫?」
動かなくなった私を心配したジルがそっと頬を撫でてくる感触でハッとして目を開けると、心配そうに覗き込むジルの金色の瞳と目があった。
「……大丈夫。ちょっと神様にお礼を……」
「フィー。魔法を使えると思うけど、感覚わかる?」
……さっきの音がきっかけだったのか。自分の中の何かが動いている感覚というか、とにかく今までと違う感覚がある。それを手を握ったり開いたりしながら出してみる。
「……っあ」
手の先がポーッと光った。
もう一つ別の感覚がある気がするので、出してみる。すると、指先から水が出てくる。
「っわっ!」
自分でやってて自分でビックリした。
「うん。やっぱり、フィーの属性は光と水だね。光は癒しの魔法だよ。僕を助けてくれたのもフィーの力だったんだねやっぱり。水は訓練したら氷もできるし幅が広いよ。民の助けにもなる重要な属性だ。さすがフィーだね」
ジルは自分のことのように喜んでいた。
ーーーそっか。私魔法使えるようになったんだ。民にもすごく役立てるんだ。
何だか嬉しくて、自分が認められたようでくすぐったくて心がぽかぽかする。
じんわりと喜びを噛み締めていると、ジルがどこからか小箱を出して、おもむろに開けた。
その中には、とても大粒のイエローダイヤモンドで出来た耳飾りとネックレスが入っていた。
……ひぃ~~~これどんだけのお値段になるのか。ダイヤモンドの輝きがものすごい。
ジルは丁寧に私に耳飾りとネックレスをつけてくれた。
ーーー恥ずかしい……
そして、もう一つの箱には、これまたとても大きくて透明感が高いのに濃いブルーのサファイヤがついたネクタイピンが入っていた。
「……フィーつけてくれる?」
「……うん……」
ものすごい演出すぎて照れてしまって、顔はすでに茹で上がって真っ赤なのがわかる。どんだけ男前なんだジル様っ!!
お互い付け合いっ子したら、何だか嬉しくって笑い合った。
すると、またまたジルが何やら取り出す。っえ!? まだあるの?
そう思ってビックリしてたら、ジルが私の前で片膝をついて跪いて左手を優しく持った。
「フィー。僕のお嫁さんになってください」
そう言って、左手の指にそっと指輪を嵌めてくれた。
「……っジル! ……はいっ! 私をジルヴェールのお嫁さんにしてくださいっ!」
大きく返事をしながら、ジルの胸に飛び込んだ。
でも、ジルは国王になるべきだと思う。
ジルの優しさばっかりに甘えちゃダメだもんね!
やるときはやる子です。11年間の努力は無駄じゃない。
私との結婚はジルがとても急いだので、めちゃくちゃ異例の早さの3ヶ月後に結婚式が行われることになった。結婚式と同時にジルの立太子の宣誓の儀式も行うらしく、これで正式にジルは王太子の立場になる。それまで流石に城内で暮らすわけにはいかず、私は王都にある公爵家に一時戻ることとなった。
縁切りされていたはずだけど、公爵家を継いだ兄が私との縁切りを撤回してくれていたので公爵家に戻れるようになったのだ。
ジルは最後まで私が公爵家に戻る事を反対し、実は私も離れたくなかった……でも、外聞が悪いしジルもなんだかんだと忙しいし我慢だ。
両親は回り回って王太子妃、ひいては王妃の立場になる私を都合よく喜び、公爵家へ戻ることも喜んでいた。
両親には特に愛情をかけられて過ごしていなかったし、実際お父様は実にあっさりと私と絶縁したわけで、かなり気は重かった。でも、そんな両親と一時とはいえ同じ屋根の元で暮らす状況を憂いてくれた兄が、私が公爵家に戻るとすぐに両親に御隠居生活を無理矢理斡旋し、田舎の領地へと体よく追い出してくれた。
ありがとうお兄様!
兄と姉たちは私の事をずっと心配してくれていたみたいで、昔を取り戻そうとするがごとく兄が構ってきたり、姉2人が度々嫁ぎ先から遊びに来てくれた。
今はまだ社交会へと戻るのが怖かった私は、結婚式まで公爵家で大人しくしていた。
あれだけ皆の前で大々的に婚約破棄(しかも半裸でっ!)された噂の元絶縁公爵令嬢。おまけに、彗星のごとく現れたイケメン第二王子とスピード結婚。皆の興味が尽きないのはわかりきったことで、好奇の目で見られるのはメンタル的にまだちょっとしんどい……
でも、穏やかな兄夫婦に囲まれてゆったりとした生活も送れたし、楽しい姉たちが構ってくれたから全然家にいることが苦痛ではなかった。
というか、前世の記憶が戻ってからすっかり引きこもり生活が板に着いてしまった……私に王妃なんてできるのかなぁ。
夜中になると実はまだ少しジルを喪う悪夢を見て、目が覚める事がある。そんな時隣にジルがいないことがものすごく寂しくなる。
でも泣いたら兄夫婦も姉たちも心配するから我慢我慢。
そんな私の諸々の不安をジルは見抜いているのか、結婚式の打ち合わせも兼ねて結構遊びにきてくれる。
流石ジルってば鋭くって、私が我慢しているのをしっかり見抜いていて、会うたびに王城へ来るようにしつこいぐらいに誘ってくる。
でも我慢我慢。私は未来の王妃なんだから。それに3ヶ月なんてあっという間だし!
そうジルに笑って言うと、切なそうな顔をされた。
結局ジルは私の意思を尊重してくれた。
ごめんねジル。ありがとう。でも、逃げるのは私の矜持が許さないのだ。
そんなこんなで、長かったようなあっという間だったような3ヶ月が過ぎ去って。
ーーー結婚式の日を迎えた
前日から王城へ呼ばれた私は、侍女たちにしっかりと磨き上げられた。久々だ~この感覚~。
お城の侍女というものはいい所の令嬢達なので内心少しビクビクしていたんだけど、明日から王太子妃付として私に仕えてくれる3人の侍女は皆私より若くて素直でいい子たちだった。王太子妃の侍女としてはぶっちゃけめちゃくちゃ少ない人数だけど、正直有り難かった。知らない人間にプライベート空間を常にウロウロされるのは、前世の感覚のある今の私にはしんどい。
……これもジルの配慮なのかな……
ジルとは式まで逢えない。同じ建物にいるのに逢えないのって思っていた以上に寂しかった。
そんな寂しさを胸の奥に隠したまま、準備は着々と進んでいく。
でも侍女たちがとても可愛いく気さくに色々話しかけてくれたので、心が少し軽くなった。
せっかくの一生に一度のウエディングドレスを楽しまないとね、と余裕も出てきた。
ドレスは、襟ぐりが少し開いた部分から袖口と胸元まで総レースで覆われた、真っ白なAラインのドレスだった。腰から下のスカート部分にもレースが一面施されていて、後ろは更にレースの部分が大きく重なっている。歩くとレースの部分が揺れてとても綺麗だ。
手作りのドレスを3ヶ月でここまで仕上げてもらい本当ありがたい話である。ちなみに私はもっとシンプルでよかったけど、レースに拘ったジルは断固として譲らなかった。
袖口から胸元までレースから透ける素肌がいいらしい。あれだけ熱く語られたら拒否できない……
頭は複雑に編み込めれアップにされた。
準備が一通り終わった私はやっとジルと逢うことができた。
「ジルっ!!」
やっと逢えたことで私は嬉しくて、部屋に来てくれたジルに駆け寄ろうとした。
しかし。
そのジルの姿を見て……私は固まってしまった……
真っ白のタキシードを着て、いつも垂らしている前髪をアップにして固めて流す。怖いくらいに整った顔がはっきり見えて正装したジルは、まさにこの世のものとは思えない程の美貌の王子だった……
男の人なのに、美しいって思っちゃうよもう。
「……っ! フィー。……すごく綺麗だ……もうこのまま寝室へ行こうか……」
ジルはそう言うなり動きを止めた私の元へやってくると、手をサッと取りながら腰を引き寄せて口付けをしようとする。
その一連の滑らかで素早い動きに誰もが反応できない。
「……っジ、ジルっ! だめっ! 化粧落ちちゃうっ!」
口付けをされてようやく反応できた私は、ジルを必死に止める。こんな侍女たちがいる人前でキスなんてっ!ほら皆見てるからっ!!
「うん? いいよ落ちても。どうせ今からもっと落ちるんだし」
そう言ってにっこり笑いながら私を連れて奥の部屋に行こうとするジルをなんとか止めた。一応結婚式も立太子の宣誓も今からです!
まだ少し納得しきれていないジル(納得できないのが納得できない)を連れて、王城の奥へと行く。
ここでは神殿とかは特にないため、結婚式は人前式に近い感じかもしれない。皆に披露する感じ。その時に神への感謝と祝福を述べるのだ。
ただ、王族だけは違う。
神の石と盟約を交わして、初めて王家の一員として連なる事ができる。神の石に誓う感じかな?
その為、2人だけでまずは石と盟約を交わしにいくことになっている。
私とジルは王城の奥深くかなり入り組んだ道をどんどん進んでいき、代々魔法の力で保護され王家の人間しか解除できない入り口を抜けると、鍾乳洞のような場所に辿り着いた。その台座の真ん中に神の石はあった。
……この石見たことあるかも……
あの婚約者選びのお茶会の時テーブルの上に置かれていたと思う。神の石をそんな無造作に置いてあったなんてっ!! 今知る衝撃の事実だ。
残念な私の目には、神の石はただ大きめな水晶にしか見えなかった。ただ、よく見るとほんのりと中心が虹色に渦巻いている。
石に近づくと、ほんのりと光り輝きだした。カケラの魂に反応しているのかな?
「……フィー。いい?」
「うん! 大丈夫、痛いのとかはないでしょ?」
「ふふ。ないよ。じゃあ始めよう。ーーー我ジルヴェール・アニマ・ウェントゥスはここに在るフィーリアス・ツェントリアを王家の一員として認める」
「っえっと……ーーー我フィーリアス・ツェントリアはここに石との盟約を誓う……」
言葉を発した途端、以前ジルを喪いそうになった時にもなった眩しいくらいの光に包まれる。
ーーーあ。これ、神様だったんだ。
……神様、この間はジルを助けてくれて本当にありがとうございましたーーー
光が引くまでぎゅっと目を瞑って神々に感謝していた。
カチリ
どこかで音がした。
「フィー? 大丈夫?」
動かなくなった私を心配したジルがそっと頬を撫でてくる感触でハッとして目を開けると、心配そうに覗き込むジルの金色の瞳と目があった。
「……大丈夫。ちょっと神様にお礼を……」
「フィー。魔法を使えると思うけど、感覚わかる?」
……さっきの音がきっかけだったのか。自分の中の何かが動いている感覚というか、とにかく今までと違う感覚がある。それを手を握ったり開いたりしながら出してみる。
「……っあ」
手の先がポーッと光った。
もう一つ別の感覚がある気がするので、出してみる。すると、指先から水が出てくる。
「っわっ!」
自分でやってて自分でビックリした。
「うん。やっぱり、フィーの属性は光と水だね。光は癒しの魔法だよ。僕を助けてくれたのもフィーの力だったんだねやっぱり。水は訓練したら氷もできるし幅が広いよ。民の助けにもなる重要な属性だ。さすがフィーだね」
ジルは自分のことのように喜んでいた。
ーーーそっか。私魔法使えるようになったんだ。民にもすごく役立てるんだ。
何だか嬉しくて、自分が認められたようでくすぐったくて心がぽかぽかする。
じんわりと喜びを噛み締めていると、ジルがどこからか小箱を出して、おもむろに開けた。
その中には、とても大粒のイエローダイヤモンドで出来た耳飾りとネックレスが入っていた。
……ひぃ~~~これどんだけのお値段になるのか。ダイヤモンドの輝きがものすごい。
ジルは丁寧に私に耳飾りとネックレスをつけてくれた。
ーーー恥ずかしい……
そして、もう一つの箱には、これまたとても大きくて透明感が高いのに濃いブルーのサファイヤがついたネクタイピンが入っていた。
「……フィーつけてくれる?」
「……うん……」
ものすごい演出すぎて照れてしまって、顔はすでに茹で上がって真っ赤なのがわかる。どんだけ男前なんだジル様っ!!
お互い付け合いっ子したら、何だか嬉しくって笑い合った。
すると、またまたジルが何やら取り出す。っえ!? まだあるの?
そう思ってビックリしてたら、ジルが私の前で片膝をついて跪いて左手を優しく持った。
「フィー。僕のお嫁さんになってください」
そう言って、左手の指にそっと指輪を嵌めてくれた。
「……っジル! ……はいっ! 私をジルヴェールのお嫁さんにしてくださいっ!」
大きく返事をしながら、ジルの胸に飛び込んだ。
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