夢見るディナータイム

あろまりん

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8皿目

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奇跡的に片づけが夜までに終わって。


店でみんなで夜ご飯。



「あああああ疲れたー」

「お疲れ」

「疲れたぜー」
「くたくただなー」

「お前等2人はそんなに疲れちゃいねえだろ」



今日は何故か中華。
炒飯に、餃子。焼き、揚げ、水餃子。
マーボー豆腐に、カニ玉。

・・・・・なんでも出来ちゃうのね・・・・・



「一家に一台、巽浩一朗・・・・・」

「やめろ、人を便利なキッチンツールみたいに言うんじゃねぇよ」

「あいた」



ごつん、と皿を頭に置かれた。痛いよ・・・・・



「手が早いよ・・・・・」

「ま、巽さんだしな」
「女にも手が早いし」
「そういえば、あのロングヘアのモデルとはどうなったんだ?巽さん」

「うるせぇな」

「え、何、聞きたい」

「最近の彼女。なんだかパリコレに出たモデルだかって」
「すげえ美人。バッチリ巨乳だし」
「ま、確かにいい女だったな、外見は」

「お前等、良く見てやがるな」

「つーか、挨拶しに来たし」

「はあ?」

「オレら、ハルさんとこのバーで飲んでたらさ。
彼女とお仲間?が来てさ。『浩一朗さんとオツキアイさせてもらってます』って」

「・・・・・すげ」

「アレって、何しに来たんだ?」
「さあ?」
「よくわかんねえよな?別に俺らに言う必要なくね?」



うーん。
周りから落とす作戦じゃないの?



「お、響子は何か意見ありそうだな」

「え、マジ」
「響子さん、何かあんのか?」

「・・・・・そのときって、本当に浩一朗とその彼女、付き合ってたの?」

「どーだか?」
「どうだったんだよ?巽さん」

「付き合った覚えはねぇよ。・・・・・何度か誘いを受けたがな」

「くそーーー!!!羨ましい!!!」
「なんだよ、その言い方!!!」

「という事は・・・・・『周りの友達から固めてく』作戦じゃないの?」

「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・あ、なーる」

「既成事実、ってか?」

「そういう事。周りの友達から固めていって、『恋人』って事にしちゃえ、みたいな」

「おおおおお」
「すげえな!女の考える事ってわかんねえな?」
「まーそういう女もいるよなぁ・・・・・」
「俺が一番ワリ合わなくねぇか?」

「うーん・・・・・きっぱり断るとかしなかったの?
なんとなく、だといいように解釈しちゃって、思い込みだけで頑張れる生き物よ?
・・・・・言っててむなしいけど」



うん、むなしいわ・・・・・



4人は『自称・巽の彼女』についてなんだか話し合っていた。

どうやら、大亮さんの好みにストライクだったらしい。
うーん、大亮さん、女に騙されやすいかもしんないわ・・・・・



そんな話を聞きながら、ふと。
私は佐々木麻里子の事を思い出していた。

彼女も、透を好きになってしまって。
透にアタックし続けて。

透はうっかり彼女に気持ちが動いてしまって。

それでも私の方へ戻ってきちゃった。



悪いのは、誰?

佐々木さん?

透?

それとも、私?



「響子さん?」



ふと顔をあげれば、心配そうな顔の康太君。



「どうしたんだ?なんか、悩みごとなのか?」

「え?」

「なんか、すげえ困り顔してたぞ?響子さん?なんかあんなら、言ってみろよ?」

「え、いや・・・・・」

「俺は頭良くねえからよ、大した事言えねえけどよ。
巽さんやハルならなんとかしてくれるからよ!!!」

「おい大亮」
「お前その人に押し付けるのなんとかしやがれ」
「なんでオレは入ってないんだよ!大亮さん!!!」



また喧々囂々。
騒がしくて大変。

くすくす笑いが漏れる。



「んで?」

「え?何?」

「車の中でも言ってたろ。何か相談って」

「あー・・・・・あれね・・・・・」



いざ、聞いてみようかと思うと言いづらい。
だってさ?『彼氏が浮気してます』って言いにくいわよね?



「響子」



ふと、顔を上げれば晴明の真剣な顔。



「言いにくかったら、後で聞いてやるぞ。」

「うん、ありがとう。
・・・・・でも、みんなの意見、聞いてみたいから、言うわ」

「んだよ?言いにくいんなら、後でだっていいんだぞ。言う事ねぇ」

「平気。・・・・・ありがとう、浩一朗」



煙草をふかしながらも、私を気遣う。
ちょっとつっけんどんに話すけど、基本的に気遣いの人だ。
言ったら機嫌悪くなるから、言わないけど。



▪️ ▫️ ▪️



そして、私は彼氏、透と佐々木さんの事を話した。
重くならないように、って気を使ったんだけど。



「クソだな、その男」
「別れちまえよ」



まあ、そうだよね・・・・・(涙)

苛立たしげな色を隠さない。
しかも4人とも。



「ないよなー。浮気しといて、何もなく戻るか?」

「バレてねえ、と思ってるからだろ。男らしくねえよ」

「バレてなけりゃ、言う必要ないと思ってんだろ?だが、響子にはバレてる、と」

「あー。オレは無理だな。ていうか、他の女に行くのがねえわ」

「ま、お前はな」

「巽さんならありそうだよな」
「だよな」

「手前等、喧嘩売ってんだな?」

「まあまあ、そういう事が聞きたいんじゃねえだろ?響子」



そ、そうですね・・・・・

なんだか恋バナみたいでちょっと面白い。
男同士の裏話って感じで。



「・・・・・別れないのか?」

「え?」

「そういう男と一緒で。いいのか?」

「いいのか、って。・・・・・2年も一緒にいたら、恋というか・・・・・情もあるから、そんな簡単に別れるって思わなかったのよね。
そのまま浮気相手に行っちゃうんならともかく。こっちに戻って来ちゃうから」

「そっかー。響子さんの方が良かった、ってことか?」

「それってどうなんだ?失礼じゃねえか?」
「そりゃそうだろ。響子に対して失礼だろ」

「え、あ、ソウデスネ」

「んで?お前はどうしてえんだよ」

「な、何も考えてない・・・・・」

「別れちまえよ。そんな男、振ってやれ」

「た、巽さん」
「おっと、きたな」
「ま、俺も同感だな。・・・・・あの調子じゃ女も諦めてねえみてえだしな」

「そう、なのよねぇ・・・・・どうしたもんかしら。
透が断っても、頑張って食いさがって来ちゃうのよね・・・・・
諦められないって気持ちはわからなくもないんだけど・・・・・」

「わかってんじゃねぇよ、お前の男だろ?」

「そうなんだけどね・・・・・うーん・・・・・」

「それだけ、惚れてるんだろ?響子?」



惚れてる?
・・・・・どうなんだろう。
純粋に『好き』ってだけじゃない気がする。
一緒にいるのが楽、ってのもあるけれど。



「一番は、こっちに戻ってきたってのが大きいんだと思う。
選んでくれた、っていうか・・・・・。
2年もいると、一緒にいるだけでも楽だし。それもかなー」

「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」

「何その沈黙」

「いや、生の女性の声って感じで」

「そういう風に思ってんだなーって」

「でももう一回向こうに行ったら、あっさり振るわね」

「おおお・・・・・」
「三行半・・・・・」

「だって、2度もふら付く男ってどうなのよ?
だったら、私となんて別れてその女とどうにかなったらいいじゃない?
どっちも、なんて無理よ?女は自分が一番じゃないと嫌なんだから」

「ま、そうだな」
「さっさと振っちまえよ?んで、俺と付き合おうぜ?響子」

「ハルさん!口説くなよ!!!」
「そうだそうだ!ずるいぞ!!!」



また混ぜっ返して、賑やかになる。

これ、多分終わらないのよね?きっと・・・・・
ふふ、と笑う私を、じっと見つめる視線。



「響子」

「何?浩一朗」

「振りたいんなら、いつでも言え。効果的に登場してやるよ」

「登場?」

「おっと、俺も参加させてもらいたいな」

「ハル?」

「俺と巽さん2人で、『コイツは俺たちの女だから、もう手を出すな』って言ってやるよ」

「はああああ?」

「お、いいな。この間も会ったし、ちょうどいいじゃねぇか」
「だろ?」



にやり、と見合わせて笑う2人。

・・・・・ちょっと、心が揺れた。
だって、こんなイケメンに言ってもらえたら、すっごくいいじゃない?



「・・・・・いいかも」

「ちょ、」
「響子さんっ」

「ええ?だって、こんなにいい男が揃って奪い合い?ちょっと女としてウキウキしちゃうわー」



つい、1人でニヤニヤしちゃう。
うふふ、と笑う顔を抑えようと、両手で頬を挟んで肘を突く。

落ち着け、私。



でも、そうさせてくれない男が2人。



「いつでもいいぜ?」
「ああ、俺たちはな?」
「ずっりぃ!!!オレもオレも!」
「んじゃ俺も参加すんぜ!!!」

「ごめんそんなに来たら困っちゃう」

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