異世界に再び来たら、ヒロイン…かもしれない?

あろまりん

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森の人編 ~魔渦乱舞~

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「おい、さすがに酷くねえかよ、これはよ」

「凄いですねハハハハハハハハハハ」

「郷にも行ってんじゃねえのか」

「あの、私たちが来る前は、なんともありませんでした」
「はい、何も・・・」

「ここに来るまでに球状の蛇スネークボールは見ましたか?」

「・・・気付いた?」
「ないと思いますわ。でもいつもなら郷の反対側に出たはずですもの」

って事だな」



タイドで発生した獣種の魔物を討伐していると、中央にどデカい球状の蛇スネークボールがある事がわかった。
どうやら今回のタイドはこのパイソンスネークの交配期に重なり発生したものと思われた。

未だ俺たちの前には、デカい球状の蛇スネークボールがある。恐らくあの中に今回の統率者ボスがいる。早いところ討伐したいのはやまやまなのだが、その前に陣取る獣種…猪やら狼が邪魔をしている。



「ったく、面倒だな」

「前回よりまだマシですよ、空からの刺突を気にしなくて済む」

「・・・そりゃ間違いねえ」



ビフレストの周りにもパイソンスネークの群れがいる』と聞いて、先程エンジュ宛に通信魔法コールを放った。まだ返事は来てねえが。
…と、ひらりと魔法の鳥が戻ってきた。俺の上げた腕に止まると、女の声。



『もうみたくないですヘビ』

「・・・参ってんな」
「外界にこんなに大型の蛇はいませんしね。大群で群がる事もないでしょうし。郷にいるエルフ達にとっては慣れたものでしょうが、レディにはすまないことをしましたね」

「いや、俺もゲンナリしてるが」
「そうは言ってもはお元気では?」

「これだけ戦ってりゃな、発散したくもなんだよ。なあカーバイド」

「えっ!?僕ですか!?」

終わったか?」

「・・・いえまだ3人です」



郷から代わる代わる『食料運搬』と銘打って女達が来ている。一陣にゃ俺とカーバイド、それに音楽家。二陣には青の均衡ブルーバラストの奴がもう2人いる。討伐の間、昂ったを沈めるためとは言うが、エルフにとってもプラスになるのだからこの場を逃す手はないという事だろう。

場所がない、と主張して逃げ腰だったカーバイドは、イヴァルが作った『防音テント』を見せられて沈黙していた。これはな、諦めが肝心なんだよカーバイド。

俺の腕に止まる魔法の鳥は、まだエンジュの声を放つ。



『いっその事、夜中に全部燃やしてやろうかとも思ったんだけど、周り一面焼け野原になりそうで辛うじて止めたわ』

「よかったなイヴァル、あの郷、灰燼と化す所だったぞ」
「レディが思いとどまってくれてよかったです」

『代わりに凍らせたらいいかしらと思ったんだけど、原型留めるのよね。見たくないから破砕すればいいんだけど、後片付けがねえ』

「・・・早いところ終わらせねえと郷は消えるな」
「できてしまう所が怖いですよね」

『皆焼肉パーチーに飽きてきたみたいで、煮込み料理を作り始めてるわ。燻製を教えたら凝り出してて、なかなか美味しいかも。新しい特産になるかしら?
後、蛇革でお財布作ってもらったわ。金運上がるかしら』

「なんか特産品増えてるぞ」
「いいですね、燻製肉。こちらにも持ってきてもらえませんかね」

「その前に郷周りのパイソンスネークを片付けないとな」
「郷に残ったエルフ達でなんとかなるといいのですが」

『ああ、あと生きてる杖リビングワンド使ってみたら、なんか伸びて観葉植物みたいになったの。お花も咲いたから、そこらに刺しておいたら、皆が拝み始めたんだけどこれ放っておいていいのかイヴァルさんに聞いてくれない?
ディードさんは二陣に行ったまま、まだ戻ってこなくて。頼むわね』

「・・・おい、生きてる杖リビングワンドって」
「・・・世界樹ユグドラシルの枝、ですね。まさか花まで咲かせるとは」

「んなもん見た事ねえぞ」
「私は2度目ですね。・・・以前は世界樹ユグドラシルの世代交代の時でした」

「んじゃあ、それだってのか」
「いえ、今の世界樹ユグドラシルはまだ世代交代の時期ではないはずです。ですから、おかしいのですよ」

「息をするようにやらかすな、あいつ」



********************



生きてる杖リビングワンドさんのおかげで、ぐっすり眠れました。いやー、耳鳴りだと思ってたけど違ったんだね!

起きて広場へ降りると、何故か生きてる杖リビングワンドさんは完全に『御神体』みたいになってました。

エルフさん達が次から次へと拝んでます。
郷に残っている全員がご挨拶したのでは?



「あ、あの?あれどうしたんですか?」

「おはよう、レディ。いやね、せっかく世界樹ユグドラシル様の分身がいらっしゃるんだから、朝のご挨拶がしたいって皆がね」

世界樹ユグドラシル?の?分身?」

「ああ、生きてる杖リビングワンドの事だよ。族長から聞いていないかい?」



ああ、そういえば『世界樹ユグドラシルの枝です』って言ってたっけ。そしたら挿し木みたいな感じになってる?もしかして。花咲いちゃってるし。

昨日見た時は一輪だったが、二輪になってる。

おばちゃんエルフによると、エルフも大森林の奥まで入って世界樹ユグドラシルを見に行く事は稀らしい。
そこまで辿り着くにはそれ相応の腕と、運が必要だとか。
なんでも霧が出たり、方向感覚を狂わせたりと、森の主の許可がなければ辿り着く事ができない。だからこそ、世界樹ユグドラシルのある場所は『神域』と呼ばれるそうだ。



「あれっ、そしたらこんな簡単に挿し木しといたらまずい?」

「いいのさ、他でもないレディがそうしたんだから。
『花』を咲かす事ができたんだ、森の主もそれを許している証拠さ。タイドを越えられるようにと世界樹ユグドラシル様が見守ってくれるんだろうよ、ありがたいね」



そ、そうですか?なんかやっちゃった感があるんですけど。それより『森の主』ってなんですか?私あんまり神様とか信じてないっていうか、信じてるっていうか、どっちだろ?

すると、咲いている花を取ろうとしているお姉さんが。
よく見ると、リーファラウラさん。隣には初めて見るお姉さんも。



「リフ、リーサ、あんたたち何をしてるんだい?」

「あ、あら、おはようございます」
「おはようですの、アーリィ」



このおばちゃんエルフ、アーリィさんと言うのか。
…知らんかった。ていうか他の人全然名乗らないからなあ。

リーサ、と呼ばれたお姉さんは私の前に来ると、にこりと微笑んだ。あらやだのほほんとした感じの美人。



「クルエリーサと申しますの、よろしくですの」

「え、あ、はい。おはようございます?」

「お目にかかれて光栄ですの、レディ」



喋り方ものほほん、としたおっとりさん。
この人が前回パリピ状態になったエルフさんか。しかしこんなにのんびりおっとりした人がパリピ…?想像つかない。

そんな中、リーファラウラさんは花に手を伸ばした。取ろうとしているのかな?しかし手がぷるぷるしている。何してんだろ。



「リフ、まだ場違いだって事がわからないのかい?」

「そ、そんな、はずは」

「咲かせた本人じゃないと花は採れないよ。はずもないだろう?あんたも森の人エルフなんだから」



なんだなんだ?花が欲しいの?髪にでも飾りたいのかしら。
…これ、ホントにあの某RPGみたいにヤバいものじゃないわよね?普通の花、よね?

私は背伸びしてひょい、と花を摘む。
あっさりと採れたそれを、はい、と渡した。



「そんなに欲しいなら、どうぞ?」

「あ、あなたっ!これがどんなものかお分かりになっていらっしゃるの!?」

「花でしょ?飾りたいの?」

「~~~、っ!結構ですわ!行きますわよクルエリーサ!」
「あら、もう行きますの?ではレディ、お土産は蛇さんの卵にしますの、オムレツにしますの」

「お気づかいなく・・・」



何が気に入らなかったのか、ぷりぷり怒って行ってしまった。アーリィさん、によると『自分の手で採る』事で、世界樹ユグドラシルに認められようとしたのだとか。

やっぱりこんな挿し木みたいなのでも、特別なのね。
ていうかこの花どうしよう。

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