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マリアベルと言う女の子
しおりを挟む幼い頃に誘拐された侯爵令嬢が見つかった!
噂で聞いた時は本当に驚いた。マリアベルは小さい頃に王宮で会った事があってとても可愛らしい女の子だった。
ふわふわの髪の毛にきょとんした顔で大きな瞳はエメラルドのようにキラキラと輝いていた事を覚えている。
侯爵がヴェルナーとマリアベルを連れて登城し、その時に母に呼ばれ挨拶をすると人見知りをしたようでヴェルナーに抱きついていた。侯爵に謝られるものの、そう言った姿も愛らしかった。
ヴェルナーも悪い気はしていないようでずっとその子と手を繋いでいた。
仲が良さそうだったからヴェルナーもマリアベルがいない間はさぞかし辛かった事だろう。
先日庭でぶつかった時はその子がマリアベルであるという事がわからなかったが素直に可愛い子だ、どこの令嬢だろうか。と思った。あの時に名前を聞くのを忘れて後悔したのだが、再会はすぐに訪れた。
『あ、来たわ! 紹介するわね、息子のジェラールよ。ジェラールこちらロマーニ侯爵夫人とマリアベル嬢よ』
『まぁ……殿下ご機嫌よう』
面倒だな……母はいつも令嬢を紹介してくる。やめてくれと何度言っても聞かない……
『どうぞ、顔を上げてください』
! ! ! 顔を上げると美しい女性と可愛らしい……あの子!
『ジェラールは、今年で十一歳になったの。マリアベル嬢とは一つ違いね!』
先日の子がマリアベルだったのか……大きな緑の瞳は小さい頃と変わらない。相変わらずキラキラしている。
『殿下はもう十一歳に……時の流れの速さを感じましたわ』
夫人はマリアベルが連れ去られてから体調を崩していたんだったけ? それにしてもあの小さかったマリアベルがこの子とは……
『あら、マリアベル嬢ゴメンなさいね。おばさんたちの話なんて面白くないわよね? そうよねぇ。ジェラール、お庭を案内したら? 今はラベンダーが見頃よ』
『ロマーニ侯爵令嬢、ご案内しますよ。行きましょうか』
困った顔をしているような? それでも良い。話がしたいと思った。
それにしても全く僕に興味がなさそうだ。ラベンダーをただ見て香りを嗅いでいる。僕に見向きもしないとは……
乗馬が好きなようだが、僕も乗馬が好きだ。趣味が合いますねくらいの社交辞令くらい言えないのだろうか……
それに僕とは初めて会ったと言うが幼い頃にも、この前も会ったのに! 僕はそんなに印象が薄いのだろうか……それはそれでショックだ。王子と言う肩書きはマリアベルの前では意味のない肩書きなんだろうな。
それから母の茶会が開かれるもマリアベルは姿を現す事がなかった。招待状は届いているんだよな? そんなこんなで僕の婚約者はまだ決まっていない。
******
それから数年……学園に入学することになった。王子というのは何をしていても注目を浴びる。学園というのは貴族社会の縮図だ。ここで躓くと社交界でもうまくいかないのだ。
誰に対しても平等に優しく接しなければならない。これが学園内において王族の務めだ。
学園には優秀な平民もいる。平民と言えど、大きな商家の跡取り息子や貴族のマナーを覚えていて損はないような裕福な平民。それに一部は裕福とは言えないが学費免除で学園の寮に住むような平民もいる。これは本当に成績優秀なパターンで将来性を見込まれての事だ。
「おはようございます」
学園に着くといろんな生徒から挨拶をされる。笑顔で挨拶は基本だからな……顔の筋肉も張り付いたままだ。
「おはよう、良い天気だね」
にこりと笑うと声を掛けてきた生徒たちは嬉しそうにしていた。
「殿下おはようございます」
「マルクか、おはよう」
マルクとは僕の側近の一人だ。
「昨日は悪かったな……」
「殿下は密かに思っている令嬢とかいないんですか?」
昨日母にマルク共々呼ばれて説教されてしまったのだ。いい加減婚約者を決めないと勝手に決めると。母が決めた相手なら国益を損ねることのない他国の姫とか国内だと派閥もあるから母の味方になってくれる家柄の娘とか……? 政略結婚だよなぁ……それを務めと言われればそうなんだろうな。
「悪かった。もう少し自由を満喫したいと言うか……待ってほしい」
「……分かりました」
学園生活は今までの生活とは違って刺激を受けることもある。
「殿下ぁ、おはようございまぁす」
「ああ、おはよう語尾を伸ばすのは辞めたほうがいいよ」
にこりと微笑む相手は平民の子だ。社会経験を積んでこいと親に言われて学園に通うことにしたようだ。家では蝶よ花よと育てられたようだ。可愛がられてしか育ったようだが学園は平等であり僕は誰とでも話をする。
「もう、殿下ったら朝からイジワルですねっ」
この子の名前はエイミーと言い金持ちの商家の娘で親から貴族たちと縁を結んでこいと言われているようだ。物怖じしない態度は一部の貴族子息からはウケているようだ。色んな人種がいるんだな……
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