上 下
5 / 39

久しぶりの王宮

しおりを挟む

「ごめん、先に母上に報告しなきゃ。ルイズとシャノンも来てくれ」

「はい、わたくしも王妃様にご報告を」

 ルイズ様が返事したけれど


「えっと、わたくしは、」  

 え! 王妃様に会うの? 急すぎて戸惑う。


「行こうシャノン」

 手を繋がれて強引に歩かされてしまった。


「ナセル様、心の準備が!」

「大丈夫だって! 母上もシャノンに会うと喜ぶよ。サプライズだと思って諦めて」


 さ、サプライズ……そんな事許されませんわよ。王妃様に!


 ここは王妃様の私室……! 無理です。


 侍女に取り次ぎを頼みノックをして入室する。


「母上、ただいま戻りました」

「王妃様、ルイズでございます」


 チラッとナセル様が私を見た。あ、挨拶ね。そうですよね。緊張する……

 

「王妃様、お久しぶりでございます。シャノン・ド・コレットでございます」

 ルイズ様と共に淑女の礼をした。






「あら、まぁ! シャノンじゃないの。二人とも顔を上げて楽にしてちょうだい」


 王妃様の驚いた顔。



「サプライズ成功ですね。ルイズとシャノンと同じクラスになりました。母上にサプライズをしようと思いシャノンを連れてきたんですよ」


「あら、と言うことは三人ともSクラスなのね! おめでとう」


「「ありがとう存じます」」


「兄上もシャノンを見ると驚くかと思って、今からルイズとシャンノンを連れてお茶をしようと思います」
 

「あら、そうなのね。そうだわ! 良いものがあるのよ」


 王妃様が隣国の使者から戴いたというとっておきのお菓子があるのでお茶菓子に出すようにと侍女に指示してくださいました。


「シャノンに会うのは、ナセルの入学祝いのお茶会だと思っていたから嬉しかったわ」


 そう言っていただき、少しお話をさせてもらい退室しました。近況報告のようなものです。




「ね! 喜んでいただろう」

「はい。お会いできて光栄でした」


「ルイズ、悪いけど兄上を呼んできてくれる? 兄上には伝達してあるから時間を空けてくれるはずだ。私達は先にバラ園で待っているよ」


「ふふふ。楽しみね! また後でね。シャノン様」

 手を振って一旦お別れした。




「バラ園で遊んだことあるよね。覚えている?」

「はい。もちろん覚えています。今日のお茶会はバラ園でするのですか?」

「うん、天気もいいし外の方が気持ちいいだろう」

「はい」


 廊下を歩いていると声をかけられた。





「シャノン!」


「お父様」


「侯爵、こんにちは」


「こんにちはナセル殿下。シャノンが王宮に来ていると聞いてどうしたのかと気になってね」

 お父様は急いで来たようで、少し呼吸が辛そうでした。


「今からね、王太子殿下とルイズ様と、ナセル様とお茶会をします」

「ルイズ嬢と同じクラスだったのかな?」


「うん。ナセル様とも同じSクラスで今日は久しぶりにお会いしてお誘いいただいたの。ダメだった?」


「いや、ダメではないよ。楽しんでおいで。お茶会の後は私の執務室においで。一緒に帰ろうか、待っているから。それではナセル殿下、娘の事をよろしくお願いします」


 お父様に頭をぽんと撫でられた。


「はい、お任せください。行こうかシャノン」


 小さい頃お父様とよく王宮に来ていたのを思い出した。

 お父様は私に甘いから頻繁に連れて来てもらっていたけれど今考えたら仕事の邪魔よね。反省だわ。




 そんな事を考えているとバラ園に到着した。



「わぁ。見事に咲き誇って良い香りがします」



 くすくすと笑ってナセル様は笑いました。


「変わらないね、シャノンは……いつも同じセリフを言うんだから」


「だって……いつ見ても手入れが行き届いていて、素敵なんですもの」

 ここへきたのは八年ぶり? かな? 懐かしい。



「後で散策しよう。兄上は忙しいからどうせ三十分もいやしないさ。ちょうどティータイムを狙って誘っているんだよ」


「お忙しいのですね」

「そりゃ王太子だから忙しいさ。あっ、噂をしたら来たぞ! 兄上! こちらです」





「なんだよ。わざわざこんなところで、俺はこう見えて忙し……、ん? シャノン? シャノンじゃないか!」


「王太子殿下、お久しぶりです。シャノン・ド・コレットでございます」

 淑女の礼をした。

「顔を上げて楽に。どうしたんだ急に!」


「マックス驚いたでしょう? ナセル様がサプライズをしようと先程王妃様の元へも行きましたのよ。とても驚かれていましたわ」


 ルイズ様が説明をしてくださいました。


「だろうね。久しぶりだなシャノン。ここにいると言うことは三人ともSクラスだったのか?」


「はい」


「そうか。ナセル良かったな。シャノンは美しく……いや……変わらず可愛いな」


「……ありがとう存じます!」

 変わらないと言う事ですかね。八歳の頃と?


「ぷっ、そう膨れるな、シャノンは変わらないな」


「もう十五歳ですから、子供じゃありませんわ」


 王太子殿下は昔から気さくな方でお兄さんと言った感じがします。その頃からルイズ様とご婚約をされていたので不思議な感じですわね。

 ルイズ様は私と同じ歳なのに大人っぽい雰囲気ですし。王太子殿下とお似合いです。


 ナセル様と同じ顔立ちなのに王太子殿下は少し野性味溢れる雰囲気で陛下に似ていらっしゃいますが、お優しい方です。



 三十分程とナセル様は仰ったけれど、一時間ほどお話をさせてもらいました。とても懐かしく、楽しい時間を過ごすことができました。





























 






しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

次の役は奥様役を完璧に演じてみせましょう

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:236

深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:385pt お気に入り:4,154

可笑しなお菓子屋、灯屋(あかしや)

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:958pt お気に入り:1

転生王女は異世界でも美味しい生活がしたい!~モブですがヒロインを排除します~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:5,261pt お気に入り:1,465

裏切りの扉  

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:1,080pt お気に入り:14

転生少女は異世界でお店を始めたい

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:4,416pt お気に入り:1,713

あなたの世界で、僕は。

BL / 連載中 24h.ポイント:1,875pt お気に入り:57

処理中です...