水と言霊と

みぃうめ

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第111話    亜門&ラルフ③

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 今回、残酷描写あります。
 苦手な方はソッと閉じてくださいませ。


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 そして三時間ほど経ち、一人の女が連れてこられた。
 ラルフと俺は皇帝の後ろに立っている。

 何だこいつは!!
 気色悪ぃ!それにくっせぇぇぇ!!!
 皇帝よりも青い肌。
 皇帝よりも青いなんて有り得ない。
 なんか塗ってやがるのか?
 唇と鼻筋と目の周りは真っ白に塗られている。
 なんだこりゃ!?
 正真正銘の化け物じゃねぇか!



「皇帝陛下に拝謁いたします。
 ラルフ マルクグラーフ ギトーの妻、ウルリケでございます。」
「よく来てくれた。
 いきなりの呼び出しですまなかったな。
 今回の呼び出しは、其方に確認したいことがあってのことだ。
 まぁ座ってくれ。」
「光栄でございます。
 確認したいこととは何でございましょうか?」
「率直に問う。其方の三人の子の父親は誰だ?」
「まぁ、皇帝陛下。子の父親は皇帝陛下の後ろに立つラルフでございますわ。」
「ラルフは其方と契ったことが一度もないと申しておるが?」
「そんな戯言を信じないでくださいませ。真実、子の父親はラルフですわ。」
「其方は私のことを、ラルフの不能であるとの勇気ある発言を信ずる愚か者と申すか?」
「い、いいえ!そんなっ!そんな意図はございません!それにラルフが不能など!有り得ませんわ!」
「もうよい。川端殿、何か聞きたいことはあるか?」
 まさかこんな化け物が来るとは…
 予想外もいいところだ!!!
 くそっ!!くせぇな!何の匂いだ!?
 鼻が曲がりそうだ!!!
 近寄りたくねぇ!!!
 はぁー、やるしかねぇか……
「おい!そこの頭も股も緩いクソ女!
 お前にもわかるように説明してやる。
 お前の不貞はもう言い逃れができない。
 俺の質問に簡潔に答えろ。
 答えなかった場合、嘘を吐いた場合、順番に指を一本ずつ切り落としていく。
 大丈夫だ。痛みを感じるようにゆっっっくり切り落としてやるから。それに指は足も含めて20本もある。存分に嘘を吐け。

 後ろの騎士、そのクソ女の右手を開いて机に押さえ付けろ。」
「ちょっと!やめなさい!触らないで!」
「はははっ。嘘もダンマリもしなきゃ指はなくならないんだ。抵抗する必要あんのか?」
 そして開かれた指の薬指と小指の間にナイフを突き立てる。
「ヒィッ!」
「このままナイフを傾ければ指はなくなるなぁ。それじゃあクソ女に質問だ。三人の子の父親の名前を言え。」
 ダンマリか…
「あと5秒待つ。5、4、3、2、1。
 残念。時間切れ。」
 微笑みながらゆっくりナイフを傾けていく。
 ナイフが指にかかった途端物凄い叫び声が響き渡る。構わずゆっくりナイフを傾け続け、途中骨で抵抗があるが力で押し切っていく。

 血飛沫が飛び散る。
 俺の服が汚れたじゃねぇか!!

 ポロッと外れる小指。斜めに切り落としたからちょっと汚いなぁ。静かになったクソ女を見ると気絶していた。
「おい、氷水!」
 すかさず用意させておいた氷水を頭からぶっかける。
 すぐに目を覚まし、ガタガタ震えながら
「いっゔっっいだいー」
 と喚き出す。
「おいおい汚ねぇ声出してんじゃねぇよ情けねぇなぁ。まだあと19本あるんだぞ?お楽しみはこれからじゃねぇか?なっ!クソ女?」
 ニコニコしながら言ってやる。
 恫喝されるよりこういうのが一番怖いんだよ。
「さぁ、もう1本いってみよーかぁー。
 三人の子の父親は誰でしょう?
 5、4、3、2
「あぁぁぁっァ!アントンよ!
 アントン リッター ベーメン!」
「三人とも?」
 ブンブン頷くクソ女。
「可能性もない?」
 動かないよーこのクソ女。
「駄目じゃないかぁー嘘だったんだろ?」
「嘘じゃない!3人目は誰かわからないの!」
「だめだめー残念だけど薬指もサヨナラだねぇー。」
 そう言いながらナイフを傾けていく。
「あ゛っ!やめで!おねがいじまずぅー
 いえににっぎがあ゛るがらっ!
 それみだらっぜっいん゛ぅぅばばえがいであるっがらぁぁー!」
 ナイフが少し薬指に食い込んだところで吐いたクソ女。
「さすがクソ女。全然耐えられないねぇ根性無しだ。」
 ナイフをさっと指から外し右手に握り込みクソ女の前髪を鷲掴みにし、クソ女の右の目ん玉にナイフを寸止めする。
「おい。後で嘘だとわかったら殺してくれと言われても拷問続けるからな!
 今なら特別に許してやる。
 嘘はねぇか?」
「あ゛い!」
 クソ女は涙と鼻水と涎まみれ。



「おい!治療に連れてってやれ!
 治療を終えたら監禁しろ!」
 手を抑えていた騎士達は飛び上がりながら返事をし、クソ女を引き摺りながら連れて行った。

「皇帝。これでラルフはあのクソ女と離縁できるな?」
「ああ。
 だが、その………少しやり過ぎではないか?」
 愚王極まれりだな。
「はぁーーあんたさ、おれがさっき言った中途半端だって言った意味、本当に正しくわかってんのか?
 あんたのその中途半端な態度、姿勢、甘えたやり方その全て。あんたを信じてついてきてくれてる奴等は見てんだぞ?

 信念はないのか?
 誇りはないのか?

 この国の在り方を変えたいという強い想い。
 それにみんなが賛同してついてきてくれてんじゃねぇのか?
 誰も罰せず誰も傷つけず丸く治めてしまおうというその姿勢。
 それで何が変えられるんだ?
 貴族達はな、どうせ何やったって罰せられないと思ってんだ。だからこそ今の現状だろ?
 今のままじゃ駄目だと思いながらも行動には反映させない。俺達を呼んだのだって結局やらなきゃいけないからって言い訳してやったんだ。

 だから言ったんだ。失うぞってな。

 失うって意味わかってるか?
 失くすんじゃない。
 見限られるんだよ!!!


 俺は苦しんでるラルフを見て助けたいと思った。いずれ地球に帰って俺達がいなくなっても、ラルフ達はここで暮らしていかなきゃならねぇんだ。
 俺達に忠誠を誓い、利用しようとする態度も見せず、少しでも状況を良くしようと動いてくれる護衛についてくれた者達を少しでも苦しみから救いたい。悪い事をした奴から守りたいと思っての行動だ。
 ラルフはな、現状を何も変えてくれないあんたを
 皇帝は優しいと。
 思いやりのある方だと。
 信頼を集めることのできる尊敬する方だと言っていた。
 嫌味や悪口など一言だって口にしなかった。

 あんたはそんなラルフに何をした?
 苦しんでるラルフに嘘をつくなと怒鳴りつけただけだ。
 ラルフの気持ちを思いやることもせず、何故離縁したいのかすら聞かなかった。
 どこが優しく思いやりのある行動なんだ?
 それがなくなったら、あんたの良い所はいったいどこにある?


 あんたのやってることは目指すべきことと全く逆だ。

 何故不貞した貴族をかばい、正しい者を怒鳴りつける。
 何故害悪は尊重し、国の為になる実力者を排除しようとする?

 嫌々皇帝やってるからヤル気が出ないのか?
 国の在り方を変えたいのはブラフか?
 そう言っておけば人が集まるからか?

 言うだけ言って後は知らぬ存ぜぬ。
 それはこの国に関係のない俺達だけがやっていいことだ。」

「ラルフよ、すまなかった。
 私はお主の信頼を裏切ってしまった。」
 立ち上がり頭を下げる皇帝。
「そんなっ!頭をあげてください!」
「川端殿の言う通り、私は現状に甘えてしまっていた。
 これまでこうしていたんだからと、どこかで思っていた。」

「おい皇帝!
 良いこと教えてやるから頭上げろ。

 しーちゃんの言葉だ。

 “甘えんなよ。
 悩んで考えてどう生きていくか模索するのが人生でしょ?それを決められるのは自分自身だけ。”

 だってさ。

 十分悩んだろ?
 いい加減動き出してもいいと思うけどな?」

 皇帝は今度は俺に頭を深く下げる。
 わかってるならとっとと動けよ!

「ギュンター。乗りかかった船だ。
 あのクソ女の言ったことが本当かどうか、裏ぁとれたら教えてくれ。
 あのクソ女が関わった貴族達は漏れなく拘束。絶対自殺させるなよ。俺が全員に認めさせる!
 これから皇帝に舐めた態度とるやつらには容赦しないと見せしめにしてやる!
 皇帝!チャンス到来だ!絶好のな!見せしめにするんだ!うまいことこのチャンスをモノにしろ!」
 また頭を下げる皇帝。
「事の仔細は、必ず川端様に1番に報告させていただきます。」

「ギュンター!ちょっと来い。」
 手招きをしてギュンターを呼びつける。
「皇帝を頼む。
 支えてやってくれ。」
 と、耳打ちした。
 ギュンターは僅かにピクッとしたものの
「それが私の仕事ですので。」
 と、小声で返されるのみだった。


 ギュンターが皇帝やった方が良かったんじゃねぇか?
 と思ったのは俺だけの心に留めよう


















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