水と言霊と

みぃうめ

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第300話    魔力操作と雪

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 シモーネさんとの話し合いを終え、その足で竹馬を取りに外へと出る。
 米を炊くために作った蓋はさっき部屋に持ち帰り済みだ。

「筍って手に入ったのかな?」
「もう子達の元へ届いているはずです。」
「お米も?」
「はい。」
「じゃあ行こう!」

 子供達と遊ぶぞー!!!
 意気揚々と竹馬を…竹馬を…
 あー邪魔くさい!
 小脇に抱える量じゃない!
 重くはないけどこんなに何本もの竹持ったことなんてないんだよ!
 ハンスを見ると軽々と持ち上げていた。
 作った竹馬は足場の高さを変えたものを20組作った。
 つまり、竹は40本。
 半分ずつ持っても20本だ。
 何でハンスはこんなに楽勝なの!?
 あ………私がチビだからだ。
 背が足りてない腕も短い!
 こんなところでもチビの弊害が!

「紫愛様、少し此方に分けてください。」
「いい!持てるから!」
「ですが「いいの!」

 意地を張りムキになり、途中何回か抱えきれなかった竹を落としては拾いを繰り返し、その度に全ての竹を抱え直し、そんなに長い距離ではなかったのに随分時間がかかってしまった。
 これなら二往復した方が早かった!!
 間抜けな自分をアホらしく思う。

「あー!おねーちゃーーーん!」
 そんなアホな私を見つけ、走り寄って来てくれる子供達が可愛いのなんの!!
「なんで外いったんだよ!!!
 ころされちゃうだろ!!!
 まものはこわいんだぞ!!」

 走り寄って来た子供達の中にあの時目が合った子がいて、私を心配して怒ってくれた。

「心配かけてごめんね。
 お姉ちゃんね、みんなに言ってなかったけど、魔物と戦うために来たんだ。
 とっても強いんだよ?
 だから心配いらないよ。」

 子供達に嘘はつきたくない。
 頭を撫でながら言う。

 しかしその子は私の手を払い除け
「うそだ!!!
 どうやってたたかうんだよ!
 ぼくたちとおなじへーみんだろ!?
 それにまだ子じゃないか!」

 うん、子供は正直だよね。
 平民の見た目はその通りだと思うよ。
 でも、私って子供に見えてるのかぁー……
 グサッとくるなぁーハハハッ…

「お姉ちゃんね、魔法使えるんだよ!」
「だからうそだろ!!!
 しにたいのか!」
「ちょっとだけ使って見せようか?
 見たら信じてくれる?」
「紫愛様!!いけません!」
「大丈夫。
 子供達を傷つけるようなこと絶対しない。」

 私はその場にしゃがみ、人差し指を立て、立てた先だけに魔力を少しだけ漏れ出るようにイメージする。
 抑え込めるなら一箇所から出すことだってできるはず。
 これでできなかったら赤っ恥だなぁー。
 より具体的なイメージをするために、針で指を刺した時にプクっと膨れて出てくる血を想像する。
 うん、魔力出てる気がする。
 魔力が少なくて感覚としては微妙だけど…
 多分できる!!

 子供達に見守られながら、その微量の魔力で3㎝くらいのまん丸の氷が作れた。
 私の人差し指の先に浮いている氷を見て歓声が上がる。

「すごいっ!!!」
「ほんとにまほーだ!」
「なんで?」
「どうやったの?」
「ぼくにもできる??」
 口々に質問が飛び交う。
「ね?本当だったでしょ?」
「なんっ!どうやったのですか!?」
 私の肩を掴み問い詰めるようにしてくるハンス。
「肩、痛いんだけど。」
 私の少しの凄みと痛みの訴えに
「申し訳ありません!!」
 肩からぱっと手を離し飛び退くハンス。
「そんな顔したら子供達が怖がるでしょ?
 折角遊びに来たのに!
 お姉ちゃんと遊ぼうねー!」
「おねーちゃん!それ、なあに?」
「え?それって何のこと?」
「いまおねーちゃんがまほーでだしたやつ。」
「あ!これ!?氷だよ。
 お水が冷たくなると氷になるの。
 初めて見る?」
「うん!」
「触ってみる?」
「いいの!?」
「ずるいぞ!」
「なんでおまえだけ!」
「わたしもさわりたい!」
「はいっ!喧嘩しない!
 みんなの分作るから!一人一個!
 それでいいでしょう?」
「「「「「「うん!」」」」」」

 氷を一人一個ずつ出し、順番に渡す。

「てがぬれるよー!」
「ぼくの小さくなっちゃった!」
「ぼくのも!」
「これなくなっちゃうの!?」
「あははっ!溶けたらお水に戻るんだよ!」
「おねーちゃん、これ、たべれるの?」
「食べたい?」
「たべたい!」
「今持ってるのは食べちゃ駄目だよ!
 みんな、手は綺麗なのかな?
 うーーん、汚いね!
 みんなが綺麗に手を洗ってきたら食べられる氷もう一回出してもいいんだけどなぁ~!」
「あらってくる!」
「あ!ぼくも!」
「待って!競争じゃないよ!
 みんなにあげるから、みんなで仲良く行ってきてね!」
「「「「「「はぁーい!」」」」」」
「綺麗にしてくるんだよー!」

 子供達が手を洗いに行った隙にハンスを叱っておこう。
「ハンス、子供達の前でどういうつもり?」
「申し訳ありません。」
「貴方は子供達の憧れでお手本でしょ?
 あんな乱暴な姿見せたら騎士は幻滅されるか恐怖の対象だよ!
 一度怖い印象がついちゃったら取り戻すのに何年かかるか分かってんの!?
 折角良く思ってくれてるのに騎士は何しても許されるなんて思われたらハンス一人のせいで全部台無しになるんだから気をつけてよ!」
「申し訳、ありません。」
「ハンスなら分かってると思ってたけど?」
「軽率でした。」

 ハンスらしくない行動。
 でも何の非も無い子供達に怖い思いや嫌な思いをさせるのは許さない。

「今後ないようにして。
 もしあったら護衛外れてもらうから。」
 ハンスが息を呑む。
 だけど私は敢えて畳み掛ける。
「地球人の誰にも、二度と、近付かせない。」
 拳を握りしめているのが見える。
「………っはい!」
「子供はこの国の宝なんだよ。
 大切にね。」
「はい!」

 よし、このくらいでいいかな?
 ハンスの背中をバシッと一回叩き

「はい、お終い!
 もうすぐ子供達が戻ってくるよ!
 そうだ!お皿ないかな?」
「何にお使いですか?」
「さっきと同じ氷を出すとそのまま食べちゃうでしょ?
 あの大きさだと喉に詰まらせちゃうかもしれないから怖いんだよね。
 でも口には入れてみたい。
 だったら雪の状態にすればいいかなって。」
「ユキ?」
「ここ、雪って降らないんだっけ?」
「雨しか降るものはないと思っていました。」
「うん、その雨が凍ったのが雪だよ。」
「凍るのですか?何もせずに?」
「そう。子供達の人数分お皿が欲しいな。」
「すぐに持って参ります!」

 ハンスと入れ違いに手を綺麗にして戻ってきた子供達はキラキラした目で今か今かと氷を待っている。
「騎士のお兄ちゃんがお皿を持ってきてくれるから、それまでお姉ちゃんが良いものみせてあげるね!」

 それは、雪。
 子供達の周りにだけ雪を降らせる。
 さっきコソッとやってみたけどできた。
 ただ、気温が高いからすぐ溶けてしまう。
 なるべく低い位置から降らせないと。

 降らせるのには成功。
 子供達は大興奮。
 ただ、針の先から漏れ出す魔力が微量すぎて操作がとんでもなく難しい。
 あ、これ、私の訓練にもなるかも。

 雪を降らせているとハンスが雪を目にし、驚きの表情でお皿を手に近付いてくる。
「これも、紫愛様が?」
「そう、これが雪だよ。
 どう?綺麗でしょ?」
 余所見をしていると雪が消えてしまいそうで、すぐに子供達の方へと視線を戻す。
「神秘的ですね。」
「そうだね。」

 私に感動している余裕はないけどね!!

「はーーーい!雪は終わり!
 みんなこっちに来てー!」
「えー!もうおわり!?」
「もっとあそびたかった!」
 口々に文句が出る。
「あれぇ~?騎士のお兄ちゃんが戻ってくるまでって言わなかった?
 それに、氷食べるんじゃなかったっけ?
 食べないのかなぁ??」
「たべるたべる!」
「どんなだろう??」
「お皿に入れて配るからね!
 みんなにあげるから喧嘩しないで並んで!
 氷は水が固まってるだけだから、さっきの雪みたいに溶けちゃうと水に戻っちゃうからね!
 溶ける前に食べてね!」
「「「「「「はーい!」」」」」」

 私がお皿に出したのは1cm程度の球体の氷を一人五個。
 これなら喉に詰まらないし、一個だけじゃすぐ終わっちゃうもんね!
 お皿にどんどん出していき、配るのはハンスの仕事。
 ハンスに笑顔でお礼を言いながら受け取る子供達に頬が緩む。
 それぞれ舐めたり噛んだり、手の平に乗せて溶けていくのを不思議そうに眺めていたり、思い思いのやり方で楽しんでいる。

「もっとたべたーい!」
「ぼくも!」
「わたしも!」
「あんまり食べると身体が冷えて良くないからもうお終いだよ。
 でも!その代わりに新しい玩具作ってきたんだ!
 今度はそれで遊ぼう!
 難しいからね!
 できるかなぁ??」
「できるよ!」
「どうやってあそぶの?」
「おしえてー!」
「うん!一緒に遊ぼう!
 まずはお姉ちゃんが遊び方を見せるから見ていてね!」

 そうして今度は竹馬で思いっきり子供達と遊び、癒されるのを感じた。
 その後はお母様方に筍の下処理を教え、磨ぎ汁作成のために使ったお米を持ち帰った。














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