【完結】愛してました、たぶん   

たろ

文字の大きさ
62 / 89

シャノン、お父様と話す④

しおりを挟む
先生は少し考えてから言った。

「何故執拗にシャノン嬢を狙ったんだろう?懐中時計はさすがに今シャノン嬢が持っていないことくらいウィリアムならわかると思うんだが」

お父様が渋い顔をして答えた。

「シャノンを売るつもりだったらしい」

「売る?」

「ああ、シャノンの銀髪は隣の国の王家特有の色なんだ。その受け継がれた銀髪も今は減っているだろう?
ノエル様もロイズも受け継がれていないだろう?」

「確かにロイズは僕と同じ赤髪だし、ノエルは父親の血を受け継いで栗色だ」

わたしは思い出しながら答えた。
「ウィリアム様は外国を回る事が多かったのでわたしの髪が希少だった事を知っていたみたいです。それにわたしを連れて行けば隣の国に入りやすいかもしれないと言ってました」

「ウィリアムもかなり焦っていたんだな」
先生が呟いた。

「お父様がたまたまわたしが連れ去られるところを見ていなかったらわたしはどうなっていたか分かりませんでした。もう少しで襲われるところでした」

「「襲われる?」」

「襲われそうになったのですか?シャノンさま!」

「ええ、本当に怖かったわ。お父様たちが来てくださらなかったら、たぶん……」

お父様と先生、ロニーがテーブルを一斉に叩いた。
ヒビが入ってしまった。



◇ ◇ ◇

その後、騎士団で事件当日の事情を聞かれて詳しく話した。

団長のトーマス様曰くまだ逃げている仲間もいるらしいがこの国ではあらかた捕まえたそうだ。

母の生まれた隣の国に逃げた仲間を、隣の国と協力して捕まえることになったらしい。
隣の国でも違法薬物や偽薬が問題となっていたので両国で協力して取り組むことになったみたい。

まさかわたしの髪の色に意味があったなんて思わなかった。

子どもの頃から他の子達と髪の色が違うのはわかっていたけど、肖像画のお母様はとても綺麗な銀髪でわたしは憧れていたから一度も嫌だと思った事がなかった。

お母様を思い出せるのは、この銀髪と懐中時計だけだった。

この日、またわたしの手元に懐中時計が戻ってきた。

ただ、何かあってはいけないからと、先生の邸の金庫に入っている。

必要な時だけ懐中時計に会いに行くことにした。

因みに先生とノエル様にも遅くなったけど、お誕生日プレゼントの懐中時計を渡した。

二人ともとても喜んでくださったのでホッとした。

わたしとお父様は、少しだけ近づいた気がする。

でも、ロニー曰く
「シャノン様、簡単に許してはダメです。しっかり反省してもらわなくっちゃ!」
と、わたしより怒っている。

わたしはまだ父の謝罪を受け入れることはできない。

でも、助けてもらった時に抱っこされた時のキュッとなった胸の痛みを忘れることができない。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

私達、婚約破棄しましょう

アリス
恋愛
余命宣告を受けたエニシダは最後は自由に生きようと婚約破棄をすることを決意する。 婚約者には愛する人がいる。 彼女との幸せを願い、エニシダは残りの人生は旅をしようと家を出る。 婚約者からも家族からも愛されない彼女は最後くらい好きに生きたかった。 だが、なぜか婚約者は彼女を追いかけ……

奪われる人生とはお別れします 婚約破棄の後は幸せな日々が待っていました

水空 葵
恋愛
婚約者だった王太子殿下は、最近聖女様にかかりっきりで私には見向きもしない。 それなのに妃教育と称して仕事を押し付けてくる。 しまいには建国パーティーの時に婚約解消を突き付けられてしまった。 王太子殿下、それから私の両親。今まで尽くしてきたのに、裏切るなんて許せません。 でも、これ以上奪われるのは嫌なので、さっさとお別れしましょう。 ◇2024/2/5 HOTランキング1位に掲載されました。 ◇第17回 恋愛小説大賞で6位&奨励賞を頂きました。 ◇レジーナブックスより書籍発売中です! 本当にありがとうございます!

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

幼馴染を溺愛する旦那様の前からは、もう消えてあげることにします

睡蓮
恋愛
「旦那様、もう幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

夫は家族を捨てたのです。

クロユキ
恋愛
私達家族は幸せだった…夫が出稼ぎに行かなければ…行くのを止めなかった私の後悔……今何処で何をしているのかも生きているのかも分からない…… 夫の帰りを待っ家族の話しです。 誤字脱字があります。更新が不定期ですがよろしくお願いします。

忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】

雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。 誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。 ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。 彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。 ※読んでくださりありがとうございます。 ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

処理中です...