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1話

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わたしの名前は、エリーゼ・バセット公爵令嬢。
16歳で処刑され10年前の6歳に戻った、死んでまだ数分のわたし。

まだ、王太子殿下…いえ、第一王子とは婚約していないみたい。

ふふふ!

決めたわ!

婚約をもう一度してやるわ!
そして、わたしをとことん好きにさせて捨ててやるのよ!

お父様には………今回はわたしから捨ててやるわ!

実の娘を駒にして婚約させておきながら、殿下がマリーナ様にご執心になるとわたしを罵倒した。

殿下に捨てられそうになると、今度は殿下に協力してわたしを軟禁し、そして見殺しにした。

わたしは誰にも愛されなかった。
あんな親要らない。
婚約者なんて要らない。

二人とも捨ててやる!

わたしは前回の自分のことを考えてみた。

わたしは金髪にブルーの瞳。
綺麗な顔立ちらしい。
どちらかと言うと冷たい印象を持たれることが多かった。

とりあえずなんでも優秀にこなす事が出来たわたしは6歳の時に第一王子の婚約者にさせられた。

王子妃となる為の教育も厳しい中淡々とこなす姿は氷姫と呼ばれていた。

わたしは幼い頃にお母様が亡くなり、忙しいお父様と8歳年上のスコット兄様との3人家族。

学園の寮で暮らしていた兄様とはあまり関わりがなく、ほとんど使用人と侍女達に育てられた。

話し相手もいない中で育ったため笑う事があまりなかった。

だから、笑わなかった。
ただそれだけだった。

なのに周りの人は、わたしを無表情の笑わない人形とか、氷姫とか呼んだ。



「アン、今日って何日だったかしら?」

「はい?今日ですか?6月18日でございます。お嬢様は、熱を出されて3日間寝込まれていたのです。
まだ暫くはごゆっくりされてください。
あとで喉越しの良いスープを持って参ります」

アンはわたしの額に手を当て、熱を確認すると出て行った。

6月18日……確か第一王子と子ども達が集まるお茶会に出たのが8月1日だった記憶がある。



◇ ◇ ◇ 


第一王子に初めて会ったのは、子ども達が集まるお茶会の集まりの時だった。

わたしはお父様に連れられてお茶会へ行き、お父様は仕事があると王宮の執務室へ行ってしまった。 

ぽつんと立っていたわたしに話しかけてきた女の子がいた。
「ねえ、そんなところに立っていないでこっちにいらっしゃい」

丸いテーブルに2人で座っていた女の子達に促されわたしは椅子に腰掛けた。

「貴女のお名前は?」

「エリーゼ・バセットと申します。よろしくお願いいたします」
わたしは二人に挨拶をした。

「わたしの名前はカイラ・マクラミラン、よろしくね」
「わたしはエレン・ウィンフリーよ」

わたしと同じ歳頃の女の子達と合流出来てホッとしたはいいけど、会話がない。
二人は友人のようで楽しく話しているがわたしは黙って座ったまま。

「…………」
「ねえ、貴女、もしかして人見知りなのかしら?」

わたしはキョトンとした。
「人見知りとは何ですか?」

「え?座ってから名前は言ったけど話そうともなさらないでしょう?」
  
「…わたし、何を話していいのかわからないのです」

「え?何故」

「何故……それは……いつも家に一人でいます。
侍女や屋敷のものはいますが、挨拶と用事がある時だけ話します。それ以外はあまり話さないので何を話せばいいのかわからないのです」

「まぁ、お父様やお母様は?他にご兄弟はいらっしゃらないの?」

「お父様はお仕事が忙しくて会うことがありません。お母様はわたしが産まれてすぐに亡くなったらしく知りません。
お兄様は寮に入っているのであまり会うこともありません。お祖父様お祖母様は、領地で過ごされているので滅多に会う事はないのです」

「それってとっても寂しいじゃない」

「寂しい?」

わたしにはわからなかった。

「ねえ、貴女、、、えっと、エリーゼ様わたし達二人とお友達になりましょう」

「それがいいわ」

「そしたら、人と話すことが出来るでしょう?」

突然の申し出に戸惑いつつも同じ年の女の子に興味があったわたしは受け入れることにした。

わたしはお茶会で初めて友人ができた。



王子は、テーブルにやって来てそこでしばらくお茶をして話したら、次のテーブルへ行くという忙しい時間を過ごされていた。

わたし達のテーブルにきた王子は、二人と楽しそうに会話をして去って行った。

わたしは一言も話さなかった。

なのに、そのあと何故か婚約者に選ばれた。

たぶんお茶会に来た令嬢の中で一番身分が高かったからだろう。
もちろん6歳のわたしには断るなんてすべもなく言われたままに王子妃教育を受け続け、何もしていないのに10年後殺された。

王子は、笑わない、話さないわたしを嫌っていた。

わたしは相手から話しかけてくれれば会話が成立するので困ったことはなかったが、王子はわたしを見ていつも不機嫌だった。

「君は笑うこともないんだよね」

「ねえ、何か話してよ。その氷のように冷たい瞳……君は僕のことが嫌いなの?」

「エリーゼ、たまには君も話してよ、いい加減僕だけ話すのはうんざりだ」

色々言われ続けた。

まあ、そうだと思う。

友人になったカイラとエレンの二人はおしゃべりなのでわたしは相槌を打つだけで会話が成立していた。

わたしは二人に救われていただけだったのだ。




◇ ◇ ◇






「ねえ、アン。笑うってどうしたらいいのかしら?」

「はい?笑うでございますか?」

「ええ、そうなの。わたし笑い方を知らないの。口角を上げて見たんだけど笑顔ではないのよ、ほら見て」
わたしは口角を指であげてみた。

冷たい表情にただ口角が上がっているだけ。

「お嬢様、笑うと言うのは楽しい、嬉しい、面白いなどの感情が表に出て笑うのです。何の感情もないのに笑えることはないと思います」

「嬉しい?面白い?などの感情が表に出て笑う?
では、どうしたらそんな風に思えるのかしら?」

アンは悲しそうにわたしを見た。

「お嬢様、体調が戻りましたら孤児院へ慰問に行ってみませんか?」

「孤児院?」

「はい、わたしは休日に通っています。もちろん家令のロン様に伺って承諾して頂かないといけませんが、お嬢様の笑うということがどんなものか見ることができると思います」

「わかったわ、わたし、もう少し元気になったらロンに頼んでみるわ」

わたしはあと1か月で第一王子と出会うはず。笑顔を覚えるのが復讐の第一歩だ。
絶対に取得してやる。

そしてその笑顔でわたしに夢中にさせて捨ててやる!


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