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27話

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わたし達は王宮のクロード殿下所有である東宮に案内された。

本宮よりもちろん狭いが、一つ一つのものがセンス良く飾られている。
わたしが前回訪れていた時よりも今回の方が、子どもの割にセンス良い宮になっているのは、12歳とは言え、前回の18歳だった時の大人の感覚も持ち合わせているからかもしれない。

客室の部屋に入ると、大きなベッド。
奥にはトイレと大きなバスルーム。

テーブルと革製のチェスターフィールドソファ。

10歳の孤児院に住むわたしには、似合わない部屋だった。

東宮の侍女達は、わたしを見るなりなんとも言えない顔をしていた。
木綿のワンピースを着ているわたしは、別に汚れているわけでも臭いわけでもないのだが、明らかに見窄らしい孤児の子どもだと侮られている。

しかし側には殿下とお父様が居たので、誰もわたしに酷い態度で接する者はいなかった。

「エリーゼ、落ち着かないかもしれないけどしばらくはこの部屋で過ごしてほしい」

殿下はわたしに頭を下げて請うように話しかける。
わたしを一体なんだと思っているのだろう。わたしの顔色を伺いう。
なのに彼の目はわたしに恋でもしているかのようだ。優しくそして壊れ物を大切に扱うように、わたしに接する彼。

その様子を見て侍女達は、わたしへの態度をどうするか考えているのが手に取るように分かる。

「エリーゼ、わたしは君と話をしたい。
もう一度正面から向き合い、親として君のそばに居させてほしい」

お父様がわたしに頭を下げで、必死で話しかけてきた。
「嫌だ!貴方達と関わりたくなどない!」と叫びたかったが、使用人達がわたし達の様子を伺っている手前、わたしは二人を見て
「わたしもお話をしたいと思っております」
と言うしかなかった。
(本当は、すっごく嫌なんだけど)


周りの人達は、バセット公爵が「娘」と言ったので、わたしが娘だと認識して驚いていた。
こんな見窄らしいわたしが公爵令嬢なんて誰も思わないだろう。

わたしも、もう忘れていたマナーも王宮にきた途端に不思議に体が覚えていた。

木綿のワンピースを着ていても、背をまっすぐ綺麗な姿勢で歩く。扉を開ける時も一つ一つのの動きに気をつけて開ける。
座り方すらゆっくりと優雅に。
ティーカップを持つ時の手の動き、仕草も体に身についた動きは忘れていなかった。

それを見た侍女達は、驚いていた。





人払いをされた部屋には、3人だけ。

わたしは二人が話しかけてくるまで黙ってお茶を飲むことに集中した。

逃げ続けて3年半。

もう会うこともないと思って過ごした幸せな時間を壊されたことに、イライラしながらも現実から逃げていただけだとも思い知らされた。

レイラとエレンの話が衝撃的だった。

二人の壮絶な話しも辛かったが、この二人が自殺したことも衝撃的だった。

わたしが死んだ後のことを知りたい。
でも二人と話したくはない。

この二つが心の中で葛藤しながら黙って座っていた。


無言の中で話し出したのは殿下だった。

「………エリーゼ、君を死なせてしまってすまなかった」

謝罪を受け入れるつもりはない。

「……別に……貴方はマリーナ様を愛していました。だったら、邪魔なわたしをさっさと婚約破棄するべきだったのではないですか?そうすればわたしは処刑されないで済みました。
貴方にわかりますか?突然首を切られた痛みと苦しみ。
何もしていないのに蔑まされ、嘲笑われてわたしが一体何をしたと言うのでしょう?
殺人未遂?いつ?どこで?どうやって?
お父様に軟禁状態にされて放置されて、わたしがどうやって殺人をするのでしょう?
愛してもいない人に嫉妬などするわけもないのに。
いつも文句を言われ罵倒された殿下を好きになんてなる訳がないのに」

わたしの言葉に殿下は青い顔をしていた。
だからって何?
わたしの言葉に傷付いた?
ふざけないで、あんなにマリーナ様と寄り添いキスをしてわたしの前で仲睦まじい姿をこれ見よがしに抱き合っていたくせに、わたしを見て冷たい目で見て馬鹿にして。

「……君に好かれていない事はわかっていた。君に冷たく当たっていたのも確かだ。マリーナに対しても誤解させる行動しかとっていなかった。全て君の言う通りだ」

「エリーゼ、殿下の行動には理由があったんだ」

お父様が横から言い訳をしたいのか、話に割り込んできた。
わたしは貴方も嫌いなのに。








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