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28話

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「エリーゼ、殿下の行動には理由があったんだ」

わたしは貴方も嫌いなのに。

今のわたしは捻くれて拗れたただの我儘な少女だと自分でも思う。
でもこの二人に対して、嫌味や文句しか出てこない。

放って置いて欲しかった。

言い訳をしないで欲しい。

理由を聞いたら許さないといけなくなるの?

わたしはお父様を睨みつけた。

「理由?理由があれば人を罵倒することが許されるのですか?
婚約者の前で他の女性と仲睦まじくキスする姿を見せるのですか?
二人してわたしを嘲笑うのは許されるのですね?」

わたしはお父様を見て笑ってやった。

「貴方はわたしを屋敷に一人っきりにして放置した。無理矢理殿下の婚約者にして、殿下に愛する人ができたら、わたしを切り捨てた。
わたしが処刑されたのも貴方がわたしを殿下達に売ったからでしょう?
わたしが駒にもならない無用になったから、捨てられたんだわ。
二人ともわたしの墓の前で自殺した?
迷惑だわ、貴方達なんかわたしの今の人生には必要ない。
もう関わらないで!
わたしは貴方達の前からやっと消えたのに。もう要らないのなら最初からわたしなんかと関わらなければいいのよ!」

「エリーゼ、前回のこと、事実だけを知って欲しい
許して欲しいとは思っていない」
殿下は必死でわたしに訴えた。





「王太子である自分に群がる貴族どもを振り払いたかった。
エリーゼを亡きものにして、わたしの婚約者として無理やり娘を婚約させようとしたシーモア・ハウエル公爵に対抗していたが、若い自分の力では無理があった。
父、国王が病床に伏して公務を代わりにしていたが、ハウエル公爵派の圧力により執務に支障を来たしていた。
また、不正をしていたこともわかっていたが証拠がなかった。
娘マリーナをわたしの婚約者にすえることで、公爵自身の力をさらに得ようと企んでいたが、それを阻止できないでいた。

しかも、エリーゼの命を狙っていた。

バセット公爵には、エリーゼを外に出さないように頼んだ。

「わたしの愛するマリーナを嫉妬で虐めた罰」として謹慎させていることにした。

それは彼女を軟禁状態にすることであり、誤解させることであったが、彼女の命のほうが大事だった。

その間に、わたしの味方であるバセット公爵たち王族派と、ハウエル公爵たち貴族派で対立しながらもハウエル公爵派の弱みと悪事の証拠を探していた。

わたしはエリーゼのためと言い訳しながらマリーナと親密な関係を結んだ。

好きでもないマリーナと一線を越えて、彼女からの証言を聞き出して、あと少しでハウエル公爵を取り押さえることが出来るところまで来ていた。

なのに、わたしの動きに疑いを持たれ、仕方なくエリーゼを捕まえて、わたしはマリーナを愛しているように見せた。

マリーナがエリーゼに嫌がらせをされ殺されそうになったと言い出したからだ。

仕方がないのでエリーゼを捕まえて牢に入れた。

本当は、エリーゼを愛していた。でも、あと少しで公爵達を押さえられるところまで来て、バレる訳にはいかなかった。
あとで理由を述べて許してもらうしかないと苦渋の決断をした。

エリーゼが牢屋に入った時、マリーナは嘲笑った。わたしは隠れた服の後ろで握り拳を作って耐えた。

そして、マリーナを抱き寄せて
「エリーゼ、お前など愛してもいない。愛しているのはマリーナだけだ。お前はわたしの大事なマリーナを殺そうとした犯罪者だ」
と言って睨んで吐き捨てた。

わたしが牢屋から出たあと、マリーナとハウエル公爵はエリーゼを地下牢に連れて行き、首を切って処刑した。

わたしが知ったのは、マリーナを抱いた次の日の朝だった。

わたしはエリーゼが死んだことも知らずにエリーゼの命を助けるために好きでもない女を抱いて、嘘の愛を語った。

いや、エリーゼを抱けない性の捌け口としてマリーナに溺れていたんだ。
男のさがだから仕方がなかったんだと言い訳しながらも彼女を抱いていた。

しかも、愛するエリーゼを殺した女を、知らなかったとはいえ抱いた滑稽な男だった」

わたしは殿下の話を聞いて、笑った。

わたしは笑うことも覚えた。
楽しい、と言う気持ちも。でもこの笑いは、楽しくもうれしくもない。

おかしかった。わたしはこんな男と婚約をしていたんだ。
自分に対して笑った。

「殿下、その話を聞いてわたしは何を言い返せばいいのでしょう」

「……すまない、僕は愚かだった」

「わたしは貴方を愛していません。さっさと婚約破棄してマリーナ様と結婚して、貴方のお祖父様の傀儡になっていればそれでよかったのでは?そうすればエレンやカイラ達も不幸にはならなかった。貴方もマリーナ様を愛していたから抱いたのでしょう?ずっとそうしていれば良かったのですよ」

「……………クッ」
殿下はグッと堪えて下を向いていた。
わたしの酷い言葉に耐えているのがわかった。

でもこれは前回わたしが殿下達に言われた言葉の半分にも満たない言葉だ。

「貴方がわたしに言った言葉のごく一部ですが、思い出してください。

「エリーゼはつまらない女だ。話すのも嫌になる。その顔が鬱陶しい、どこかに消えてくれ」

「愛しているのはマリーナだけだ。今夜もマリーナと朝まで過ごす予定なんだ、君はさっさと帰ってくれないか」

いつも馬鹿にして汚いものでも見ているかのように見られていましたよね?

わたしが王子妃教育を受けていても
「君には教養なんて付くわけがないよ、親に見捨てられた令嬢、いくら言っても泣かない、怒らない、ただの人形、面白くもないよ」

わたしは貴方に会うたびに言われ続けました。

こんなこと言われて貴方を好きになるわけがありません」

「君になんとか僕に興味を持って欲しかった。
少しでも反応して欲しくて酷い言葉を吐いた。
君は平然としていたから、何を言っても傷つかないんだと思っていたんだ。マリーナに信じてもらうために君に酷いことを言った。でも君は何にも反応しないから大丈夫だと思っていた」


「そうですね、確かに貴方がマリーナ様と一緒にいてもになってもどうでもよかったです。でも、酷い言葉を言われれば流石に傷付きます。まあ、どんどん嫌いになっていくだけで最後の方はどうでもよくなっていました」

わたしの酷い言葉に殿下はかなり傷ついているのがわかっているのに止められなかった。




◆ ◆ ◆

『騎士様はいつも不機嫌    ~アラン二度目の恋~』

ゆっくり更新が始まりました。

わたしの大好きな以前のお話の登場人物が出てきます。

こちらは楽しみながら書いています!

よろしくお願いします。



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