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40話

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お茶会の日がやってきた。

わたしはお父様に用意されたドレスを着て、東宮の庭園でのお茶会に参加した。

いつもならカイラやエレンの席に座るのだが、四人用の席には二人の他にマリーナ様と見知らぬ令嬢が座っていて、わたしが座る席はなかった。

これもハウエル公爵の仕業かしら?

わたしは空いている席に座り、初めて会う方達と仲良く話していた。

前回のわたしなら知らない誰かと話すなんて出来なかったが、今回のわたしは社交辞令の挨拶もその場での適当な会話も出来るようになっていた。

笑いながら話していると、わたしにお茶が運ばれてきた。

(これを飲めばいいのね)

わたしは前回氷姫と言われたのだ。
何にも動揺せず、そのお茶を美味しそうに飲み干した。

(ほんの少し味に違和感を覚えたが普通なら気づかないくらいかしら?)

わたしはいつ体調が悪くなってもいいように、ドレスの中に幾つかの薬を忍ばせていた。

もちろんそれらは、いざ用で少しくらいの体調不良はどんと!受けて立つつもりだ。

そして十数分経った頃、胸が苦しくなってきた。
息がしにくい。目がぐるりと周りそのまま倒れた。

「きゃー‼︎」

「「誰かぁ!」」

「大丈夫?」


(思った以上にこの毒薬厄介かもしれない)

いろんな声が聞こえてくるが、そんなことを考えながらわたしの意識は失いそうになっていた。

でも、気絶した振りをして倒れる事にした。

(かなり苦しい……本当に死ぬかもしれないわね、まあ、お父様にも殿下にも素直になれなかった事が少しだけ後悔してるけど、2回目の人生は思った程酷くなかったからまぁいいかな)

なんて考えながら虚な意識の中で、わたしは倒れた振りをしながら、ドレスの胸の膨らみのデザインされた裏生地のポケットにそっと手を置いた。

(大丈夫。ちゃんとここにあるわ)

石を確かめてわたしはホッとしながら、気を失った振りをした。

これは隣国にある、魔石と言われるもので音を残すことが出来るものだ。


そんな時、

「ふふ、早く死ねばいいのよ」
この声は忘れもしないマリーナ様だ。

わたしが意識がないのをいいことに、マリーナ様はわたしの耳元でこっそり囁いた。

「あんたを今回は6年早く処刑してやるわ。あんたがいると殿下とわたしの愛の邪魔にしかならないの。
早く殺してやるわ。
その毒薬、お父様が用意したのと違ってるのよ。
じわじわとあんたの体を苦しめて死んでいくのよ。死ぬのが先か処刑されるのが先か楽しみだわ」

(やられたわ、マリーナ様はわたしを完全に殺したいのね)

わたしは苦しみの中で意識をなんとか保ちながら、医務室に運ばれた。
わたしを運んでくれたのはもちろんいつもの騎士さんなので、わたしは周りに誰もいないのを確かめて音を残した魔石を一つ騎士さんに渡した。

「……ど、毒は……すり…か…えられて……」
その言葉を発するのがやっとだった。

胸が苦しい。

息がしづらい。

気分が悪くて目が回る。

意識を保つのもそろそろ限界かもしれない。

この毒薬をなんとか中和してもらわないと、そう思ってハンカチに紅茶を染み込ませたものを騎士さんに魔石と渡した。

そしてわたしは意識を失った。





わたしが意識が戻ったのは、冷たい床の上だった。

辺りを見回したが、上の方に見える小さな窓が3つあるだけで、部屋と言えるのかおぼしきこの場所は、たぶん地下牢だと思った。

わたしはまた地下牢に入れられた。

何度入っても、なれる場所ではなく溜息しか出なかった。
ただ運が良かったのは、ドレスを脱がされていないことだ。

魔石はまだ胸の裏地に隠れている。

そしてスカートに隠されていた薬を取り出して、飲んでみることにした。

効き目は分からないが、この苦しさから少しでも解放されたい。

体を起き上がるのも辛い状態なので、とりあえずのその場凌ぎしかならないかもしれないが、解毒剤を飲んでみた。

(水が欲しい……)

辺りを見回すがそんなものはない。

誰かいないか声を出してみた。

「……だ、誰か……水……を……」

なのに反応はなかった。

この囮、思った以上に厄介かもしれない。

死を覚悟するしかなかった。




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