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57話
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アンは毎日、今のところ元気に過ごしている。
ユンとミリアとわたしは学園に通っている。
前回とは全く違う学園生活。
このままいけばアンが死ぬことはないのかもしれない。
わたしは少し安心している部分もあった。
もうあんな酷いことはこれ以上ないのではと思っている。
それでも夢でわたしの首が切られて叫びながら目が覚めることが何度もある。
どうしてもわたしの中で消えない悪夢。
まだわたしの心はあの時のまま囚われて抜け出せていないのか。
お父様はいつもわたしを壊れもののように接する。
わたしの機嫌を伺う。
そんなお父様にうんざりして、話すのも嫌で食事は普段自分の部屋で一人で食べている。
偶にお兄様がわたしの部屋を訪れて一緒に食事をしてくれる。
いつになったら前回のことを忘れてしまえるのだろう。
全てを忘れて新しい生活をするためにわたしは今を過ごす。
13歳の自分では、一人では生きていけない。
孤児院に行くか修道院で過ごすかしか今のわたしには道がない。
でも逃げるのではなく、前に進む。
院長先生と約束した。
「前に進みなさい」
わたしは前に進む、そのためにこの屋敷にいる。
いる間にわたしが出来ることは知識を得ること。
知識を得れば、どこに行っても生きてはいけるだろう。
計算が出来るので、商会で働くことも出来る。
自分で何かお店を開いてもいい。
裁縫と畑仕事なら孤児院で覚えた。
通訳の仕事も面白そう。
外国へ行ってこの国から出ることも視野に入れている。
そのために隣国の言葉の勉強も始めた。
「エリーゼ様、最近いつも何か考え事をしていますが大丈夫ですか?」
アンが心配して、わたしのそばから離れない。
「大丈夫だよ、出来ることを今しているだけなの」
「ところでアンは買い物とかで、町に出たりしているの?」
「わたしは侍女なので頼まれた時しか外には出ません。お休みの時には友人と買い物に出かけたりしますが、どうしました?」
「ううん、わたしも偶には町に行ってみたいなと思ったの。だからアンは行ったりするのかなって思って聞いてみたの」
「そうですか、エリーゼ様が町に出てみるのは、とても良いことだと思いますよ、最近は学園への登校しか外に出る事がありませんでしたものね」
(うん、それは外出するとアンがついて来て、もしも襲われたらアンが死ぬかもしれないから、外は避けているだけなんだけどね)
「いつ行かれますか?喜んでお供いたします」
「ありがとう、この勉強が落ち着いたらぜひ付き合って欲しいわ」
「これは、高等部の数式の勉強ですよね?
中等部1年生のエリーゼ様には早すぎるのではないですか?」
「うん、今から予習をしておきたいの」
わたしは16歳で殺された。
だから、それ以降の勉強がまだ出来ていない。
出来るだけ早く身につけて、他の勉強にも手を出していきたい。
「これは暫く勉強しないと無理ですね」
「うん、終わったら買い物に行こうね」
(あとひと月。大人しくしていないとね)
◇ ◇ ◇
学園の授業は二度目なので、少し退屈だがせっかくなのでしっかり聞いて首席を狙おうなどと考えている。
授業中にはやはり感じない視線が、昼休みや放課後、教室を出ると感じる。
でも出来るだけ気づかないフリをして過ごしている。
お父様が公爵家の影を何人かわたしに付けてくれているらしい。
気配はないから何処にいるのかわからない。
ふと、わたしを見守ってくれたあの事件の時の影さんを思い出した。
あの時は死ぬ程苦しくてお礼も言えなかったけど、影さんはどんな人だったんだろう。
あの影さんがいたから、わたしは絶対助かると安心していた。
いつか影さんにお礼が言えたらいいな。
昼休みどうしても調べたい事があって、図書室へ行くことにした。
「ついて行くわよ」
カイラとエレンが言ってくれたが、「一人で大丈夫だよ」と断って一人で図書室へ向かった。
今日は一度もあのなんとも気持ち悪い視線を感じなかった。
今日は欠席しているのかな?
図書室は昼休みだと言うこともあり、思うより人がいた。
わたしが本を探していると、背中に激しい痛みを感じた。
背中の辺りを触ると、手が真っ赤になっていた。
ユンとミリアとわたしは学園に通っている。
前回とは全く違う学園生活。
このままいけばアンが死ぬことはないのかもしれない。
わたしは少し安心している部分もあった。
もうあんな酷いことはこれ以上ないのではと思っている。
それでも夢でわたしの首が切られて叫びながら目が覚めることが何度もある。
どうしてもわたしの中で消えない悪夢。
まだわたしの心はあの時のまま囚われて抜け出せていないのか。
お父様はいつもわたしを壊れもののように接する。
わたしの機嫌を伺う。
そんなお父様にうんざりして、話すのも嫌で食事は普段自分の部屋で一人で食べている。
偶にお兄様がわたしの部屋を訪れて一緒に食事をしてくれる。
いつになったら前回のことを忘れてしまえるのだろう。
全てを忘れて新しい生活をするためにわたしは今を過ごす。
13歳の自分では、一人では生きていけない。
孤児院に行くか修道院で過ごすかしか今のわたしには道がない。
でも逃げるのではなく、前に進む。
院長先生と約束した。
「前に進みなさい」
わたしは前に進む、そのためにこの屋敷にいる。
いる間にわたしが出来ることは知識を得ること。
知識を得れば、どこに行っても生きてはいけるだろう。
計算が出来るので、商会で働くことも出来る。
自分で何かお店を開いてもいい。
裁縫と畑仕事なら孤児院で覚えた。
通訳の仕事も面白そう。
外国へ行ってこの国から出ることも視野に入れている。
そのために隣国の言葉の勉強も始めた。
「エリーゼ様、最近いつも何か考え事をしていますが大丈夫ですか?」
アンが心配して、わたしのそばから離れない。
「大丈夫だよ、出来ることを今しているだけなの」
「ところでアンは買い物とかで、町に出たりしているの?」
「わたしは侍女なので頼まれた時しか外には出ません。お休みの時には友人と買い物に出かけたりしますが、どうしました?」
「ううん、わたしも偶には町に行ってみたいなと思ったの。だからアンは行ったりするのかなって思って聞いてみたの」
「そうですか、エリーゼ様が町に出てみるのは、とても良いことだと思いますよ、最近は学園への登校しか外に出る事がありませんでしたものね」
(うん、それは外出するとアンがついて来て、もしも襲われたらアンが死ぬかもしれないから、外は避けているだけなんだけどね)
「いつ行かれますか?喜んでお供いたします」
「ありがとう、この勉強が落ち着いたらぜひ付き合って欲しいわ」
「これは、高等部の数式の勉強ですよね?
中等部1年生のエリーゼ様には早すぎるのではないですか?」
「うん、今から予習をしておきたいの」
わたしは16歳で殺された。
だから、それ以降の勉強がまだ出来ていない。
出来るだけ早く身につけて、他の勉強にも手を出していきたい。
「これは暫く勉強しないと無理ですね」
「うん、終わったら買い物に行こうね」
(あとひと月。大人しくしていないとね)
◇ ◇ ◇
学園の授業は二度目なので、少し退屈だがせっかくなのでしっかり聞いて首席を狙おうなどと考えている。
授業中にはやはり感じない視線が、昼休みや放課後、教室を出ると感じる。
でも出来るだけ気づかないフリをして過ごしている。
お父様が公爵家の影を何人かわたしに付けてくれているらしい。
気配はないから何処にいるのかわからない。
ふと、わたしを見守ってくれたあの事件の時の影さんを思い出した。
あの時は死ぬ程苦しくてお礼も言えなかったけど、影さんはどんな人だったんだろう。
あの影さんがいたから、わたしは絶対助かると安心していた。
いつか影さんにお礼が言えたらいいな。
昼休みどうしても調べたい事があって、図書室へ行くことにした。
「ついて行くわよ」
カイラとエレンが言ってくれたが、「一人で大丈夫だよ」と断って一人で図書室へ向かった。
今日は一度もあのなんとも気持ち悪い視線を感じなかった。
今日は欠席しているのかな?
図書室は昼休みだと言うこともあり、思うより人がいた。
わたしが本を探していると、背中に激しい痛みを感じた。
背中の辺りを触ると、手が真っ赤になっていた。
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