【完結】どうして殺されたのですか？貴方達の愛はもう要りません

84話

「ユン、ミリア待って！」
わたしは寝坊して慌てて制服に着替えて、馬車に乗り込んだ。

「エリーゼ様、また本を夜遅くまで読んでいたのでしょう？なかなか起きられないので心配しました」

二人が心配して怒っているので
「ごめんなさい、わたしね、今調べ物で忙しいの、だからつい夢中になって遅くまで本を読んでしまうの」

わたしは魔石が書いてある古書を探しては読んでいる。

数百年前のこの国にあったと言われる魔法。

そんなもの今の世界にはあるわけがない。

でも、たまに見つかる希少価値の高い魔石。

これは森の奥深くで偶然見つかる石。

その石は、一つ一つ特徴がある。
暗いところで光を照らし出す石。
音や姿を記憶する石。
暖かくなる石。
他にもいろんな事ができる石がある。

見つけると一つが一年分の文官の人の給料くらいの値段で取引される。

わたしも一つだけ持っている。
それは音や姿を記録する石。

これは前回の時に、お母様がくださった魔石。

そして今回も同じようにお母様がくださった。

いつもわたしの首にペンダントとして掛けている。

わたしのお守り。

そして今調べているのがこの魔石について。

甦りの石。なんてないよね？

巻き戻しの石。なんてある？

過去に戻る石。あるわけないか……

ならばなんでも叶えてくれる石。

馬鹿なことばかり考えながら調べているが、魔石についての古書はあまり見つからない。

王宮内の図書館ではなく、王家御用達の特別書庫室に入れれば調べられるかもしれない。

でもそれはわたしでは出来ない。

だから今レンス殿下が探してくれている。

魔法なんてあり得ない。

でもわたし達が巻き戻ったのも、わたしが過去に行ったのも、突然新しい世界に変わったのも全て現実。

それを突き止めることが出来るかわからないけど、もうこれ以上変えるのはいけない、ダメだと言うことは分かる。
自然の摂理を逆行し過ぎて、いつかその齟齬が何処かから出てくるのではないかと思う。

だからもし理由が分かれば、止めたい。

これ以上変えてはいけない。

辛くても苦しくても一人一人の人生を全うして生きるべきなんだから。
わたしは変えてしまったこの人生をこれ以上壊さないように大切に生きないといけないと思っている。


「エリーゼ様！」
ハッ！

「ごめんなさい、どうしたの？」

「学園に着きました。馬車を降りますよ！」

わたしは考えこんでいたら、いつの間にか学園についていた。

教室に入ると、カイラとエレンが待っていた。

「今日も遅かったわね」

「ほんと、お寝坊さんになったのかしら？」

「ごめんなさい、本の読み過ぎでした」
わたしが反省してシュンとしたら

「体壊してしまうわ、無理したら駄目よ」
と、二人が心配してくれた。

「二人ともありがとう。無理しない程度に読むわ」

「エリーゼ！おはよう、遅かったな」
ノアの明るい声が聞こえてきた。

最近はレンス殿下も交えてみんなで昼食を摂ることもあるので、ノアもレンス殿下と仲良くなっている。

レンス殿下とわたしは一切調べ物のことは話さない。

お互い話したい時は屋敷に帰ってから、レンス殿下がわたしの屋敷に顔を出しに来る。

そしてお兄様と三人で話し合いをしているがまだそれらしい話は出てこない。




「やはりそんな石は今のところ本にはのっていないみたいだ」
レンス殿下の言葉にわたし達は溜息を吐いた。

「やはり中々見つかりませんね、焦らずゆっくり探していきましょう」
お兄様がそう言うとわたし達も頷くしかなかった。

無いものはない。

だから今は焦らない。

そんな時レンス殿下が突然言い出した。

「夏休みは南の領地へ帰ります。エリーゼ様、お母様に会いにきませんか？
兄上のこともあるので我が家にお泊めすることは難しいと思いますが、僕のお父様の従兄弟の別荘に暫くお泊めすることが出来ます。そこからならお母様が居る病院も近いので会いにいきやすいと思います」

「是非行かせていただきます。お兄様、いいですよね？」

「父上に聞かないといけないけど、大丈夫だと思うよ」