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エピローグ
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18歳になり、高等部の卒業式がもうすぐ。
卒業式のダンスパーティーがあるというのに、わたしには婚約者も恋人もいない。
「ねえ、ブラッド。わたしのダンスのパートナーになってもらえないかしら?」
いつもの夜会や舞踏会では、お父様がわたしの相手をしてくれる。
でも当日はお父様がどうしても仕事を抜けられないと言われた。
(本当は無理すれば出席できるらしい)
お父様はわたしと出席しようと思っていたがお断りした。
だから、わたしには相手がいない。
困った(振りをした)わたしはブラッドに頼ることにした。
(お願い!嫌な顔をしないで)
わたしは澄ました顔で、我儘な振りをして彼に聞いた。
「エリーゼ様、わたしでよろしいのですか?同じ年頃の方にお願いしてみてはいかがですか?」
「駄目よ!!」
わたしは思わず大きな声が出た。
「…あ、だってわたしが誰かに声を掛けてしまうと期待されてしまうわ、わたしがなんとも思っていなくても」
「わたしになら大丈夫だと思っているのですね」
「ええ、ブラッドだもん」
「お困りなのですか?」
「そ、そうよ、だから一緒に参加してくれないかしら?」
「……旦那様の仕事は当日そんな重要ではないので時間を作るのは簡単なはずですが?」
「……え?」
(バ、バレてる……)
わたしはブラッドの目を見る事が出来なかった。
「もう!」
わたしは諦めて開き直ることにした。
「ブラッドと、学園最後の卒業パーティーに参加したいの!」
わたしは真っ赤な顔をしてブラッドを見た。
「エリーゼ様、それは主としての命令でしょうか?」
「そ、そうよ!…………違う……わたしが貴方と参加したかったの。嫌なら無理には言わないわ、お父様にお願いするから、ごめんなさい」
わたしはこれ以上は恥ずかしいし情けなくて何も言えなかった。
だって16年プラス12年、わたしは誰にも告白なんてした事がない。
なんて言えばいいのかわからないんだもん。
シュンとして俯いてしまったわたしにブラッドは優しく囁いた。
「エリーゼ様、喜んで参加させていただきます」
「え?」
思わず嬉しさで顔を上げて
「いいの?嬉しいわ」
わたしは満面の笑顔で彼を見つめた。
そして、卒業式の日。
アンとユンとミリアがわたしのために、メイクと髪を結ってくれた。
ドレスの色はブラッドの黒い瞳の色を所々に入れた、ワインレッドの大人っぽいデザインのドレスにした。
少しでも彼に近づきたい、わたしが幼くて彼が恥をかかないようにと選んだドレス。
そして彼の服はわたしの金色の髪とブルーの瞳の色を選んで着ていた。
わたしはそれだけで胸がいっぱいで、恥ずかしくて。
アン達は生温かい目でわたしを見ていたが気付かないふりをしていた。
「ブラッド、今日はよろしくね」
「エリーゼ様、とても美しいです」
彼の優しい甘い笑顔にわたしの心臓のドキドキが止まらなかった。
そして卒業パーティーで初めて彼と踊った。
わたしとブラッドはベランダに出てダンスで火照った体を涼ませていた。
とても楽しくて幸せで、
「ブラッド、ありがとう、いい思い出ができたわ」
「エリーゼ様が喜んでくれたのならよかったです、これは卒業祝いです、ほんの気持ちですが」
彼がくれたプレゼントは、ネックレスだった。
わたしの瞳の色、ブルーサファイア。
「ありがとう、今つけてもいいかしら?」
「ではわたしがおつけしても宜しいですか?」
「お願いするわ」
彼の顔が首筋に近づいてきた。
わたしは彼の呼吸の音が聞こえて、恥ずかしくてドキドキした。
なのに彼は女性慣れしていて涼しい顔をして平然としている。
(当たり前よね、28歳の大人なのよ……)
わたしは彼の恋愛のことを考えると少し切なくなる。わたしでは恋愛対象になれない。
「好きです」その一言を伝える事が出来ない。
わたしと彼の年齢差にいつも一歩が踏み出せないでいる。
わたしみたいな歳の離れた子どもを相手にしたいなんて思わないのはわかっている。
でも、これから彼と接しづらくなるのがわかっていてもこの気持ちをもう抑えられないでいた。
「ブラッド、わたし……わたしね……っ…あ」
わたしは突然ブラッドの口で話すのを止められた。
彼の唇がわたしの唇を塞いだ。
(今キスをしているの?)
わたしは驚いてブラッドを見ていたが、彼はさらに深いキスをしてきた。
わたしは彼にされるがままにキスを受け入れた。
そして唇が離れると、
「エリーゼ様、貴女をずっと愛しています」
ブラッドは優しくわたしの頬をそっと触りながら言った。
そしてわたしは……
「わたしも貴方を愛しています」
END
◆ ◆ ◆
短編の予定でしたがかなり長い長編になってしまいました。(大汗)
最後までお付き合いありがとうございました。
14日から番外編を少しだけ更新していく予定です。
まずはブラッド編です。
よろしくお願いします。
そして、新しいお話も書き始めました。
[わたしはお飾りの妻らしい。
~16歳で継母になりました~]
こちらはサラッと短めに書いていく予定です。
もしよろしければ読んでみてくださいね。
卒業式のダンスパーティーがあるというのに、わたしには婚約者も恋人もいない。
「ねえ、ブラッド。わたしのダンスのパートナーになってもらえないかしら?」
いつもの夜会や舞踏会では、お父様がわたしの相手をしてくれる。
でも当日はお父様がどうしても仕事を抜けられないと言われた。
(本当は無理すれば出席できるらしい)
お父様はわたしと出席しようと思っていたがお断りした。
だから、わたしには相手がいない。
困った(振りをした)わたしはブラッドに頼ることにした。
(お願い!嫌な顔をしないで)
わたしは澄ました顔で、我儘な振りをして彼に聞いた。
「エリーゼ様、わたしでよろしいのですか?同じ年頃の方にお願いしてみてはいかがですか?」
「駄目よ!!」
わたしは思わず大きな声が出た。
「…あ、だってわたしが誰かに声を掛けてしまうと期待されてしまうわ、わたしがなんとも思っていなくても」
「わたしになら大丈夫だと思っているのですね」
「ええ、ブラッドだもん」
「お困りなのですか?」
「そ、そうよ、だから一緒に参加してくれないかしら?」
「……旦那様の仕事は当日そんな重要ではないので時間を作るのは簡単なはずですが?」
「……え?」
(バ、バレてる……)
わたしはブラッドの目を見る事が出来なかった。
「もう!」
わたしは諦めて開き直ることにした。
「ブラッドと、学園最後の卒業パーティーに参加したいの!」
わたしは真っ赤な顔をしてブラッドを見た。
「エリーゼ様、それは主としての命令でしょうか?」
「そ、そうよ!…………違う……わたしが貴方と参加したかったの。嫌なら無理には言わないわ、お父様にお願いするから、ごめんなさい」
わたしはこれ以上は恥ずかしいし情けなくて何も言えなかった。
だって16年プラス12年、わたしは誰にも告白なんてした事がない。
なんて言えばいいのかわからないんだもん。
シュンとして俯いてしまったわたしにブラッドは優しく囁いた。
「エリーゼ様、喜んで参加させていただきます」
「え?」
思わず嬉しさで顔を上げて
「いいの?嬉しいわ」
わたしは満面の笑顔で彼を見つめた。
そして、卒業式の日。
アンとユンとミリアがわたしのために、メイクと髪を結ってくれた。
ドレスの色はブラッドの黒い瞳の色を所々に入れた、ワインレッドの大人っぽいデザインのドレスにした。
少しでも彼に近づきたい、わたしが幼くて彼が恥をかかないようにと選んだドレス。
そして彼の服はわたしの金色の髪とブルーの瞳の色を選んで着ていた。
わたしはそれだけで胸がいっぱいで、恥ずかしくて。
アン達は生温かい目でわたしを見ていたが気付かないふりをしていた。
「ブラッド、今日はよろしくね」
「エリーゼ様、とても美しいです」
彼の優しい甘い笑顔にわたしの心臓のドキドキが止まらなかった。
そして卒業パーティーで初めて彼と踊った。
わたしとブラッドはベランダに出てダンスで火照った体を涼ませていた。
とても楽しくて幸せで、
「ブラッド、ありがとう、いい思い出ができたわ」
「エリーゼ様が喜んでくれたのならよかったです、これは卒業祝いです、ほんの気持ちですが」
彼がくれたプレゼントは、ネックレスだった。
わたしの瞳の色、ブルーサファイア。
「ありがとう、今つけてもいいかしら?」
「ではわたしがおつけしても宜しいですか?」
「お願いするわ」
彼の顔が首筋に近づいてきた。
わたしは彼の呼吸の音が聞こえて、恥ずかしくてドキドキした。
なのに彼は女性慣れしていて涼しい顔をして平然としている。
(当たり前よね、28歳の大人なのよ……)
わたしは彼の恋愛のことを考えると少し切なくなる。わたしでは恋愛対象になれない。
「好きです」その一言を伝える事が出来ない。
わたしと彼の年齢差にいつも一歩が踏み出せないでいる。
わたしみたいな歳の離れた子どもを相手にしたいなんて思わないのはわかっている。
でも、これから彼と接しづらくなるのがわかっていてもこの気持ちをもう抑えられないでいた。
「ブラッド、わたし……わたしね……っ…あ」
わたしは突然ブラッドの口で話すのを止められた。
彼の唇がわたしの唇を塞いだ。
(今キスをしているの?)
わたしは驚いてブラッドを見ていたが、彼はさらに深いキスをしてきた。
わたしは彼にされるがままにキスを受け入れた。
そして唇が離れると、
「エリーゼ様、貴女をずっと愛しています」
ブラッドは優しくわたしの頬をそっと触りながら言った。
そしてわたしは……
「わたしも貴方を愛しています」
END
◆ ◆ ◆
短編の予定でしたがかなり長い長編になってしまいました。(大汗)
最後までお付き合いありがとうございました。
14日から番外編を少しだけ更新していく予定です。
まずはブラッド編です。
よろしくお願いします。
そして、新しいお話も書き始めました。
[わたしはお飾りの妻らしい。
~16歳で継母になりました~]
こちらはサラッと短めに書いていく予定です。
もしよろしければ読んでみてくださいね。
応援ありがとうございます!
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