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番外編 ブラッド編 ①
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俺が変えたエリーゼ様の人生を、幸せだと言ってくれた。
俺に感謝していると。
俺は貧乏男爵家の三男で、親からは期待もされず放置され自分の力だけで生き抜いてきた。
前回の人生では高等部に通うため、年上の金持ちの未亡人に取り入りお金を出してもらって卒業した。
女なんて、俺のこの容姿目的でペットのように扱う化粧お化けでしかなかった。
それでも化粧お化け達のおかげで卒業できたのだから感謝するしかない。
ちなみに俺は、おばさん達を最後まで抱くことはしなかった。
適当に笑顔で隣に座り甘いキスをして、抱きしめるだけでいくら体を求められても軽く拒否をすると、16、7の男の子に無理やりさせようとはしなかった。
俺の成績は優秀だった。
さらに身体能力が特別高かったので、俺はすぐに王宮の保安部のトップの人に目をつけられて、「来ないか?」と打診された。
貧乏男爵家の三男では大した仕事に就くことは出来ない。
だから俺はすぐに二つ返事で頷いた。
それからは厳しい訓練が続いた。
一年掛けてなんとか「影」として使い物になった俺は先輩達に鍛えられながらも仕事を頑張った。
未亡人達との関係もすでに絶っていた。
恋人といえる関係は面倒で一晩の遊びで適当に付き合える女性を好んで相手にした。
仕事柄、一人にのめり込むのは危険だし、人を愛する感情なんてなかった。
あるのは男としての欲だけ、それもたまに適当に相手になってくれる女と遊ぶのが楽だった。
そんな俺が前回護衛についたのがエリーゼ様だった。
クロード殿下の婚約者としてしか認識していなかった彼女。
冷たいとか氷姫とか言われていたが、確かにあまり表情の変わらない人だと思った。
なのにたまにクロード殿下をそっと見つめる目は、愛おしそうにしていた。
エリーゼ様に興味を持ち、またそんな顔を見たいと思い、俺は護衛につくといつも彼女の目を追う。
時に宰相である父親の事を、子供が愛情を求めるように遠くから見つめている。
そして、友人達と楽しそうに歩く女の子達を黙って見ていた。
時には親子で歩く人を。
庭園に行き、花をじっと見ている姿も何度も見た。
この子は表情が乏しいだけで本当はとても繊細な子なのだろうと思った。
時に泣いて迷子になった子どものそばに行き、手を繋ぎ一緒に探してあげる優しさもあり、俺は彼女を見守るはずの仕事なのに、彼女のそばで彼女を見るのが楽しみになっていた。
自宅に軟禁されている時も彼女は部屋で読書をして、勉強をして時間を目一杯使い、自分を高めていた。
そんな彼女が、屋敷を抜け出して孤児院へ通い出した時は驚いた。
俺は彼女が、子供達といる時に優しい顔になるのがたまらなく愛おしかった。
殿下にも宰相である父親にも、彼女が屋敷を抜け出して孤児院へ行っていることは知らせなかった。
この人のほんのひと時の幸せを失わせたくはなかった。
でも、彼女は、囚われた。
それはマリーナ達の悪事を炙り出すためだった。
彼女はそれを知らない。
殿下と父親の二人に裏切られ、冤罪をかけられたと本人は思っていた。
さらにクロード殿下とマリーナ様の仲睦まじい姿を見せられ、マリーナ様達に処刑された。
演技とはいえ、本人が知らなけばそれは浮気でしかない。
クロード殿下とエリーゼ様の護衛をこれからどうするか話し合っているほんの30分の間に、エリーゼ様は地下牢の処刑台で首を落とされていた。
殿下はその事を知らず、マリーナ様と朝まで閨を共にしていた。
俺はエリーゼ様が処刑されて亡くなった姿を見て、殿下と父親の公爵に伝えなかった。
朝になって誰かに聞いてショックを受ければいいんだ。
あんな糞みたいな二人に知らせる気になれなかった。
俺は彼女の遺体を朝までずっと見守った。
これ以上この人を誰かに触らせない、屈辱を与えないために。
柔らかい毛布をかけて、ゆっくりねかせてあげることしかできなかった……永遠に……
次の日の朝二人はエリーゼ様の死を知って、衝撃を受けて泣き崩れていた。
それでも二人は、マリーナ達の前ではにこやかにしていた。
犯罪を全て白日の元に曝け出して、処刑台に送るために。
俺はそんなことどうでもよかった。
あの見守り続けたエリーゼ様がいなくなった。
その喪失感が俺を狂わせた。
もう一度会いたい、あの子の優しい笑った顔を見たい。
俺は誰も知らない、忘れ去られた宝庫に入った。
ここは「影」である俺が、王宮内全てを把握する時にたまたま見つけた場所。
他の影すら気づかれなかった場所だった。
隠れ通路の、とある天井の石を一つ触れると開く隠し部屋。
そこには魔石や宝石、古い書物がある。
数百年数千年、ここに静かに眠っていたもの達だ。
俺はたまたま一つだけ微妙に違う天井の石が気になり触れて見つけたのだ。
普通の人にはわからない、ほんの少しの違い。
俺にはほんの少しだけ、魔力がある。
その魔力が魔石の在処を見つける。
特に魔法が使えるわけでもないが、変わった石に不思議と惹かれてしまう。
そしてそこで見つけたのが時戻しの魔石だった。
俺はそれを使いエリーゼ様の「時」を巻き戻したのだった。
俺に感謝していると。
俺は貧乏男爵家の三男で、親からは期待もされず放置され自分の力だけで生き抜いてきた。
前回の人生では高等部に通うため、年上の金持ちの未亡人に取り入りお金を出してもらって卒業した。
女なんて、俺のこの容姿目的でペットのように扱う化粧お化けでしかなかった。
それでも化粧お化け達のおかげで卒業できたのだから感謝するしかない。
ちなみに俺は、おばさん達を最後まで抱くことはしなかった。
適当に笑顔で隣に座り甘いキスをして、抱きしめるだけでいくら体を求められても軽く拒否をすると、16、7の男の子に無理やりさせようとはしなかった。
俺の成績は優秀だった。
さらに身体能力が特別高かったので、俺はすぐに王宮の保安部のトップの人に目をつけられて、「来ないか?」と打診された。
貧乏男爵家の三男では大した仕事に就くことは出来ない。
だから俺はすぐに二つ返事で頷いた。
それからは厳しい訓練が続いた。
一年掛けてなんとか「影」として使い物になった俺は先輩達に鍛えられながらも仕事を頑張った。
未亡人達との関係もすでに絶っていた。
恋人といえる関係は面倒で一晩の遊びで適当に付き合える女性を好んで相手にした。
仕事柄、一人にのめり込むのは危険だし、人を愛する感情なんてなかった。
あるのは男としての欲だけ、それもたまに適当に相手になってくれる女と遊ぶのが楽だった。
そんな俺が前回護衛についたのがエリーゼ様だった。
クロード殿下の婚約者としてしか認識していなかった彼女。
冷たいとか氷姫とか言われていたが、確かにあまり表情の変わらない人だと思った。
なのにたまにクロード殿下をそっと見つめる目は、愛おしそうにしていた。
エリーゼ様に興味を持ち、またそんな顔を見たいと思い、俺は護衛につくといつも彼女の目を追う。
時に宰相である父親の事を、子供が愛情を求めるように遠くから見つめている。
そして、友人達と楽しそうに歩く女の子達を黙って見ていた。
時には親子で歩く人を。
庭園に行き、花をじっと見ている姿も何度も見た。
この子は表情が乏しいだけで本当はとても繊細な子なのだろうと思った。
時に泣いて迷子になった子どものそばに行き、手を繋ぎ一緒に探してあげる優しさもあり、俺は彼女を見守るはずの仕事なのに、彼女のそばで彼女を見るのが楽しみになっていた。
自宅に軟禁されている時も彼女は部屋で読書をして、勉強をして時間を目一杯使い、自分を高めていた。
そんな彼女が、屋敷を抜け出して孤児院へ通い出した時は驚いた。
俺は彼女が、子供達といる時に優しい顔になるのがたまらなく愛おしかった。
殿下にも宰相である父親にも、彼女が屋敷を抜け出して孤児院へ行っていることは知らせなかった。
この人のほんのひと時の幸せを失わせたくはなかった。
でも、彼女は、囚われた。
それはマリーナ達の悪事を炙り出すためだった。
彼女はそれを知らない。
殿下と父親の二人に裏切られ、冤罪をかけられたと本人は思っていた。
さらにクロード殿下とマリーナ様の仲睦まじい姿を見せられ、マリーナ様達に処刑された。
演技とはいえ、本人が知らなけばそれは浮気でしかない。
クロード殿下とエリーゼ様の護衛をこれからどうするか話し合っているほんの30分の間に、エリーゼ様は地下牢の処刑台で首を落とされていた。
殿下はその事を知らず、マリーナ様と朝まで閨を共にしていた。
俺はエリーゼ様が処刑されて亡くなった姿を見て、殿下と父親の公爵に伝えなかった。
朝になって誰かに聞いてショックを受ければいいんだ。
あんな糞みたいな二人に知らせる気になれなかった。
俺は彼女の遺体を朝までずっと見守った。
これ以上この人を誰かに触らせない、屈辱を与えないために。
柔らかい毛布をかけて、ゆっくりねかせてあげることしかできなかった……永遠に……
次の日の朝二人はエリーゼ様の死を知って、衝撃を受けて泣き崩れていた。
それでも二人は、マリーナ達の前ではにこやかにしていた。
犯罪を全て白日の元に曝け出して、処刑台に送るために。
俺はそんなことどうでもよかった。
あの見守り続けたエリーゼ様がいなくなった。
その喪失感が俺を狂わせた。
もう一度会いたい、あの子の優しい笑った顔を見たい。
俺は誰も知らない、忘れ去られた宝庫に入った。
ここは「影」である俺が、王宮内全てを把握する時にたまたま見つけた場所。
他の影すら気づかれなかった場所だった。
隠れ通路の、とある天井の石を一つ触れると開く隠し部屋。
そこには魔石や宝石、古い書物がある。
数百年数千年、ここに静かに眠っていたもの達だ。
俺はたまたま一つだけ微妙に違う天井の石が気になり触れて見つけたのだ。
普通の人にはわからない、ほんの少しの違い。
俺にはほんの少しだけ、魔力がある。
その魔力が魔石の在処を見つける。
特に魔法が使えるわけでもないが、変わった石に不思議と惹かれてしまう。
そしてそこで見つけたのが時戻しの魔石だった。
俺はそれを使いエリーゼ様の「時」を巻き戻したのだった。
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