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別ルート もう一つの話。クロード編。③
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わたしは、グッと堪えて
「帰りましょう」
と、三人に言うと、殿下達に頭を下げた。
「いいのですか?」
「お話しした方がよろしいのでは?」
ユンとミリアが帰るのを止めようとしたが、
「エリーゼ様が帰ると言うのなら行きましょう」
とブラッドがわたしの気持ちを何も言わずに察してくれた。
汽車の中でクロード殿下の顔がずっと頭に残っていた。
それでもわたしが選んだのは彼ではない。
彼を信用できないのだ。
またわたしを裏切るかもしれない、他に愛する人ができるかもしれない。
そんな思いを持ちながら彼の側にいることはわたしにはできない。
わたしは夏休みが明けて学園に戻ると、今まで以上に勉強に励むことにした。
お兄様があとを継げば、わたしはいずれ邪魔になる。
その時に一人でも生きていけるようになるために勉強を頑張っていれば、何か出来るようになっているかもしれない。
レンス殿下は、たまにわたしに会いに来る。
ユシリス様の具合を教えてくれるために。
以前のように生きる気力もなく廃人のように過ごすことは無くなったらしい。
今はジョシュア様が会いに行くとユシリス様の車椅子を押しながら、二人で外に散歩に行かれることもあるそうだ。
一日でも早くユシリス様が辛い過去を忘れて、「今」を生きて欲しい。
そしてわたしも少しずつ新しい生活に慣れて、クロード殿下のことはあまり思い出さないようになってきた。
そしてわたしが16歳になった時、噂でクロード殿下が婚約したらしいと囁かれるようになった。
今回のわたしは彼の婚約者ではないし、彼も王太子殿下ではない。
継承権はあるが第三位なので、たぶん王になることはないだろう。
南の領地で公爵にいずれはなると思う。
その横にいるのはもちろんわたしではない。
わたしとクロード殿下の関係を知るものはこの世界ではあまりいない。
だから、みんなわたしの前でも普通に話す。
「クロード殿下の婚約者なんて羨ましいわ。王太子妃になって厳しい日々を送るよりも、公爵夫人の方が絶対楽だしいいわよね」
(うん、確かにお妃教育はかなりハードだもの、でも公爵夫人も大変だと思うけど?)
「わたしも一度でいいからクロード殿下に愛されてみたいわ」
(すっごい重いわよ、彼の愛)
「あのクロード殿下に見つめられたらもう死んでもいい」
(死んだけど嬉しくないわ)
「クロード殿下が今王都に来ているって知ってる?」
(え?知らない……うそ……何かあったのかしら?)
「国王陛下に呼ばられているらしいの」
(そうなんだ……)
わたしは机に座って本を読むフリをしてみんなの話をこっそり聞いていた。
わたしは彼がこの王都にいると聞いただけで震えが止まらなかった。
何故?
彼が怖いの?
もうあの領地に行って2年が経っているのに……
わたしは動揺を誰にもバレないように、必死で本を読んでいるフリをしていた。
「エリーゼ、顔色が悪いわ、どうしたの?」
エレンが心配そうに声をかけてきた。
「ほんと?真っ青よ?」
カイラもわたしの顔を覗き込んだ。
「…大丈夫……」
わたしは何でもないかのように笑顔で答えたつもりだった。
「エリーゼの馬鹿……そんな傷ついた顔をして……」
エレンが言ってる意味がわからなかった。
「わたしの顔?」
「クロード殿下に婚約者が出来たと噂され始めてからの貴女は最近ずっと酷い顔をしているのよ、自分では気づいてないのね」
「酷い顔?傷ついた顔?」
わたしは意味がわからなかった。
だってもう思い出すこともないし考えることもなかった。
殿下に婚約者ができたと聞いてもなんとも思っていないの。
「エリーゼ、外に出ましょう、ここに居ては駄目だわ」
カイラがわたしを椅子から立たせて廊下に連れ出してくれた。
「エリーゼ、泣かないで……」
カイラはわたしを抱きしめてくれた。
「泣いてなんかいないわ、どうして?泣く必要があるの?」
わたしは泣いてなんかいない。
だって自分が彼から手を離したの。
だから泣く資格なんてない。
なのにカイラの腕のなかで泣いていた。
エレンはわたしの背中をそっと撫でてくれていた。
「帰りましょう」
と、三人に言うと、殿下達に頭を下げた。
「いいのですか?」
「お話しした方がよろしいのでは?」
ユンとミリアが帰るのを止めようとしたが、
「エリーゼ様が帰ると言うのなら行きましょう」
とブラッドがわたしの気持ちを何も言わずに察してくれた。
汽車の中でクロード殿下の顔がずっと頭に残っていた。
それでもわたしが選んだのは彼ではない。
彼を信用できないのだ。
またわたしを裏切るかもしれない、他に愛する人ができるかもしれない。
そんな思いを持ちながら彼の側にいることはわたしにはできない。
わたしは夏休みが明けて学園に戻ると、今まで以上に勉強に励むことにした。
お兄様があとを継げば、わたしはいずれ邪魔になる。
その時に一人でも生きていけるようになるために勉強を頑張っていれば、何か出来るようになっているかもしれない。
レンス殿下は、たまにわたしに会いに来る。
ユシリス様の具合を教えてくれるために。
以前のように生きる気力もなく廃人のように過ごすことは無くなったらしい。
今はジョシュア様が会いに行くとユシリス様の車椅子を押しながら、二人で外に散歩に行かれることもあるそうだ。
一日でも早くユシリス様が辛い過去を忘れて、「今」を生きて欲しい。
そしてわたしも少しずつ新しい生活に慣れて、クロード殿下のことはあまり思い出さないようになってきた。
そしてわたしが16歳になった時、噂でクロード殿下が婚約したらしいと囁かれるようになった。
今回のわたしは彼の婚約者ではないし、彼も王太子殿下ではない。
継承権はあるが第三位なので、たぶん王になることはないだろう。
南の領地で公爵にいずれはなると思う。
その横にいるのはもちろんわたしではない。
わたしとクロード殿下の関係を知るものはこの世界ではあまりいない。
だから、みんなわたしの前でも普通に話す。
「クロード殿下の婚約者なんて羨ましいわ。王太子妃になって厳しい日々を送るよりも、公爵夫人の方が絶対楽だしいいわよね」
(うん、確かにお妃教育はかなりハードだもの、でも公爵夫人も大変だと思うけど?)
「わたしも一度でいいからクロード殿下に愛されてみたいわ」
(すっごい重いわよ、彼の愛)
「あのクロード殿下に見つめられたらもう死んでもいい」
(死んだけど嬉しくないわ)
「クロード殿下が今王都に来ているって知ってる?」
(え?知らない……うそ……何かあったのかしら?)
「国王陛下に呼ばられているらしいの」
(そうなんだ……)
わたしは机に座って本を読むフリをしてみんなの話をこっそり聞いていた。
わたしは彼がこの王都にいると聞いただけで震えが止まらなかった。
何故?
彼が怖いの?
もうあの領地に行って2年が経っているのに……
わたしは動揺を誰にもバレないように、必死で本を読んでいるフリをしていた。
「エリーゼ、顔色が悪いわ、どうしたの?」
エレンが心配そうに声をかけてきた。
「ほんと?真っ青よ?」
カイラもわたしの顔を覗き込んだ。
「…大丈夫……」
わたしは何でもないかのように笑顔で答えたつもりだった。
「エリーゼの馬鹿……そんな傷ついた顔をして……」
エレンが言ってる意味がわからなかった。
「わたしの顔?」
「クロード殿下に婚約者が出来たと噂され始めてからの貴女は最近ずっと酷い顔をしているのよ、自分では気づいてないのね」
「酷い顔?傷ついた顔?」
わたしは意味がわからなかった。
だってもう思い出すこともないし考えることもなかった。
殿下に婚約者ができたと聞いてもなんとも思っていないの。
「エリーゼ、外に出ましょう、ここに居ては駄目だわ」
カイラがわたしを椅子から立たせて廊下に連れ出してくれた。
「エリーゼ、泣かないで……」
カイラはわたしを抱きしめてくれた。
「泣いてなんかいないわ、どうして?泣く必要があるの?」
わたしは泣いてなんかいない。
だって自分が彼から手を離したの。
だから泣く資格なんてない。
なのにカイラの腕のなかで泣いていた。
エレンはわたしの背中をそっと撫でてくれていた。
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