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22話
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ある日のこと夜寝ている時にコツンと音がした。
「……んん…」
わたしの声にまたコツンと音がした。
「誰?」
寝ぼけながら起き上がると周りをキョロキョロ見回した。
「………あなたは……」
窓際に佇んでいる男の人に見覚えがあった。
「あ、わたしを舐めた気持ち悪い人⁉︎」
「え?そこ?普通眠りから目覚めさせたかっこいい人!じゃない?」
「どうしてここに?わたしを殺しに来たのですか?」
「うーん合っているけど違うかな。お嬢ちゃんさぁ、君を殺すようにと依頼をよく頼まれるけど、一度も君は殺されていないよね?まぁ、普通は一回で死んで終わりなんだけど、君は殺すフリをして失敗するように頼まれたから死んではいないし、別の影が君を守っていたから死なずにすんでいたけど。今回はきっちり殺す依頼を受けているんだ。
でもさあ、もう君に情が湧いてしまって殺すのどうしようか悩んじゃってさ、だから君に声をかけたんだ。
ねぇ君を殺すように依頼した奴を殺す依頼しない?」
「え?」
寝ぼけていて頭が回らない。
わたしが殺される⁉︎
わたしが相手を殺す⁈
頭を横にぶるぶると振った。
「む、無理です。人を殺す依頼なんて出来ません」
でもふと思った。
「あ、あの殺すのは嫌ですけど、その人を捕まえる依頼なら出来ますか?わたしお金はありませんが宝石なら持っています」
そう言うと、ベッドから起き上がり宝石箱を開けた。
イアン様からもらった宝石は何故か渡し難く、幼い頃お気に入りだった宝石を幾つか渡した。
「君さ、俺のこんな言葉だけで信用して宝石渡していいの?」
「え?だって殺し屋さん嘘ついていないですよね?」
「なんで?殺し屋なんて信用出来ないだろう?」
「わたし……動けないで眠り続けていた時意識はあったんです。あなたは酷いことを言うのにとても声が優しかったですよ?」
「あー、だから舐めた人なんだ!」
「ふふ、だって気持ち悪かったもの」
「君を殺す依頼をした人のこと気にならない?」
「なります……わたしは一体何をしたのでしょう?」
「うーん、君と言うよりもイアン殿下かな?」
「わたしはもう離縁したから関係ないと思うのですが?」
「うん、そうだよね。でも周りは君と殿下がくっつくかもしれないと危惧しているんだよ。君の実家の公爵家は今ではこの国で一番力を持つ家になってしまったんだ。もし再婚したらバーグル公爵家はさらに力をつける。それもバーグル公爵家は清廉潔白だ。たくさんの強い騎士を何十人も従えているだろう?他の貴族からしたら脅威でしかないんだ。ほんのちょっとの脱税や誤魔化した報告など出来なくなる。目の上のたんこぶなんだ。だからオリエ嬢には死んでもらいたいみたい」
「そんな……悪いことをしたいからって死んで欲しいと言われても……それにわたしとイアン様が再婚するなんてありえません!」
「まぁみんなさ、自分が大事だからね。君が死んだら喜ぶ人も多いんだよ」
「なんだか複雑です」
「殿下はそんな君を黙って守ってたんだろうね、遣り方はいいと思えないけどね」
「守っていた?どうして?
イアン様はジョセフィーヌ様を愛しているのにわたしと再婚するなんて……。
ジョセフィーヌ様と離縁させられて辛い思いをしているでしょうに」
「君には表面しか見えていないからね、まっ、素直なところが気に入ったんだ。だから君を殺すより犯した方が絶対いいと思ったんだ」
そう言ってにっこり笑ったこの人に、わたしの顔は引き攣るしかなかった。
ーーまだ言ってる!絶対嫌だ!
◇ ◇ ◇
「影からの報告は?」
ブライスは「ありましたよ」と言いながらも自分の仕事の手を止めない。
俺が手を止めて話すのを待っているのに顔を上げようとしない。
「報告!」
「もう少し待ってくださいよ!」
「嫌だ!早く話してくれ!」
ブライスは聞こえないくらいの小さな舌打ちをした。
ったく、俺だからいいけど、普通王太子殿下にするか?
幼馴染で気心が知れているからお互い二人っきりの時は遠慮なく話す。
俺もつい言い方が傲慢になる。
「これ早く仕上げないと明日の予算が下りないんですよ!」
「わかってる!だから俺も頑張っただろう?」
「急遽、明日からヴァンサン侯爵の領地の視察に行くのに予算を無理やり通したのに、感謝して欲しいです!」
「すまない、今回はヴァンサン侯爵がなかなか尻尾を出さないから俺から飛び込むしかないんだ」
「わかってます!影からの報告ではジョセフィーヌ様は監禁されているわけではなく、侯爵の口車に乗せられて彼の屋敷にいるみたいです」
「口車?」
「はい、ジョセフィーヌ様に、このままではお腹の子の父親がイアン様になり、王家に子供を奪われるかもしれない、もしくは男の子が産まれたら争いの種になるので処分されるだろうと言われて、ジョセフィーヌ様はヴァンサン侯爵の屋敷に隠れているそうです」
「………そうか」
「殿下?どうしたのですか?」
「………いや、なんでもない」
ヴァンサン侯爵がジョセフィーヌに言ったことは全くの出鱈目ではない。
だから俺は言葉を濁すしかなかった。
とにかく今はヴァンサン侯爵が一体何をしたいのか探り、侯爵が裏で動いている犯罪を探るつもりだ。
もうオリエに俺のせいで嫌な思いをさせるわけにはいかない。巻き込むことだけは避けなければ!
ーーーー
この時俺はオリエが暗殺されかけていたなんて知る由もなかった。
「……んん…」
わたしの声にまたコツンと音がした。
「誰?」
寝ぼけながら起き上がると周りをキョロキョロ見回した。
「………あなたは……」
窓際に佇んでいる男の人に見覚えがあった。
「あ、わたしを舐めた気持ち悪い人⁉︎」
「え?そこ?普通眠りから目覚めさせたかっこいい人!じゃない?」
「どうしてここに?わたしを殺しに来たのですか?」
「うーん合っているけど違うかな。お嬢ちゃんさぁ、君を殺すようにと依頼をよく頼まれるけど、一度も君は殺されていないよね?まぁ、普通は一回で死んで終わりなんだけど、君は殺すフリをして失敗するように頼まれたから死んではいないし、別の影が君を守っていたから死なずにすんでいたけど。今回はきっちり殺す依頼を受けているんだ。
でもさあ、もう君に情が湧いてしまって殺すのどうしようか悩んじゃってさ、だから君に声をかけたんだ。
ねぇ君を殺すように依頼した奴を殺す依頼しない?」
「え?」
寝ぼけていて頭が回らない。
わたしが殺される⁉︎
わたしが相手を殺す⁈
頭を横にぶるぶると振った。
「む、無理です。人を殺す依頼なんて出来ません」
でもふと思った。
「あ、あの殺すのは嫌ですけど、その人を捕まえる依頼なら出来ますか?わたしお金はありませんが宝石なら持っています」
そう言うと、ベッドから起き上がり宝石箱を開けた。
イアン様からもらった宝石は何故か渡し難く、幼い頃お気に入りだった宝石を幾つか渡した。
「君さ、俺のこんな言葉だけで信用して宝石渡していいの?」
「え?だって殺し屋さん嘘ついていないですよね?」
「なんで?殺し屋なんて信用出来ないだろう?」
「わたし……動けないで眠り続けていた時意識はあったんです。あなたは酷いことを言うのにとても声が優しかったですよ?」
「あー、だから舐めた人なんだ!」
「ふふ、だって気持ち悪かったもの」
「君を殺す依頼をした人のこと気にならない?」
「なります……わたしは一体何をしたのでしょう?」
「うーん、君と言うよりもイアン殿下かな?」
「わたしはもう離縁したから関係ないと思うのですが?」
「うん、そうだよね。でも周りは君と殿下がくっつくかもしれないと危惧しているんだよ。君の実家の公爵家は今ではこの国で一番力を持つ家になってしまったんだ。もし再婚したらバーグル公爵家はさらに力をつける。それもバーグル公爵家は清廉潔白だ。たくさんの強い騎士を何十人も従えているだろう?他の貴族からしたら脅威でしかないんだ。ほんのちょっとの脱税や誤魔化した報告など出来なくなる。目の上のたんこぶなんだ。だからオリエ嬢には死んでもらいたいみたい」
「そんな……悪いことをしたいからって死んで欲しいと言われても……それにわたしとイアン様が再婚するなんてありえません!」
「まぁみんなさ、自分が大事だからね。君が死んだら喜ぶ人も多いんだよ」
「なんだか複雑です」
「殿下はそんな君を黙って守ってたんだろうね、遣り方はいいと思えないけどね」
「守っていた?どうして?
イアン様はジョセフィーヌ様を愛しているのにわたしと再婚するなんて……。
ジョセフィーヌ様と離縁させられて辛い思いをしているでしょうに」
「君には表面しか見えていないからね、まっ、素直なところが気に入ったんだ。だから君を殺すより犯した方が絶対いいと思ったんだ」
そう言ってにっこり笑ったこの人に、わたしの顔は引き攣るしかなかった。
ーーまだ言ってる!絶対嫌だ!
◇ ◇ ◇
「影からの報告は?」
ブライスは「ありましたよ」と言いながらも自分の仕事の手を止めない。
俺が手を止めて話すのを待っているのに顔を上げようとしない。
「報告!」
「もう少し待ってくださいよ!」
「嫌だ!早く話してくれ!」
ブライスは聞こえないくらいの小さな舌打ちをした。
ったく、俺だからいいけど、普通王太子殿下にするか?
幼馴染で気心が知れているからお互い二人っきりの時は遠慮なく話す。
俺もつい言い方が傲慢になる。
「これ早く仕上げないと明日の予算が下りないんですよ!」
「わかってる!だから俺も頑張っただろう?」
「急遽、明日からヴァンサン侯爵の領地の視察に行くのに予算を無理やり通したのに、感謝して欲しいです!」
「すまない、今回はヴァンサン侯爵がなかなか尻尾を出さないから俺から飛び込むしかないんだ」
「わかってます!影からの報告ではジョセフィーヌ様は監禁されているわけではなく、侯爵の口車に乗せられて彼の屋敷にいるみたいです」
「口車?」
「はい、ジョセフィーヌ様に、このままではお腹の子の父親がイアン様になり、王家に子供を奪われるかもしれない、もしくは男の子が産まれたら争いの種になるので処分されるだろうと言われて、ジョセフィーヌ様はヴァンサン侯爵の屋敷に隠れているそうです」
「………そうか」
「殿下?どうしたのですか?」
「………いや、なんでもない」
ヴァンサン侯爵がジョセフィーヌに言ったことは全くの出鱈目ではない。
だから俺は言葉を濁すしかなかった。
とにかく今はヴァンサン侯爵が一体何をしたいのか探り、侯爵が裏で動いている犯罪を探るつもりだ。
もうオリエに俺のせいで嫌な思いをさせるわけにはいかない。巻き込むことだけは避けなければ!
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この時俺はオリエが暗殺されかけていたなんて知る由もなかった。
応援ありがとうございます!
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