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新しい恋。
じゅうよん
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バズールと汽車の中で、ぎこちない会話からいつもと変わらない話し方に戻った。
好きだと気がついたけど……変わらない彼との会話にホッとする自分もいる。
ーー今さら好きだからと態度を変えることなんて出来ない。
照れくさいし、どうしたらいいのかわからないのだもの。
わたしはどうしても気になることを聞いてみた。
「リリアンナ殿下はバズールを好きなんじゃないの?」
「何度も好きだと愛していると言われた。だけどそれは俺を好きなんではなくて俺の外見や地位だけだった。俺はリリアンナ殿下の平民に対しても真摯に動ける人だと知って尊敬していたしこの人のためなら側近として尽くしたいと思っていた。でもそれも全て王族としてのパフォーマンスで本気で寄り添おうとしていたわけではないとわかった。
まだまだ人を見る目がないよな……」
「リリアンナ殿下は努力されていたのだと思うわ。パフォーマンスだけで市井で人々の話を聞いて動くなんてなかなか出来ないわ。どんな話を殿下がしたのか…なんとなく想像出来るけど……その言葉は全て本心ではないと思うの……突然『貴女が悪いことをした』と言われ罪を問われて、思ってもみないことまで口から出てしまったのだと思うの」
「ライナは自分がされたのにそんな風に思うんだ」
「殿下はバズールが好きだったんだと思う。ただ好きだと言う言葉を相手に伝えるのに間違えたのだと思うの」
ーー殿下はわたしを嫌っていた。
バズールと仲が良い従姉妹のわたしが目障りだったのだろう。
リリアンナ殿下のわたしを見る視線は冷たく蔑んでいた。あれはバズールが好きだったから……
「じゃあ殿下からの求婚を受けた方がよかった?」
「それは………わからないわ……わたしが決めることではないもの………」
ーー本当はバズールが求婚を断ってホッとしている。でも本心は言えない。わたしにはそれを言う権利はないもの。
「ライナ……俺は…」
「きゃっ」
突然汽車が大きく揺れた。
「俺の手に捕まって!」
大きな揺れで体のバランスを崩しそうになる。
バズールは近くの扉の取っ手に捕まっていた。そしてわたしの手を握りなんとかバランスを保とうとしていた。
ガッシャーン‼︎
「きゃっ、い、いたっ」
「ライナ!」
汽車は大きく揺れ窓側が地面へと倒れていった。
そして…………揺れと衝撃でバズールの手を離したわたしは大きな音と共に倒れた個室の窓に体を打ちつけた。
ーー痛い……
突き刺さったガラスの破片……震える手をそっと…生温かいモノが流れるお腹あたりに触れてみた。そこからは……真っ赤な血が……じわっとお腹から流れてきていた。
「…………ライ…ナ」
バズールのわたしを呼ぶ声がだんだん小さくなって視界がぼやけていく…………
やっと好きだと気がついたのに……バズールに好きだと言えずにわたしはこのまま死ぬのかしら?
「バ…ズー……貴方…が好……き……」
薄れゆく意識の中でわたしは最後かもしれないこの言葉を口にした。だけどほとんど声にならないわたしの声は彼に届くことはない。
◆ ◆ ◆
本日中にもう1話更新します
好きだと気がついたけど……変わらない彼との会話にホッとする自分もいる。
ーー今さら好きだからと態度を変えることなんて出来ない。
照れくさいし、どうしたらいいのかわからないのだもの。
わたしはどうしても気になることを聞いてみた。
「リリアンナ殿下はバズールを好きなんじゃないの?」
「何度も好きだと愛していると言われた。だけどそれは俺を好きなんではなくて俺の外見や地位だけだった。俺はリリアンナ殿下の平民に対しても真摯に動ける人だと知って尊敬していたしこの人のためなら側近として尽くしたいと思っていた。でもそれも全て王族としてのパフォーマンスで本気で寄り添おうとしていたわけではないとわかった。
まだまだ人を見る目がないよな……」
「リリアンナ殿下は努力されていたのだと思うわ。パフォーマンスだけで市井で人々の話を聞いて動くなんてなかなか出来ないわ。どんな話を殿下がしたのか…なんとなく想像出来るけど……その言葉は全て本心ではないと思うの……突然『貴女が悪いことをした』と言われ罪を問われて、思ってもみないことまで口から出てしまったのだと思うの」
「ライナは自分がされたのにそんな風に思うんだ」
「殿下はバズールが好きだったんだと思う。ただ好きだと言う言葉を相手に伝えるのに間違えたのだと思うの」
ーー殿下はわたしを嫌っていた。
バズールと仲が良い従姉妹のわたしが目障りだったのだろう。
リリアンナ殿下のわたしを見る視線は冷たく蔑んでいた。あれはバズールが好きだったから……
「じゃあ殿下からの求婚を受けた方がよかった?」
「それは………わからないわ……わたしが決めることではないもの………」
ーー本当はバズールが求婚を断ってホッとしている。でも本心は言えない。わたしにはそれを言う権利はないもの。
「ライナ……俺は…」
「きゃっ」
突然汽車が大きく揺れた。
「俺の手に捕まって!」
大きな揺れで体のバランスを崩しそうになる。
バズールは近くの扉の取っ手に捕まっていた。そしてわたしの手を握りなんとかバランスを保とうとしていた。
ガッシャーン‼︎
「きゃっ、い、いたっ」
「ライナ!」
汽車は大きく揺れ窓側が地面へと倒れていった。
そして…………揺れと衝撃でバズールの手を離したわたしは大きな音と共に倒れた個室の窓に体を打ちつけた。
ーー痛い……
突き刺さったガラスの破片……震える手をそっと…生温かいモノが流れるお腹あたりに触れてみた。そこからは……真っ赤な血が……じわっとお腹から流れてきていた。
「…………ライ…ナ」
バズールのわたしを呼ぶ声がだんだん小さくなって視界がぼやけていく…………
やっと好きだと気がついたのに……バズールに好きだと言えずにわたしはこのまま死ぬのかしら?
「バ…ズー……貴方…が好……き……」
薄れゆく意識の中でわたしは最後かもしれないこの言葉を口にした。だけどほとんど声にならないわたしの声は彼に届くことはない。
◆ ◆ ◆
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