室長サマの憂鬱なる日常と怠惰な日々

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序章 英国フォルティア学院

私の周に手を出さないでください

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口を綻ばせていると、影がさしたことに気づいた。


「ふへぇ… 珍しい。鬼の副会長様が笑ってる」

素直にそう思ったのだろう。射した影はそう驚いた声をあげた。

「…誰が鬼ですか。僕だって笑うことくらいありますが? ウィル・ストン先生」

そう影に振り返ると、そこには白衣を着た凛々しい顔つきのオッサンがいた←


「っていうか、保健医がなにサボってるんですか」

スズメを肩に乗せ、腕を組むクリフェイドは呆れた溜め息。

「あ?仕事に根詰めてもしかたねぇだろ」


煙草をスパスパと吸う目の前の男は本当に自分が保健医という自覚があるのかないのか、疑問である‥。

「ま、程々にして下さいよ」

「おー… 。んで、そのスズメどうしたんだ?」

「あぁ、先ほど拾ったんですよ。猫に襲われて、親に置いてかれたみたいで‥」


「へぇ… そりゃまぁ、気の毒に。見捨てられたか」

「……まぁ、そうなりますかね」

溜め息つくクリフェイドにウィルは目を細める

「んじゃぁ、心優しい保健医から一つ、忠告。

あまり抱え込むなよ」

………は?


「や、意味がわかりませんよ」

「あまり無茶するなって言ってんだよ。確かに、お前はよくやってると思う。少し前までは、ぐだぐだで全くと言っていいほど機能してなかった生徒会。強姦やレイプが日常茶飯事にあった学園を改革。

……確かに改革は凄いが、それでお前はいつ休んでいる?見た感じ、最近睡眠があまり取れてないだろ? 肌が少し荒れている…」


「ご心配に及びませんよ。最近はいろいろと立て込んでいてバタバタしていましたが、

ようやく、それも片付いたので‥」

そう、シフォンのストーカーの件も解決した。後は… あいつらが余計なことをしなければ…

「後は、何もなければいいんですけどね」

そうだ…。ノクスも言っていた。あいつらも馬鹿じゃないって、そう言っていた。

「それじゃあ、僕は失礼しますね…」

僕は扉を開けると昼食を取りに食堂へと向かった。


ピチュッ!

(兄ちゃん!)

「ん?」

チュンッ!


(ケーイっ 好き!)

「そうか、ありがとう。しかし、呼ぶときにスズメじゃ不便だな…

名前はあるのか?」


ピチュッ… チュッ!


(イ? イ… イオ?イオって呼ばれてた気がする‥)

「自分の名前なのに、ヒドく不安げだな… クスッ、それじゃイオ、お腹空いただろ?」


ピチュッ!

(グ~っ!!)

「はいはい」

それは和やかな一時…
そう、本当に一時だった。食堂へ入ったのが悪かった。

ーーーーーーーー…

ーーそこには、


「私の周に手を出さないでください」

「ダメだぞ!英理!友達なんだから仲良くしなきゃ」

にぱっ!

「…へぇ、面白れぇ。お前、気に入った。俺はリチャード・ルーカス!俺のことはリチャードって呼べよ」


「おうっ!よろしくな!リチャード!!」

まさに王道的展開を迎えていた。


しかも、見事に風紀も彼の虜になったのか、数人いるではないか!

食堂に来て早々帰りたくなったクリフェイドは関わる前に元来た道を戻ろうと踵を反すが‥

「あ、副会長」


クリフェイドの後ろ姿に気付いた英理が呼び止めてしまった。

「…………」


どうしようか。聞こえなかったことにしてこの まま帰ろうか…

本気でそう思った。
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