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第一章

第十三話 ☆思いを叶えて

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 ここに彼が来た時の再現のようだ。
 スティアは不敵な笑みを浮かべて、俺の腕を前に出させて、まるで犯罪者に手錠をかける時のようなポーズをとらせる。
 そしてガムテープで手首の周りをぐるりと巻いていく。
 しかし一巻きくらいにしかしてないから、本気でちぎろうとすればできるレベルなのだけれど。そこに彼の優しさを感じてしまう。
 それでも彼が俺に『動くな』と一言命令するだけで、俺は動かないでいるのだけれど。

「足は武士の情けで縛らないであげますが、暴れないでくださいね」

 スティアの指先がベッドの上に投げ出された俺の足に触れる。たったそれだけで、俺の足は動かす意思をなくした。

「さぁ、どうしましょうかね」

 ここに来てからずっと、戸惑いの連続のようだったスティアは、可愛らしい表情ばかりを見せていた。
 しかし、こうして主導権を握るようになると、蠱惑的で妖艶な表情すら見せて。
 裏側の寂しがり屋なところと、強がりなところのギャップも好きだった自分は、そんな彼を凝視してしまう。

 ガムテープをことん、とパソコンデスクの上に置くと、スティアはベッドにのりあがってきて。そして、どこか嬉しそうな表情で俺にまたがり、ゆっくりと俺のズボンを下ろしてきた。

「ぁ!?」
「しぃ、静かに」

 ズボンと下着をまとめてずらされると、ぼろん、と見せてはいけないものが彼の目の前に出させられる。彼は面白そうに少し意地悪な表情でそれをツンツンと突いた。

 ……恥ずかしくて死にたい。


 両手で包むようにして、スティアがその赤黒い物体に顔を寄せていく。そのまま匂いを嗅ぐように鼻を寄せて、滑らかな手でなでなでされれば、驚きに息で喉が鳴った。

「な、ななな……」
「へえ、これが貴方の、なんですね」

 そのまま、桃色の唇から出てきた紅い舌が俺の屹立に落ちたのを視覚でも触覚でも感じる。

「だ、駄目だよ、そんなことしちゃ」
「なぜ駄目なんですか? 貴方もボクにしたでしょう?」

 その通りなのだけれど。でも、俺はしてあげても、君にしてもらうのには抵抗あると言ったらいけないだろうか。奉仕するのとされるのは大違いというか。最初はぎこちない手つきで、おそるおそる優しすぎる触れ方だったのに、動きが大胆になってきて。
 表面を舐めるだけだったのが、覚悟を決めたのか、てっぺんの太い部分をぱくり、とその唇が咥える。舌先が見えないところで動かされて、先端の割れ目をほじるようにぺろぺろされているのがわかった。
 声をあげるのが恥ずかしくて、必死にあえぎたくなるのをこらえていれば、そんな俺を煽るように、両手も上下に竿を動かしていくスティア。
 俺の反応を確認して、そしてブラッシュアップしているのか、どんどんと動きは滑らかに上手になっていっている。

「ルンバ、おいで」

 ぷは、と唇を離したスティアが濡れた唇を舌で舐め、何かを呼び、ビィ、といつものように不思議な旋律を歌う。
 そうすれば、隣の部屋から、まるで踊るように全自動掃除機がやってきた。どうしたの?とでもいうように、くるくるとベッドの周りを動いている。

「こっちにおいで」

 スティアの命令に、そんなことできないだろうと思っていたが、今まで上ることができなかったのに、スティアの能力で移動力がアップしていたようで、ベッドの上までも当たり前のように這い上ってくる。

「蒼一郎を、君も気持ちよくさせてあげてね。ここ、いじってあげて」

 ルンバはスティアに命じられると、嬉しそうに自分の方へとのり上げてくる。スティアが俺のシャツのボタンを外して指さした箇所。そこを目指して。
 ゴミを掻き込むための細いブラシを出して、俺の乳首をまるでくすぐるように、いじり出す。

「な、……ぅ、あっ、ちょ、くすぐった……っ」

 まさか、ルンバにこんな機能がつく日がくるとは思わなかった。気持ちいいというよりくすぐったくて、でも、同時にスティアが同時に屹立をいじると、くすぐったさが快感に変化していくのに驚いた。

「もういいですよ、ありがとう」

 ルンバを優しく撫でてスティアが労えば、ルンバが嬉しそうにぶぉん、と鳴いた。
 そのまま俺の目の前で服を1枚1枚脱いでいくスティア。そのストリップに目が離せない。
 白い肌をそのまま惜しげもなく晒して、彼は俺の胸にその胸を添わせるように、ぴたりと着けた。

「えっと……ここで、こうするんでしたっけ……」

 流れ的に俺が犯されるのかな、なんて思ったのだけれど、彼は尖り切って、先端から涙を流している俺の屹立を持つと、それを蕾に擦りつけている。
 どこで男同士のやり方なんて覚えたの、と思ったけれど、そういえば、フォルダの中にあったAVには、女の子が男の上にのりあげて、犯すやつだった。
 あれを再現しようとしていたのか、と気づけば無意識のうちに腰を跳ね上げて、彼の固く閉じられている菊部を押し上げてしまった。

「や、いたっ……っ蒼一郎、動かないでって言ってるでしょうっ」
「それじゃ無理だよ。指で中をほぐさないと」
「え、こ、こうですか?」

 自分の視点からは、スティアの下の入り口なんて見えない。
 しかし、前と後ろから片方ずつ手を回し、その入り口に指を触れようとしている図は、まるで自慰をしているようで、噴射してしまいそうだ。

「スティア、頼むから、動いていいって言って。俺にさせて。生殺しもいいところだ」

 ああ、きっと今の自分はとてもみっともない顔をしていると思う。
 目が血走って、ギラギラして鼻息も荒くしてスティアを欲しがって。
 俺の様子に怯えたのだろうか、彼は息を飲むように喉を動かして、そして視線を横にずらして頷いた。

「……わかりましたよ」

 そういうと、スティアは手首のガムテープに小さい切り目を作り、両手を引き離すようにねじる。そうすれば簡単に拘束は解けてしまった。
 肌に張り付いたガムテープを爪で掻き起こして剥がす。
 腕は少し痺れてしまったが、きつく巻かれたわけでも、長い間巻いていたわけでもないので、すぐに快復して、改めて彼に手を伸ばした。

「これだと俺へのお仕置きじゃなくて、ご褒美、だよな? 俺が君を抱いていいの?」
「……貴方がそうしたいみたいだったから」


 どうやら、自分の彼に対する欲が強すぎて、それを察してしまったから彼が俺を抱くという発想にいたらなかったようだ。

 彼を抱き寄せて、素股のように尖りきった肉杭の先端を、彼の尻の割れ目にこすこすと擦りつける。
 にちゃ、ぬちゃ、と、俺から沁みだ出した先走りの露が彼の蕾を濡らして、まるでスティアが欲しがっているようで。
 その生々しい音が恥ずかしいのか、耳まで真っ赤にして体を凍りつかせて、スティアは俺にしがみついている。

 スティアに自分の方を見るようにさせると、その唇に唇を落とす。何度となく唇を重ねて、それに慣れた頃、ゆっくりと唇を開かせれば、舌先を彼の舌先に触れ合うところからの練習で。
 舌同士を絡め、その味を覚えた後は、彼の口腔にも舌先を進入させて、上顎を舐める。そこをくすぐるようにすれば、感じたのか、スティアの体が震えて、おとがいから飲み下しきれなかった唾液が一筋零れていく。

「体、楽にしてて。指、入れるから」

 唇を離し、スティアの唇に、今度は自分の指を這わせる。唇を割れば、当たり前のように心得たようにスティアがそれを舐める。まるで赤んぼうがおしゃぶりをするのに夢中になっているように。
 十二分に濡れたからいいか、とそれを離させれば、どこか物足りなさそうな顔をされるのが可愛らしくもいやらしい。

「下のお口に食べさせてあげるから、我慢して?」

 そう下品な言い方をしたら、意味がわかっていないようで首を傾げられてしまった。
 ベッドヘッドに背中を預けて座ったまま、スティアを軽く膝立ちにさせて、座った格好で抱き合うようにして手探りで彼の中に指を入れていく。
 スティアの唇で濡らした指と、先走りの露を頼りに。
 襞をゆっくり伸ばして、彼が痛みを感じないように、と丁寧に指を進めていけば、至近距離のスティアの喉が、くぐもった音を立てる。

「スティア、大きく息をして」

 自分のその指示に従うスティアが可愛らしい。
 少しは気が紛れるように、とその額に、その頬に、とキスの雨を降らしていれば、思い余ったのか、彼から唇を奪われて――。

 夢中になってその舌を吸っていれば、キスに夢中になって体の力が緩まったスティアの中に難なく指を埋め込むことに成功していた。
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