225 / 229
extra track 飼い主が不機嫌なので手を尽くす文鳥(俺)
11:00②
しおりを挟む
晴也は振り返って、声の主を見た。眼鏡の奥の目が、犬に負けず劣らず嬉しげである。晴也はケージに目をやりながら、晶に言った。
「あの子ショウさんみたいだ」
「え? 黒ラブ? 可愛いなぁ、俺がこんな風だと思ってくれてるの?」
店員が少し不思議そうに、晴也と晶を見比べる。晴也は店員に向かって、ぎこちなく苦笑して見せた。
「マンションでラブは難しいと思うけど、小型犬なら飼える部屋もあるぞ‥‥‥そういうとこを探そう」
「‥‥‥待てよ、何で一緒に暮らす話にすり替えてるんだよ」
「一緒に暮らすにあたって俺が犬は大丈夫だと思うから、見てるんじゃないのか?」
晶が何の配慮も無く言い放つので、晴也は困惑した。店内は空いていて、ふたりの話を聞いているのは傍に立つ店員だけだと思われたが、彼の不思議そうな表情が、晴也のいたたまれなさを倍増する。
「お引っ越しのご予定があるなら、お住まいになるところが決まった時のために、入荷した子の最新情報をメルマガでお送りしますよ」
店員ににこやかに言われて、晴也はえっ、と固まってしまう。
「あっ、でも、都内に住んでるんで、横浜には来ないと思うんですけど‥‥‥」
「この店に来た子を都内の店舗でお渡しすることもできます、直接来ていただけるといろいろおまけもご用意できますから、我々としてはこちらにお越しいただきたいですけれど」
何で犬を飼う話になってるんだ? 晴也は混乱してきたが、店のアプリをダウンロードするためのQRコードを渡されてしまった。晶は実家のラブラドールのためにと言って、知らない間におやつを数袋選んでいた。
ありがとうございました、と店員に送り出されて店を出た途端、晶は見るからに不機嫌な顔になった。晴也は最初気のせいだと思ったが、その後レストランが集まるゾーンに行くと、晶はおかしなわがままを言い出した。
「オムライスが食べたい」
「えっ、おまえ来るとき焼肉がいいって言ってなかった?」
「気が変わった」
焼肉の気分になっていたのにと、晴也はちらっと思う。時計を見ると12時半で、ランチのピークタイムである。どの店も混み始めている様子だった。
「オムライスの店きっと混んでるよ、焼肉のほうが早そう」
「嫌だ、オムライスがいい」
「‥‥‥まあ行ってみるか」
予想通り、オムライス専門店の前には10人くらいの人が待機椅子に座っていた。晴也はうんざりしたが、晶は待機リストに名前を書いて椅子に腰を下ろした。
「あの子ショウさんみたいだ」
「え? 黒ラブ? 可愛いなぁ、俺がこんな風だと思ってくれてるの?」
店員が少し不思議そうに、晴也と晶を見比べる。晴也は店員に向かって、ぎこちなく苦笑して見せた。
「マンションでラブは難しいと思うけど、小型犬なら飼える部屋もあるぞ‥‥‥そういうとこを探そう」
「‥‥‥待てよ、何で一緒に暮らす話にすり替えてるんだよ」
「一緒に暮らすにあたって俺が犬は大丈夫だと思うから、見てるんじゃないのか?」
晶が何の配慮も無く言い放つので、晴也は困惑した。店内は空いていて、ふたりの話を聞いているのは傍に立つ店員だけだと思われたが、彼の不思議そうな表情が、晴也のいたたまれなさを倍増する。
「お引っ越しのご予定があるなら、お住まいになるところが決まった時のために、入荷した子の最新情報をメルマガでお送りしますよ」
店員ににこやかに言われて、晴也はえっ、と固まってしまう。
「あっ、でも、都内に住んでるんで、横浜には来ないと思うんですけど‥‥‥」
「この店に来た子を都内の店舗でお渡しすることもできます、直接来ていただけるといろいろおまけもご用意できますから、我々としてはこちらにお越しいただきたいですけれど」
何で犬を飼う話になってるんだ? 晴也は混乱してきたが、店のアプリをダウンロードするためのQRコードを渡されてしまった。晶は実家のラブラドールのためにと言って、知らない間におやつを数袋選んでいた。
ありがとうございました、と店員に送り出されて店を出た途端、晶は見るからに不機嫌な顔になった。晴也は最初気のせいだと思ったが、その後レストランが集まるゾーンに行くと、晶はおかしなわがままを言い出した。
「オムライスが食べたい」
「えっ、おまえ来るとき焼肉がいいって言ってなかった?」
「気が変わった」
焼肉の気分になっていたのにと、晴也はちらっと思う。時計を見ると12時半で、ランチのピークタイムである。どの店も混み始めている様子だった。
「オムライスの店きっと混んでるよ、焼肉のほうが早そう」
「嫌だ、オムライスがいい」
「‥‥‥まあ行ってみるか」
予想通り、オムライス専門店の前には10人くらいの人が待機椅子に座っていた。晴也はうんざりしたが、晶は待機リストに名前を書いて椅子に腰を下ろした。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
隣のチャラ男くん
木原あざみ
BL
チャラ男おかん×無気力駄目人間。
お隣さん同士の大学生が、お世話されたり嫉妬したり、ごはん食べたりしながら、ゆっくりと進んでいく恋の話です。
第9回BL小説大賞 奨励賞ありがとうございました。
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる