【完結】王子から愛でられる平民の少女に転生しました〜ざまあされそうで超ピンチです！〜

蘇る記憶

「保険医を呼べ！」

ヘンリーの叫び声からすぐに保険医の助手がやってきた。

そして、担架で抱えられながらマロンは講堂を後にした。

マロンは混乱していた。

さっき倒れた衝撃で前世の記憶がはっきりと蘇ったのだ。

「僕、この後絶対ざまあされるじゃん…」

クラクラする頭を押さえながら、一旦脳内で状況を整理することにした。

……

転生前、僕（＝マロン）は日本のごくフツーな高校生だった。

この状況には既視感がある。

幼なじみにおすすめされた転生モノの悪役令嬢が出てくる小説にとてもよく似ているのだ。

「おもしろいから読んでみて♪返すのはいつでもいいから！」と、半ば無理矢理渡されたその小説は、
馬鹿な王子は健気な婚約者を裏切って愛嬌だけが取り柄の平凡な女と婚約するとほざいている…ような内容だった。

しかも、王子からの一方的な婚約破棄にもかかわらず、申し訳ないという気持ちはみじんもない。それどころか、抵抗する婚約者に「悪役令嬢」という汚名も着せてしまう。


「どう？昨日貸した小説読んでみた？」
俺の感想をわくわくしながら待っている幼なじみに、「胸くそ悪くてこれ以上読みたくないんだけど」と素直に答えたら

「ここから先が面白くなるのにもったいない！これから王子も略奪女もざまあされて胸がスーッとするんだから！」

と興奮した様子で声を張り上げられた。


今の状況は登場人物は違うが、一連の婚約破棄の流れはあの小説の世界観にそっくりで、寒気がしてきた。