異世界転生録~死と隣り合わせのこの世界で死なないため、力を付けます!!~

島津穂高

文字の大きさ
150 / 188

第150話 堕天

しおりを挟む
「これは先程神サリエルの仕事部屋から持って来た書類です。…そしてこれらは私たちが処理する予定だった書類です。」



「なっ…!!」



イシスが発言した瞬間、裁判所全体にざわめきが広がった。

…仕事の横取りをした濡れ衣を着せられたのだろうか?



「静粛に!!!」



「質問よろしいでしょうか?」



「許す。」



「神イシス、貴方の仕事は確か下界の魔法についてでしたか?」



「はい。」



「つまり輪廻を司る神サリエルが、担当外である魔法の書類を処理したということでしょうか?」



「その通りです。」



また裁判所全体にざわめきが広がった。

いくら禁忌だとしても、この慌て方は異常だ。

…何か裏があるに違いない。



「…魔法は至高なるもの。魔法神しか取り扱ってはいけないのですが…神サリエル、何か弁解はありますか?」



「我はそのような書類を見ていない!!濡れ衣だ!!!」



「嘘をつくな!!私はお前の部屋からこれを持って来たのだ!!」



「静粛に!!…鑑定人、神イシスの書類にある筆跡を”鑑定”してみたまえ。」



「御意に。」



天界にも鑑定のスキルがあったとは。

鑑定人なる人物がイシスが渡した書類を”鑑定”した。



「…間違いなく神サリエルのものです。」



「なんと…!!」



「これは永久追放か…?」



事態が嫌な方へと向かっていく。

俺にはどうしようもできないのがじれったい。



『…本当にサリエルが書いたものなのか?一点に”鑑定”スキルを集中して…”看破”!』



すると、筆跡が全く別のものへと変化した。

”看破”で変わったということは、おそらくあの書類には”偽装”スキルまたはそれに類するスキルが行使されていたのだろう。



『…聞いた通りやっぱり冤罪か。それにしても鑑定人の”鑑定”を欺くほどの”偽装”とは…』



鑑定人の鑑定能力が低いのか、はたまた”偽装”スキルの能力が高いのか。

…または鑑定人もグルか。



周りを”鑑定”する限り、どうやら”偽装”スキルが”鑑定”スキルを上回っていたようだ。

そしてその”偽装”スキルを行使したのはもちろんイシスだった。



『サリエルを陥れてイシスは現代で崇拝されてるのか…それは胸糞悪いな。』



亜人差別を無くしたい俺にとってもイシスの討伐は利害が一致している。

…それに神話生物を倒しているうちに獲得した”神殺し”のスキルを試してみたい。



神を殺した時、果たしてどうなるのだろうか。

莫大な経験値がもらえるのか、はたまた種族進化を起こすのか…

気になって仕方ない。



「静粛に!!神サリエル、何か言い残すことは?」



「本当に我はやっていない!!」



「小賢しい!!鑑定人の結果が間違っているというのか…?」



「それは…」



「サリエルはそんなことやらないわ!!私が横で見てたもの!!」



「…では神マリアも禁忌を見逃したということで同罪になりますが?」



「そんな…」



サリエルの脳内で疑問、焦り、怒り、不安など色々な感情が交錯している。

そして最後には”マリアを守りたい”という感情が全てを覆いつくした。



「…我が独断で…神マリアに隠れてやった。」



「サリエル!!!だめよ!!!」



「では神サリエル。お前を天界から永久追放する。」



「マリア…どうか我の分まで出世して幸せに生きてくれ。」



「サリエル!!!…エル!!!」



ゼウスが木槌を打つと、サリエルの羽が消えて落下していった。

マリアの声が届かなくなり、そしてサリエルは涙を流しながら地上に落ちていった。



『そんなことがあったのか…』



記憶を見られる時間が無くなり、俺の意識がだんだん遠のいていった。



「…よ…めよ…目覚めよ。」



死神の声で目を覚ました。

辺りを見回す限り、時間はそれほど経っていないようだ。



「死神…サリエルと呼んだ方がいいのか?」



「いや、その名は堕天と同時に失ったのだ。…死神で構わん。」



「そうか…」



死神にはどこか哀愁が漂っている。

やはり天界に未練があるのだろうか…?



「それで、汝はイシスへの復讐に力を貸してくれるか?」



「ああ!…ただし条件付きだ。」



「何でも言ってみろ。」



「俺が治めるヴァルハラ帝国と協力関係を築くか、俺の配下になってくれ。」



「…前者なら良かろう。ただし、汝がもし我よりも強くなったのならその時は配下に加わろう。」



「…っ!!本当か!?」



「うむ。」



死神が配下に加わったら、死者の魂さえも”召喚魔法”や”黒魔法”の素材にできるので一気に戦力が増強される。

…まぁ死神より強くなったらもう怖いもの無しなんだがな。



「では汝…ダグラス、これからよろしく頼む。」



「こちらこそよろしく。…そうだ!死神、神マリアは無事出世したぞ。」



「…それは本当か!?」



「ああ!俺は異世界転生者なんだが…彼女に転生させてもらったんだ!!」



「そうか…そうか…!!」



死神の涙は枯れ切ってしまっているはずだ。

それなのに、神マリアの無事を知って涙を流しているように見えた。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~

こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』 公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル! 書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。 旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください! ===あらすじ=== 異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。 しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。 だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに! 神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、 双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。 トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる! ※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい ※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております ※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

処理中です...