異世界転生録~死と隣り合わせのこの世界で死なないため、力を付けます!!~

島津穂高

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第163話 騎士団長

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尋問を終え、今度騎士団本部に案内された。



そこは以前ヴァルハラ帝国に建てた屋敷より大きく、収容人数は200人を超えている。

その上、そんな巨大な建物が3軒並んでいた。



「わぁ…」



「すごいでしょ?ここの騎士団は世界で一番練度が高いって言われてるんだ!!」



「すごいですね…!!」



確かに要塞都市の騎士団は、他国にある醜い出世争いの様子が見られない。

皆が仲良く、自身のことより国のことを考えた行動しているようだ。



「じゃあ団長の部屋に案内するね!」



皆が仲良いと言っても立場の差は無くならないようで、騎士団長の部屋は寮の最上階に位置していた。



「団長、オードル君を連れてきたよ。」



「入って頂戴。」



先程は兜を被っていたため分からなかったが、騎士団長はとんでもない美人だった。

戦士とは思えぬスレンダーな身体に傷一つない綺麗な顔、それに胸が大きい。



「は、初めまして!オードルと言います!」



「初めましてオードル君。私は要塞都市の騎士団長を務めているクリスティーナよ。ティーナって呼んで頂戴!」



「は、はい!」



もっと厳格な態度で接しられると思っていたが、案外優しかった。

“騎士団長クリスティーナ“ではなく“ただのクリスティーナ“として話しているのだろうか?



「それでね、オードル君を呼んだ理由なんだけど…単刀直入に言うわ。騎士団の魔法師として入団してくれないかしら?」



やはりスカウティングだったか…

入団してしまってはヴァルハラ帝国での活動に支障をきたすので柔らかく断りを入れなければ。



「えっと…ごめんなさい!僕はその…冒険者になって世界中を旅したいんです!」



「そうよね…じゃあもう十分世界を見て回ったと思ったらここに帰ってきて頂戴。いつでも騎士団に歓迎するわ!」



「分かりました!ありがとうございます…!」



諦めの早い人で助かった…



しかし騎士団に知られているということは、この街の領主もあの爆発を知っているはずだ。

騎士団は諦めても領主は…なんて展開になり得る。



「その…私も嫌なんだけど、この後領主様に会ってもらえないかな?」



ティーナも嫌がっているということは、もしかしてこの街の領主はいい人ではないということだろうか…?

だがここで断って領主の顔に泥を塗るわけにはいかない。



「わ、わかりました!」



領主館は騎士団寮とは逆の、正大陸側に位置していた。

ティーナの案内の元、領主がいる部屋の前まで来たのだが、この屋敷を見た時から鳥肌が止まらない。



『悪趣味すぎだろ…』



広大な庭園には領主本人の銅像と思われるものが何個も並んでおり、そして屋敷内に飾られている絵画も全て領主本人がモチーフにされたものだった。

ティーナも血の気が引き、青白くなっていた。



「…クリスティーナです。例の大規模爆発を起こした者を連れてきました。」



「入っていいだよ愛しのティーナぁ!」



「し、失礼します…」



猛々しい銅像の様子と異なり、ぶくぶくと太った身体にたくさんの金やミスリル製の装飾品…いかにも権力を利用して女性を辱める悪役貴族のような見た目だ。



「ん~?このガキがあの爆発を引き起こしただって~?ぐふふ、ティーナも面白い冗談を言うのだよ!!」



「いえ、私も驚きましたが本当でした…」



「オードルといいます。あの爆発はその…」



「ガキが喋るんじゃないだよ!!朕は今愛しのティーナと話してるだよ!!!!」



「ご、ごめんなさい…」



本当にこの領主は醜い豚のようだ。

…いっそ殺してしまおうか?



「領主様、この子の処分は如何なさるおつもりですか?」



「む…気に食わないから国外追放でいいだよ!!」



「分かりました。」



国より自分の感情を優先するとは…

容姿も性格もステータスも酷く、その上政治の才能が無い…もはやただの豚だ。



「それよりティーナ!!ぐふふ…今夜時間あったりするだよ?」



「すみません。以前から申し上げている通り、騎士団は恋愛禁止なので…」



「むむむ…わかっただよ!!」



ティーナの血の気が引いた青白い顔は、この豚に言い寄られているせいだったようだ。

…ご愁傷様としか言いようがない。



「…ではこれにて失礼します。」



ティーナは領主の部屋を出るや否や、非常に急いで屋敷を出た。



「はぁ…本当に気持ち悪かったぁ!!!」



「今まで見た生き物の中で一番気持ち悪かったです…」



「ふふふっ!オードル君も同意見なのね!気が合うわ!」



そう言うと、ティーナは俺をぬいぐるみのように抱きかかえた。



「ちょっ…ティーナさん!子供扱いしないで…っ!!」



恥ずかしがっていると、後方上部から嫌な視線を感じた。

振り返ると、あの豚領主が窓辺から爪を噛みながらこちらを見ていた。



『これは…要塞都市出るときにちょっかいかけられそうだな…』
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