148 / 247
八章
32、お膝【2】
しおりを挟む
わたくしは勇気を出して、旦那さまの胸元に手を添えました。
きっと顔は真っ赤に染まっていたことでしょう。
昨夜も自分から旦那さまを求めて、今は求めさせられて。
本当に本当に恥ずかしいんです。
「……焦らさないで」
今にも消え入りそうな声で訴えると、旦那さまはわたくしをぎゅっと抱きしめてくださいました。
そして帯が解かれていきます。
はらりと縁側に落ちていく帯。縛るもののなくなった浴衣は、しどけなくはだけて、わたくしの胸元が露わになります。
胸を隠すわたくしの右腕を、旦那さまが掴みます。
そして胸の頂きにキスをなさいました。
そよ風が触れるほどの軽さで、もどかしいほどのくちづけです。
でも、それも一瞬のこと。
痛みを感じて、初めてわたくしは噛まれたのだと知りました。
「や……ぁ。いた……っ」
歯を立てられる痛みと同時に、もう片方の胸はやわやわと指先で揉まれています。
快感と痛み。どちらに反応していいのか分からなくなります。
「嫌ならやめるけど」
わたくしは小さく首を振って、旦那さまの髪に指をさし入れました。
ご存じのくせに。わたくしが痛いくらいの方が好きだから、そうなさっているくせに。
「翠子さんは、俺にどうされるのが好きだっけ?」
「……言えません」
「言えるよ。ここには俺しかいないんだ。誰もあなたの恥ずかしい言葉を聞いたりしない」
「さぁ、言ってごらん」と促されて、わたくしは痺れる甘さと、鈍い痛みの間をたゆたいながら、とうとう口を開きました。
「翠子は……痛くされるのが……好きです」
「誰に?」
「旦那、さまに」
「どんな風に?」
言葉で攻め立てられて、耳が千切れそうに熱くなります。
「わ……我を忘れるほど、して、ください」
「難しい注文だね」
旦那さまの低く甘い声が、耳元で聞こえます。それだけで体の奥が痺れそうです。
大きなてのひらが、わたくしの下腹部を撫でます。
旦那さまの手は徐々に下にいき、でもあと少しというところで動きを止めてしまいます。
「昨夜は琥太郎兄さんがいたから、加減したが。今はいいよ。存分に乱れなさい」
その言葉と同時に、わたくしの体を強烈な快感が走り抜けました。
「や……っ、ひぁっ。あぁ……っ。だめ……ぇ」
花芯をつままれ、頭の中が白く弾けます。なのに、それだけで終わるはずがありません。胸も、そして秘された場所もゆるゆると愛撫され、噛まれ、つねられ……愉悦とも痛みともつかぬ感覚に支配されます。
「まったく困るね。そんな風に誘われると」
「ちが……あぁ、んっ」
「今日はあなたを抱かないと決めたんだ。我慢できなくなると困るだろう?」
わたくしを追い立てているのは旦那さまですのに。
達しそうになると、手を引いて。わたくしがねだると、また極限の寸前まで追い詰めて。
そうやってわたくしを甘美な檻にとらえて離さないのに。
あまりにも青い空と、浴衣をこれっぽっちも着崩さない旦那さまに翻弄されて、焦らされて。
自分から望んだこととはいえ、わたくしばかりが乱れているのが恥ずかしくて。でも、その羞恥がさらに、快感につながるなんておかしいでしょうか。
庭ではきっとセミも鳴いているでしょうに。
今のわたくしには、旦那さまの声以外は何も聞こえません。
いつまでも終わらない愛撫に、このまま旦那さまの腕の中で、とろけてしまいそうです。
きっと顔は真っ赤に染まっていたことでしょう。
昨夜も自分から旦那さまを求めて、今は求めさせられて。
本当に本当に恥ずかしいんです。
「……焦らさないで」
今にも消え入りそうな声で訴えると、旦那さまはわたくしをぎゅっと抱きしめてくださいました。
そして帯が解かれていきます。
はらりと縁側に落ちていく帯。縛るもののなくなった浴衣は、しどけなくはだけて、わたくしの胸元が露わになります。
胸を隠すわたくしの右腕を、旦那さまが掴みます。
そして胸の頂きにキスをなさいました。
そよ風が触れるほどの軽さで、もどかしいほどのくちづけです。
でも、それも一瞬のこと。
痛みを感じて、初めてわたくしは噛まれたのだと知りました。
「や……ぁ。いた……っ」
歯を立てられる痛みと同時に、もう片方の胸はやわやわと指先で揉まれています。
快感と痛み。どちらに反応していいのか分からなくなります。
「嫌ならやめるけど」
わたくしは小さく首を振って、旦那さまの髪に指をさし入れました。
ご存じのくせに。わたくしが痛いくらいの方が好きだから、そうなさっているくせに。
「翠子さんは、俺にどうされるのが好きだっけ?」
「……言えません」
「言えるよ。ここには俺しかいないんだ。誰もあなたの恥ずかしい言葉を聞いたりしない」
「さぁ、言ってごらん」と促されて、わたくしは痺れる甘さと、鈍い痛みの間をたゆたいながら、とうとう口を開きました。
「翠子は……痛くされるのが……好きです」
「誰に?」
「旦那、さまに」
「どんな風に?」
言葉で攻め立てられて、耳が千切れそうに熱くなります。
「わ……我を忘れるほど、して、ください」
「難しい注文だね」
旦那さまの低く甘い声が、耳元で聞こえます。それだけで体の奥が痺れそうです。
大きなてのひらが、わたくしの下腹部を撫でます。
旦那さまの手は徐々に下にいき、でもあと少しというところで動きを止めてしまいます。
「昨夜は琥太郎兄さんがいたから、加減したが。今はいいよ。存分に乱れなさい」
その言葉と同時に、わたくしの体を強烈な快感が走り抜けました。
「や……っ、ひぁっ。あぁ……っ。だめ……ぇ」
花芯をつままれ、頭の中が白く弾けます。なのに、それだけで終わるはずがありません。胸も、そして秘された場所もゆるゆると愛撫され、噛まれ、つねられ……愉悦とも痛みともつかぬ感覚に支配されます。
「まったく困るね。そんな風に誘われると」
「ちが……あぁ、んっ」
「今日はあなたを抱かないと決めたんだ。我慢できなくなると困るだろう?」
わたくしを追い立てているのは旦那さまですのに。
達しそうになると、手を引いて。わたくしがねだると、また極限の寸前まで追い詰めて。
そうやってわたくしを甘美な檻にとらえて離さないのに。
あまりにも青い空と、浴衣をこれっぽっちも着崩さない旦那さまに翻弄されて、焦らされて。
自分から望んだこととはいえ、わたくしばかりが乱れているのが恥ずかしくて。でも、その羞恥がさらに、快感につながるなんておかしいでしょうか。
庭ではきっとセミも鳴いているでしょうに。
今のわたくしには、旦那さまの声以外は何も聞こえません。
いつまでも終わらない愛撫に、このまま旦那さまの腕の中で、とろけてしまいそうです。
0
あなたにおすすめの小説
ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない
絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。
虚弱なヤクザの駆け込み寺
菅井群青
恋愛
突然ドアが開いたとおもったらヤクザが抱えられてやってきた。
「今すぐ立てるようにしろ、さもなければ──」
「脅してる場合ですか?」
ギックリ腰ばかりを繰り返すヤクザの組長と、治療の相性が良かったために気に入られ、ヤクザ御用達の鍼灸院と化してしまった院に軟禁されてしまった女の話。
※なろう、カクヨムでも投稿
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
お隣さんはヤのつくご職業
古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。
残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。
元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。
……え、ちゃんとしたもん食え?
ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!!
ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ
建築基準法と物理法則なんて知りません
登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。
2020/5/26 完結
可愛すぎてつらい
羽鳥むぅ
恋愛
無表情で無口な「氷伯爵」と呼ばれているフレッドに嫁いできたチェルシーは彼との関係を諦めている。
初めは仲良くできるよう努めていたが、素っ気ない態度に諦めたのだ。それからは特に不満も楽しみもない淡々とした日々を過ごす。
初恋も知らないチェルシーはいつか誰かと恋愛したい。それは相手はフレッドでなくても構わない。どうせ彼もチェルシーのことなんてなんとも思っていないのだから。
しかしある日、拾ったメモを見て彼の新しい一面を知りたくなってしまう。
***
なんちゃって西洋風です。実際の西洋の時代背景や生活様式とは異なることがあります。ご容赦ください。
ムーンさんでも同じものを投稿しています。
鬼隊長は元お隣女子には敵わない~猪はひよこを愛でる~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「ひなちゃん。
俺と結婚、しよ?」
兄の結婚式で昔、お隣に住んでいた憧れのお兄ちゃん・猪狩に再会した雛乃。
昔話をしているうちに結婚を迫られ、冗談だと思ったものの。
それから猪狩の猛追撃が!?
相変わらず格好いい猪狩に次第に惹かれていく雛乃。
でも、彼のとある事情で結婚には踏み切れない。
そんな折り、雛乃の勤めている銀行で事件が……。
愛川雛乃 あいかわひなの 26
ごく普通の地方銀行員
某着せ替え人形のような見た目で可愛い
おかげで女性からは恨みを買いがちなのが悩み
真面目で努力家なのに、
なぜかよくない噂を立てられる苦労人
×
岡藤猪狩 おかふじいかり 36
警察官でSIT所属のエリート
泣く子も黙る突入部隊の鬼隊長
でも、雛乃には……?
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる