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雨の海【1月長編】
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お洒落でスタイリッシュな祈祷室で待っていると、いつものスーツ姿なおいちさんが出てきた。祈祷ってもっと正装とか専用の服があると思ってたのに。なんだか意外だ。
隣には海結さんもいる。ほとんど寝ずにお勤めをしたのか。すごいな。
「室生殿、よく眠れましたか?」
「はい。おかげさまで」
「それはよかった」
おいちさんから貰ったガラス玉。あれのおかげで俺は初めておみと一緒に眠ることができた。いつもより目覚めがいいのも事実だ。
ふにゃふにゃ笑っているおみを、またスマホでパシャリと撮ったおいちさんはもう見逃しておこう。色々としてもらったお礼だ。
「このすぐ近くにおいしい海鮮丼を出す店がある。昼はそこでいいか?」
「おさかなー! おみ、おさかなたべたかったの!」
「そうか。それはよかった」
「いーしゃんすごいねー」
「神様だからな」
「おおー」
お前も神様だぞ、一応。
忘れてないと思うけどさ。
「それじゃあ車に乗ってくれ。私が運転する」
「おいちさんが?」
「当たり前だ。交通安全の神だ、運転くらいする」
そうなんだ。でも、確かに安心して乗っていられる気がする。海結さんの運転も安定していたし、やっぱり鍛えられているんだろうな。
すっかり頭の中が海鮮丼でいっぱいになったおみは、おかしなステップ(多分スキップ)をしながら足元をチョロチョロしている。そんな姿を微笑ましく見ながら、またおいちさんはスマホを向けていた。
「海結、留守は任せた」
「分かりました」
「お土産買ってくるけんね」
「よろしく、天海」
海結さんの見送られながら、俺たちはまた例の青い車に乗り込む。チャイルドシートにもすっかり慣れたおみは、しらたきと二人で窓の外を見ている。
山じゃあまり見られない光景だから物珍しいんだろうな。昨日は夜だったからあまりよく見られなかったし。
「うみないねー」
「無いな」
「海はもうちょっと向こうにあるんよ。今度行こうや」
「いきたーい!」
そんなことを話していると、あっという間に車は広い駐車場に到着した。どうやらここが、美味しい海鮮丼を食べられる店のようだが。
それにしては何と言うか、広すぎるような気が。
「ここは道の駅です。宗像の特産品もあります」
「なるほど、だから広いんですね」
「食事処はこちらです。さすがにまだ売り切れてはいないでしょう」
おいちさんの案内で大きな建物に向かう。おみはあまりの広さにずっとキョロキョロしていた。迷子にならないよう手を繋いでいるが、すぐにどこかへ行こうとするので気分は犬の散歩に近い。
ここは随分と開けていて、空が近いな。俺たちの住む山も空が広いけれどここは何だか抜けていくような感覚になる。
これもやはり宗像三女神のおかげなんだろうか。
「おみちゃん、ここは食べたいのを自分で選ぶんよ」
「ほほー」
「海鮮丼はレジで言えば出してくれるけど、小鉢は先に取っとかないかんばい」
「うぃ」
おみが、妙に気合いの入った返事をした。食事に対して常に本気だらな、おみは。
しっかり手を消毒して、いざ食事処へ。隣で大きな腹の虫が騒いでいた。
隣には海結さんもいる。ほとんど寝ずにお勤めをしたのか。すごいな。
「室生殿、よく眠れましたか?」
「はい。おかげさまで」
「それはよかった」
おいちさんから貰ったガラス玉。あれのおかげで俺は初めておみと一緒に眠ることができた。いつもより目覚めがいいのも事実だ。
ふにゃふにゃ笑っているおみを、またスマホでパシャリと撮ったおいちさんはもう見逃しておこう。色々としてもらったお礼だ。
「このすぐ近くにおいしい海鮮丼を出す店がある。昼はそこでいいか?」
「おさかなー! おみ、おさかなたべたかったの!」
「そうか。それはよかった」
「いーしゃんすごいねー」
「神様だからな」
「おおー」
お前も神様だぞ、一応。
忘れてないと思うけどさ。
「それじゃあ車に乗ってくれ。私が運転する」
「おいちさんが?」
「当たり前だ。交通安全の神だ、運転くらいする」
そうなんだ。でも、確かに安心して乗っていられる気がする。海結さんの運転も安定していたし、やっぱり鍛えられているんだろうな。
すっかり頭の中が海鮮丼でいっぱいになったおみは、おかしなステップ(多分スキップ)をしながら足元をチョロチョロしている。そんな姿を微笑ましく見ながら、またおいちさんはスマホを向けていた。
「海結、留守は任せた」
「分かりました」
「お土産買ってくるけんね」
「よろしく、天海」
海結さんの見送られながら、俺たちはまた例の青い車に乗り込む。チャイルドシートにもすっかり慣れたおみは、しらたきと二人で窓の外を見ている。
山じゃあまり見られない光景だから物珍しいんだろうな。昨日は夜だったからあまりよく見られなかったし。
「うみないねー」
「無いな」
「海はもうちょっと向こうにあるんよ。今度行こうや」
「いきたーい!」
そんなことを話していると、あっという間に車は広い駐車場に到着した。どうやらここが、美味しい海鮮丼を食べられる店のようだが。
それにしては何と言うか、広すぎるような気が。
「ここは道の駅です。宗像の特産品もあります」
「なるほど、だから広いんですね」
「食事処はこちらです。さすがにまだ売り切れてはいないでしょう」
おいちさんの案内で大きな建物に向かう。おみはあまりの広さにずっとキョロキョロしていた。迷子にならないよう手を繋いでいるが、すぐにどこかへ行こうとするので気分は犬の散歩に近い。
ここは随分と開けていて、空が近いな。俺たちの住む山も空が広いけれどここは何だか抜けていくような感覚になる。
これもやはり宗像三女神のおかげなんだろうか。
「おみちゃん、ここは食べたいのを自分で選ぶんよ」
「ほほー」
「海鮮丼はレジで言えば出してくれるけど、小鉢は先に取っとかないかんばい」
「うぃ」
おみが、妙に気合いの入った返事をした。食事に対して常に本気だらな、おみは。
しっかり手を消毒して、いざ食事処へ。隣で大きな腹の虫が騒いでいた。
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