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雪消しの雨【3月短編】
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春が近くなり、裏庭の畑も手入れをする季節になってきた。今年はキャベツやほうれん草、それからトマトとシシトウを植えたい。そこまで広くは無い畑だけど、おみが毎日丁寧に世話をしてくれるおかげで新鮮な野菜が採れる。
まずは畑の草抜きをして、明日くらいに耕そう。一気に全部すると疲れてしまう。のんびりやっても許される。
「りょーた、ねっこからぶちってしないと、また生えちゃうよ」
「そっか。難しいな」
「おみにまかせて!」
昔から畑仕事をずっとしてきたからか、おみは俺よりもずっと要領がいい。普段の姿からは想像できないほど素早く効率的に草を抜いていく。
ここではおみに習うことが多いな。
「とまとーにんじんじゃがいもー」
「そんなに植えるのか?」
「うぃ」
「坂口さんに頼んでおかないとな」
「わくわく」
メモに新しく人参とジャガイモを書き加える。うーん、もう少し畑を大きくしようかな。夏が近くなると、キュウリとか紫蘇も育てたいし。
今年の夏が楽しみだ。
「あ! りょーた、ちょっとまってて」
「いいけど。疲れた?」
「ちがうよー」
ぴょん、と何かに気がついたのか、ふわふわの尻尾がぴんと跳ね上がる。そのまま山の方へと走り出した。どうやら何かを見つけたらしい。
あんまり遠くへ行かないように、と声をかけて俺は少し休憩することにした。縁側に座り汗を拭う。朝晩はまだまだ冷えるけれど、日差しに当たると汗ばむくらいだ。
「春だなぁ」
今日の晩ご飯は何にしようかな。久しぶりにオムライスを食べたい。卵がたくさんあったし、鶏肉の代わりにツナ缶でも悪くない。たくさんのケチャップでご飯を炒めて、とろとろの卵を乗せたらきっと美味しい。
あとは簡単な野菜スープを作れば完璧だ。
「所帯染みている……」
そんなことをぼんやり考えていると、遠くからおみの声が聞こえてきた。
「りょーたー! これ、りょーたに」
「んー?」
「むん」
何故か頬とお尻を汚しているおみが、ずいと小さな手をこちらに差し出した。その手には黄色でふわふわの、可愛らしいタンポポが握りられていた。
明るくてまん丸で可愛らしい。まるでおみみたいだ。
「これ、おみが見つけたのか」
「そだよー! りょーたにあげたかったの」
「嬉しい。ありがとう、おみ」
「んふふ」
可愛らしい黄色のブーケを、大事に受け取る。確かちょうどいい大きさの花瓶があったはずだ。
それに活けて店先に飾ろう。きっと気分も明るくなる。
「おみ、本当に嬉しい、ありがとう」
「おみもうれしー!」
「うん。はい、ぎゅー」
「ぎゅーっ!」
ぴょん、と膝に飛び乗ってきたのでそのまま抱きとめる。ご機嫌な尻尾が気持ちよさそうに揺れていた。
それにつられたのか、日差しも降り注いできた。くああ、と大きな欠伸の声が聞こえてきて、俺も一緒に欠伸をした。
まずは畑の草抜きをして、明日くらいに耕そう。一気に全部すると疲れてしまう。のんびりやっても許される。
「りょーた、ねっこからぶちってしないと、また生えちゃうよ」
「そっか。難しいな」
「おみにまかせて!」
昔から畑仕事をずっとしてきたからか、おみは俺よりもずっと要領がいい。普段の姿からは想像できないほど素早く効率的に草を抜いていく。
ここではおみに習うことが多いな。
「とまとーにんじんじゃがいもー」
「そんなに植えるのか?」
「うぃ」
「坂口さんに頼んでおかないとな」
「わくわく」
メモに新しく人参とジャガイモを書き加える。うーん、もう少し畑を大きくしようかな。夏が近くなると、キュウリとか紫蘇も育てたいし。
今年の夏が楽しみだ。
「あ! りょーた、ちょっとまってて」
「いいけど。疲れた?」
「ちがうよー」
ぴょん、と何かに気がついたのか、ふわふわの尻尾がぴんと跳ね上がる。そのまま山の方へと走り出した。どうやら何かを見つけたらしい。
あんまり遠くへ行かないように、と声をかけて俺は少し休憩することにした。縁側に座り汗を拭う。朝晩はまだまだ冷えるけれど、日差しに当たると汗ばむくらいだ。
「春だなぁ」
今日の晩ご飯は何にしようかな。久しぶりにオムライスを食べたい。卵がたくさんあったし、鶏肉の代わりにツナ缶でも悪くない。たくさんのケチャップでご飯を炒めて、とろとろの卵を乗せたらきっと美味しい。
あとは簡単な野菜スープを作れば完璧だ。
「所帯染みている……」
そんなことをぼんやり考えていると、遠くからおみの声が聞こえてきた。
「りょーたー! これ、りょーたに」
「んー?」
「むん」
何故か頬とお尻を汚しているおみが、ずいと小さな手をこちらに差し出した。その手には黄色でふわふわの、可愛らしいタンポポが握りられていた。
明るくてまん丸で可愛らしい。まるでおみみたいだ。
「これ、おみが見つけたのか」
「そだよー! りょーたにあげたかったの」
「嬉しい。ありがとう、おみ」
「んふふ」
可愛らしい黄色のブーケを、大事に受け取る。確かちょうどいい大きさの花瓶があったはずだ。
それに活けて店先に飾ろう。きっと気分も明るくなる。
「おみ、本当に嬉しい、ありがとう」
「おみもうれしー!」
「うん。はい、ぎゅー」
「ぎゅーっ!」
ぴょん、と膝に飛び乗ってきたのでそのまま抱きとめる。ご機嫌な尻尾が気持ちよさそうに揺れていた。
それにつられたのか、日差しも降り注いできた。くああ、と大きな欠伸の声が聞こえてきて、俺も一緒に欠伸をした。
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