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第46話 呼び出し確認
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テスト期間が無事に終わった。特に苦労もせず成績は上々で、とても気分がいい。やっぱり毎日コツコツ勉強するのが大事なんだなぁと実感する。これからも普段から勉強を続けていこうと思った。
もうすぐ夏休みだ。今年は、どんな夏になるだろうか。
海やプールに行ってもいいし、涼しいところでのんびりしてもいいな。キャンプやバーベキューなんかも楽しそう。美味しいものをたくさん食べて、たくさん遊んで、充実した休みにしたい。
楽しい予定について考えていると、仕事関係で呼び出しを受けた。どうやら、何か確認したいことがあるらしい。
これから先のスケジュールとか聞かれるんだろうか。プライベートは大事だけど、仕事も大事だからなぁ……。予定を合わせて、しっかり話し合っておかないと。
「こんにちは、久遠《くおん》さん」
「お疲れ様です、七沢さん」
約束していた時間。いつも仕事で行っている施設の中にある会議室に入ると、先に久遠菜津樹《くおんなつき》さんが席に座って待っていた。
僕が会議室に入ると、スッと立ち上がって頭を下げる。とても丁寧な挨拶だった。
久遠菜津樹《くおんなつき》さんは、メガネを掛けた真面目そうなクール系の美人。スーツを着て、ピシッとしている。
年齢は30代後半くらいと聞いたことがある。見た目通り、とても仕事ができる人だった。
そして彼女は国家公務員であり、子作り政策に関わる人物。それから彼女は、僕の担当のマネージャーのような仕事をしてくれていた。
僕が相手をする女性の情報を事前に説明してくれたり、仕事に関する要望を聞いてもらったり。仕事をする場所を確保してくれたり、スケジュールなども管理してくれている。つまり、仕事の関係で色々とお世話になっていた。
「どうぞ、座ってください」
「はい、失礼します」
久遠さんに促されて、僕は席に着く。その後、彼女も席に座った。そして彼女が、話を切り出してきた。
「それで、本日お呼びしたのはですね……」
「はい」
「えーっと」
「どうかしましたか?」
話し始めるが、歯切れの悪い様子の久遠さんに首を傾げる。何か、言いにくいことでもあるのだろうか?
もしかして、僕へのクレームかな……? 女性への対応が悪かったとか。
いや、ちゃんとやっていたはずだ。今まで適当にやったことは一度もない。問題はなかったはずなんだけど。久遠さんの様子を見ると何かあるのか。思い当たることが一切ない。うーん、わからないぞ。
「いえ。実は、確認しておきたいことがございまして」
「あ、はい。なんでしょうか?」
確認したこと、とは一体なんだろうか。久遠さんが、それだけ言いにくいことなのかな。だとしたら、かなり不安になってくるんだけど。怖いな。
「その、お聞きしたいのですが。こちらの配信は、ご存知でしょうか?」
そう言って、目の前に出されたのはタブレット端末だった。その画面に表示されているのは、動画配信サイト。そこに映っている配信タイトルを見て、僕は困惑した。先日、有加里さんにお願いされて出演したミルキーウェイのアーカイブだった。
知っているかどうかを聞かれた。もちろん知っている。だけど、なんで久遠さんが知っているのかな。それを僕に聞いたということは、つまり僕が出演していたこともわかっているようだけど。
どう答えるか少し考えてから、僕は答えた。
「はい、知っています」
「ということは、この配信に出演している男性の声は、七沢さんで間違いありませんね」
やっぱり、僕が出演したことも知っているのか。
出演したのは声だけで、顔は出していない。有加里さんも、僕の情報を漏らさないように気をつけてくれていると言っていた。だから、大丈夫なはずなのに。
わかるはずがないんだけど、どうしてバレたんだろう……。
いや、でも。久遠さんに知られても、別に問題はないのかな。変なことをしていたわけじゃない。ただ、有加里さんと楽しく雑談しただけ。それをネット上に公開しただけ。それは、何も問題ないと思うけど。
うん、たぶん大丈夫だ。そう判断した僕は、素直に答えた。
「そうです」
「なるほど。やはり、そうでしたか」
僕の答えを聞いて、久遠さんが納得したように頷く。しっかりと確認されて、また不安になってくる。
「やっぱり、配信に出演するのはダメでしたか……?」
一応、公務員として働いている僕。だから勝手に、こんなことをしてしまうと迷惑がかかってしまうかもしれない。
事前に確認しておくべきだったのかな。恐る恐る尋ねると、久遠さんは少し慌てた様子で首を横に振った。
「いえいえ、違いますよ! 七沢さんに、全く問題はありません」
「あ、そうなんですか」
よかったぁ。安心した。もしこれで、問題だったらどうしようかと思った。
「ただ、かなり注目をされているようでしたので、念のために確認しておきたくて。すみません、驚かせてしまいましたよね」
「いえ、大丈夫です。むしろ、ご心配をおかけしてしまい申し訳ありませんでした」
「そんな、謝らないでください!」
ぺこりと頭を下げると、久遠さんは慌ててそれを止めるよう促してくる。
「実は、この配信について職員から何件か問い合わせがありまして」
「え、そうだったんですか」
まさか、そんなことになっているなんて。僕は、全然知らなかった。
「配信に出演することについては何の問題もありませんが、多くの人達が配信を見て影響があるかもしれません。それをしっかり把握しておく必要があると思います」
「顔出しはしていませんけど、それでもですか?」
「ええ。七沢さんを知っている人が声を聞けば、一発で分かってしまうでしょうね」
声だけでも、意外と簡単にバレてしまうらしい。そんなに僕は、特徴的な声をしているのかな。自覚はないけれど。
とにかく、久遠さんに忠告されたことを心に刻むことにした。配信に出演することによって、思いもよらない影響があること。今後は、気を付けないと。
もうすぐ夏休みだ。今年は、どんな夏になるだろうか。
海やプールに行ってもいいし、涼しいところでのんびりしてもいいな。キャンプやバーベキューなんかも楽しそう。美味しいものをたくさん食べて、たくさん遊んで、充実した休みにしたい。
楽しい予定について考えていると、仕事関係で呼び出しを受けた。どうやら、何か確認したいことがあるらしい。
これから先のスケジュールとか聞かれるんだろうか。プライベートは大事だけど、仕事も大事だからなぁ……。予定を合わせて、しっかり話し合っておかないと。
「こんにちは、久遠《くおん》さん」
「お疲れ様です、七沢さん」
約束していた時間。いつも仕事で行っている施設の中にある会議室に入ると、先に久遠菜津樹《くおんなつき》さんが席に座って待っていた。
僕が会議室に入ると、スッと立ち上がって頭を下げる。とても丁寧な挨拶だった。
久遠菜津樹《くおんなつき》さんは、メガネを掛けた真面目そうなクール系の美人。スーツを着て、ピシッとしている。
年齢は30代後半くらいと聞いたことがある。見た目通り、とても仕事ができる人だった。
そして彼女は国家公務員であり、子作り政策に関わる人物。それから彼女は、僕の担当のマネージャーのような仕事をしてくれていた。
僕が相手をする女性の情報を事前に説明してくれたり、仕事に関する要望を聞いてもらったり。仕事をする場所を確保してくれたり、スケジュールなども管理してくれている。つまり、仕事の関係で色々とお世話になっていた。
「どうぞ、座ってください」
「はい、失礼します」
久遠さんに促されて、僕は席に着く。その後、彼女も席に座った。そして彼女が、話を切り出してきた。
「それで、本日お呼びしたのはですね……」
「はい」
「えーっと」
「どうかしましたか?」
話し始めるが、歯切れの悪い様子の久遠さんに首を傾げる。何か、言いにくいことでもあるのだろうか?
もしかして、僕へのクレームかな……? 女性への対応が悪かったとか。
いや、ちゃんとやっていたはずだ。今まで適当にやったことは一度もない。問題はなかったはずなんだけど。久遠さんの様子を見ると何かあるのか。思い当たることが一切ない。うーん、わからないぞ。
「いえ。実は、確認しておきたいことがございまして」
「あ、はい。なんでしょうか?」
確認したこと、とは一体なんだろうか。久遠さんが、それだけ言いにくいことなのかな。だとしたら、かなり不安になってくるんだけど。怖いな。
「その、お聞きしたいのですが。こちらの配信は、ご存知でしょうか?」
そう言って、目の前に出されたのはタブレット端末だった。その画面に表示されているのは、動画配信サイト。そこに映っている配信タイトルを見て、僕は困惑した。先日、有加里さんにお願いされて出演したミルキーウェイのアーカイブだった。
知っているかどうかを聞かれた。もちろん知っている。だけど、なんで久遠さんが知っているのかな。それを僕に聞いたということは、つまり僕が出演していたこともわかっているようだけど。
どう答えるか少し考えてから、僕は答えた。
「はい、知っています」
「ということは、この配信に出演している男性の声は、七沢さんで間違いありませんね」
やっぱり、僕が出演したことも知っているのか。
出演したのは声だけで、顔は出していない。有加里さんも、僕の情報を漏らさないように気をつけてくれていると言っていた。だから、大丈夫なはずなのに。
わかるはずがないんだけど、どうしてバレたんだろう……。
いや、でも。久遠さんに知られても、別に問題はないのかな。変なことをしていたわけじゃない。ただ、有加里さんと楽しく雑談しただけ。それをネット上に公開しただけ。それは、何も問題ないと思うけど。
うん、たぶん大丈夫だ。そう判断した僕は、素直に答えた。
「そうです」
「なるほど。やはり、そうでしたか」
僕の答えを聞いて、久遠さんが納得したように頷く。しっかりと確認されて、また不安になってくる。
「やっぱり、配信に出演するのはダメでしたか……?」
一応、公務員として働いている僕。だから勝手に、こんなことをしてしまうと迷惑がかかってしまうかもしれない。
事前に確認しておくべきだったのかな。恐る恐る尋ねると、久遠さんは少し慌てた様子で首を横に振った。
「いえいえ、違いますよ! 七沢さんに、全く問題はありません」
「あ、そうなんですか」
よかったぁ。安心した。もしこれで、問題だったらどうしようかと思った。
「ただ、かなり注目をされているようでしたので、念のために確認しておきたくて。すみません、驚かせてしまいましたよね」
「いえ、大丈夫です。むしろ、ご心配をおかけしてしまい申し訳ありませんでした」
「そんな、謝らないでください!」
ぺこりと頭を下げると、久遠さんは慌ててそれを止めるよう促してくる。
「実は、この配信について職員から何件か問い合わせがありまして」
「え、そうだったんですか」
まさか、そんなことになっているなんて。僕は、全然知らなかった。
「配信に出演することについては何の問題もありませんが、多くの人達が配信を見て影響があるかもしれません。それをしっかり把握しておく必要があると思います」
「顔出しはしていませんけど、それでもですか?」
「ええ。七沢さんを知っている人が声を聞けば、一発で分かってしまうでしょうね」
声だけでも、意外と簡単にバレてしまうらしい。そんなに僕は、特徴的な声をしているのかな。自覚はないけれど。
とにかく、久遠さんに忠告されたことを心に刻むことにした。配信に出演することによって、思いもよらない影響があること。今後は、気を付けないと。
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