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第8話 お嬢様の変化 ※とあるメイド視点

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「美味しい!」

 口に出して言ってしまうぐらい、美味しそうに食事するオリヴィアお嬢様を見て、私は思わず微笑んでしまった。前まで見ることの出来なかった、彼女の美しい笑顔を拝むことが出来たのが嬉しかったからだ。



 マルク王子の婚約者だった頃、オリヴィアお嬢様はとても厳しい妃教育を受けていた。話を聞くだけでも辛くなるような、それはそれは苦しい教育の数々を泣き言一つ言わずこなしていた。

 その努力は紛れもなく素晴らしいものではあったけれど、ずっと無理をし続けていたせいで、精神的にも肉体的にも追い詰められていたのでは? とても心配だった。

 そんな状況で、さらに食事制限まで命じられていた。満足に食事することも許されない。体は木の枝のように細くなり、常に顔色は悪く、誰が見ても健康的とは言えない。いつ倒れても不思議ではないような、危険な状態だった。

 古くから伝えられてきたという王妃の理想像。それに近づけるように、厳しい基準が定められて、管理されてきたという。

 あれが王妃にふさわしい姿らしいけど、私には納得できなかったし、本当にそうなのだろうかと疑問しか湧かなかった。

 これが本当に、望まれている姿なの? 辛そうなオリヴィアお嬢様を見て思った。

 理想の体型と体重。昔と今では違うだろうし、人によっても違うはずのもの。それを無理やり当てはめようとしても、上手くいくはずないと思っていた。だけど王族の方々は伝統を大事にして、王妃候補に無茶を強いるばかり。



 あの時のオリヴィアお嬢様の姿を思い出すと、今でも胸が痛くなる。

 今はもう違う。オリヴィアお嬢様は、毎日美味しいものをお腹いっぱい食べているし、顔色も良くなった。細かった手足は、張りのある健康的なものになっている。楽しそうにしている表情を見ることが出来るようになった。

 現在のオリヴィアお嬢様は、本当にお美しくなられた。内側から輝くような、そんな感じ。

 これこそが、本来あるべき姿。無理な食事制限では得られない本物の美しさなんだと思う。王族の方々は、これを見ても伝統が大事だとか言うのかしらね。

 婚約を破棄されて、本当に良かったと思う。当主様としては、王族との関係が切れてしまうのは困るでしょう。でも、オリヴィアお嬢様にとっては良かった。王子から離れた今の方が幸せそうだから。

「料理のおかわりを」
「はい。今すぐお持ちします」

 私がそう言うと、オリヴィアお嬢様は嬉しそうに笑ってくれた。シェフが新しい料理を用意しているはずなので、急いで取りに行かなくては。この笑顔を守るために、全力でご奉仕して尽くしたい。
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