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第三章 魔王様、中学時代をお過ごしになる

82 ケルベロス達は魔王様への忠義を固く誓い合う。

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――竹内side――


学校に入ってから、懐かしいオーラが充満していて直ぐにわかった。
このオーラは懐かしい。
会いに行かねば。
俺達三人は頷きあい、教室での会話が終わり次第すぐに籍を立った。
元々小学校では問題児だっただけあって、同じ学校だった奴らは俺達が籍を立っていなくなったのを見てホッとしていた。

行かねば。
会いに行かねば。

そればかりが胸を逸る。
感じるオーラを元に走り出すと、その大元が見えてきた。
瞬間喜びが先に沸き上がった。


嗚呼――嗚呼――……。


「見つけた」
「魔王様」
「見つけましたわ」


三人同時に声を上げると、魔王様が振り向いてくださった。
此方の世界に来ていた事に驚きを隠せないが、待っていたのだ、ずっと焦がれていた魔王様。


「私です」
「ケルベロスです」
「お慕いしております!!」
「「ケルベロスが三人兄弟になっている」」




まさか俺達が三人兄弟、しかも人間になっているとは思っていなかったのか、魔王様はとても驚いていらっしゃった。
俺、竹内宗次郎は魔王様に会えたことで幸福感で一杯だった。
他の二人もそうだろう。


「学校中にあなた様の匂いを感じました」
「嗚呼、またこうして出会えたことに感謝したいです!」
「魔王様ああああん!!」


喜びから涙が溢れ駆け駆けだした俺達に魔王様は――。


「座れ」


と指示を出されとザッと膝をついて座った。
周りから見れば異様な光景だろうが、魔王様に命令されると喜びが身体を支配する。


「今後、親しい者たちにしか我の事を魔王と呼ばれる気はない。お前達が我の許でグループを作ると言うのであれば問題はないが、他人には【東くん】と呼ぶように」
「「「はい」」」
「分かればいい。立て」
「「「はい」」」
「クラスと名を言え」
「はい、我々は2組に所属しております、竹内宗次郎」
「俺は竹内幸次郎」
「アタシは竹内マリア」
「名は覚えた、我は1組に所属する東祐一郎である。忘れるな」
「「「はい!!」」」
「それと、既に両親を待たせている。明日学校で話をしよう」
「「「分かりました」」」


明日、明日魔王様とお話しできる!!
そう思うと雄叫びを上げたくて仕方なかったが、魔王様の午前の前で失礼は出来ない。
グッと堪え、魔王様が見えなくなるまで直立不動で見送った。
魔王様と誰かが同じ車に乗り込んで帰っていったのを見送り、俺達は顔を見合わせた。


「魔王様転生してきてた」
「こっちの世界に、俺達と同じ世界に」
「見つけたのはアタシたちが初めてよね?」
「お側にいなければ」
「またお仕えしなくては」
「また甘えなくちゃ!」
「でも、世界征服とかは人間では出来ない」
「出来なくてもいいよ、魔王様が居るだけで俺達は嬉しい」
「そうよそうよ」
「でも、魔王様と一緒にいた奴気になるな」
「気になる」
「トドメを刺した奴に似てた」


オル・ディールにいた時、最後は魔法でトドメを刺された。
あの時の悔しさが込み上げてくる。
門番たるもの、いかなる時も魔王様の為に忠義を払ってきた。
けれど勇者たちは自分たちを倒し、中へと入ってしまった。
その所為で魔王様がどうなったのかは――先の様子で直ぐにわかった。

自分たちが弱かったからだと泣いた。
自分たちが甘かったからだと悔やんだ。
転生しても失った穴は元には戻らず、魔王様の事を案じ続けた。
でも、それも今日までだった。
魔王様がいたからだ。


「今度こそお守りせねば」
「今度こそ最後まで忠義を払わねば」
「魔王様の言う事は絶対だもの!」


何時も美味しいご飯をくれた魔王様。
いつも優しく撫でてくれた魔王様。
いつも笑顔で語りかけてくれた魔王様。
大好きだった、ずっとずっと大好きだった!


「「「もう、離れない」」」


離れられるはずなんて無い。
ずっとずっとずっと求めていた穴が塞がったのだから。
最後まで見送りをしていると、こちらの世界の両親が慌ててやってきた。
俺達が教室から一気に駆け出していったからだろう。


「どうしたんだ三人共!」
「急に駆け出してダメじゃない!」
「懐かしい人に会っただけ」
「明日からの学校楽しみ」
「きっとず――っと仲良くできるわ」
「そうかそうか、お前達三人にもやっと友達になりたい奴が出来たか」
「そうとなれば今日はお祝いね! 焼肉屋に予約しているから行きましょう?」
「「「肉、やった!!」」」


その日の夕食は何時も以上に食べた。
食べ放題だから問題ないけれど、沢山沢山食べた。
やっと求めていた穴が埋まって、飢えと言うものが分かったからだ。
腹を満たして明日から魔王様の為に動かねばならない。
魔王様の命令は絶対だから。
魔王様、魔王様!!


「こんなに嬉しそうに食事をするなんて久しぶりね」
「本当に、きっと学校で良い出会いがあったんだね」
「ええ、きっとそうね」


そう言って両親は嬉しそうにしている。
良い出会い? それよりも、もっと素晴らしい出会いだった。
いいや、再会だった。
ずっと生まれてから待ち望んでいた再会だった!!


「明日からの学校楽しみだね宗次」
「そうだな、幸次」
「アタシもすごく楽しみよ」
「「そうだなマリア」」


お互いにクスクス笑いお腹いっぱい食べると明日の用意をしてから布団に入った。
明日からはもう寂しくない。
穴はもう塞がって、求めていた人に会えて、隣のクラスで、いつでも会える。
そう思うと胸が締め付けられるほど幸せで……俺達はそのまま眠りの縁へと降りて行った。
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