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第三章 魔王様、中学時代をお過ごしになる

81 魔王様は中学校に入学されてケルベロス三兄弟と出会う。

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本日は中学の入学式。
朝から学ランに着替えた我と魔法使い、そして勇者との三人で写真を撮り、その足で入学式へと向かった。
周辺の小学校4校が集まる中学はそこそこ大きく、我たちの行っていた小学校と言うのは人数が少なかった為、他校の大きな小学校二つがほぼメインとなりそうなほど人は多かった。
クラスを調べると、アキラと魔法使いとは同じクラスだった。
喜ぶ魔法使いと同時にアキラの「やった―――!!」と言う声も合わさり、我らは中学も同じクラスで学べるようだとホッとした。

その後教室に鞄を置き、体育館へと向かうと入学式が始まった。
特に変わり映えのない内容で飽き飽きしていたが、表面上では真面目な生徒でいなければならないだろう。
女子たちの視線が気になったが無視してそのまま進んだ。

担任は、頭がバーコードになった風変りの様子な担任だった。
こう何と言うか、いかにも女性受けの悪そうな先生で、少し情緒不安定のようにも見えた。
挨拶もそこそこに学級委員を決めることになったが、運悪く魔法使いが学級委員に選ばれ、もう一人女子が選ばれた。
可哀そうだが、生徒会を務めていた経歴もある為、困ったときは手を貸そうと思う。
こうして簡単な説明の後、教室移動場所を回って解散となったが――。


「最悪、学級委員とか……もっとうまそうな人いるだろうにさー」
「恵は目立つからな、良くも悪くも」
「え――?」
「まぁ、男性にも女性にもうけそうな顔してますからね」
「それって僕が美少年ってこと?」
「まぁ、そうなる」
「そうなるかー」
「良かったではないですか、美少年で」
「学級委員に選ばれたのは嫌だけど、まぁ……仕方ないか」


そう言って溜息を吐く魔法使いに肩を叩いていると、各々学校で生き残る為のグループ作りが始まった。
学校と言う場所は、このグループ結成こそが重要で、それこそが生き残りをかけた戦いだろう。
まぁ、それでもハグレと言うのも存在するし、外されて嫌味を言われるのも学校ならではと言うところか。
学校と言うシステムは、勉学に励むだけではなく人付き合いを覚える場所でもあるが、人間誰しも得意不得意があるように、それを強制する学校のやり方はやはり同意できない。
これは我が元々魔族だったからそう思うのかと思ったが、魔法使いたちも同じように思っていた事で少しほっとした。


「グループ作りは今後の中学人生を左右するから大変だよね……」
「まぁ、それは小学校でも似たようモノでしたが」
「俺達三人集まってて良かったな……」
「そうですね」


既に戦いの火ぶたが切られたこの空間と言うのは、中々に異様である。
参加している親は説明会を体育館で受けているし、その間の戦いな訳だが――。
中には猛者もいるようで、我たちの元に集まった女子の熱と言うのは――獰猛な猛獣を相手にしているような気分になる。


「東くんちはお寺さんなのー?」
「恵ちゃんはその家の居候? うける――!」
「アキラくんは今フリー? どう? 私とかと付き合う気ない?」


と言う猛者である。
肉食系女子……そう、あのチッパイ軍団の肉食系女子の劣化版がやってきたのだ。


「実家は寺ですが何か?」
「堅苦しいー! もっとフレンドリーに来て欲しいなー!」
「恵ちゃんかわいい~~~! ねぇねぇ、フリーなら私と付き合わない?」
「尻軽女は遠慮するよ」
「ひどーい!」
「アキラ君はそんな事言わないよね!?」
「俺、彼女一筋だから」
「ウソ――彼女持ちなの!?」
「この学校の誰?」
「祐一郎の妹」
「「「キャ――ロリコーン!!」」」


余りにも人の神経を逆なでするこの女子軍団。
二度と関わりたくない人種にリストアップしておこう。
そう思った矢先だった。


「あのさ、人の事をそれだけ小馬鹿にしておいて仲良くしようなんて思わないでね? 正直不愉快でしかこっちはないから、今後は近寄らないでくれる? あと香水が臭い」
「「「は?」」」
「そうですね、ちょっと尻軽すぎるというか……慎みのない女性と言うのは嫌ですね」
「同意する」
「マジでなくない?」
「酷過ぎる」
「どっちがだよ。男に飢えてるなら誰でもよさそうな顔してるけど? 自分の顔みたことあんの? 僕より可愛くない女子とかありえないんだけど」
「「「マジ酷い」」」


と、魔法使い節が炸裂したところで予鈴が鳴り、担任の先生が入ってくると下校と言う事になった。
最初からウザったい雌に絡まれたことは不運と思い、我たちは三人で帰ろうと玄関まで向かい、靴を履いてアキラは先に向かい、魔法使いと共に両親が待つ体育館へと向かおうとしたその時であった。



「見つけた」
「魔王様」
「見つけましたわ」


「「え?」」


聞こえた声に後ろを振り返ると、三つ子のような三人組と出くわした。
しかも我を「魔王様」と呼んだ当たり……嫌な予感がする。


「私です」
「ケルベロスです」
「お慕いしておりましす!!」
「「ケルベロスが三人兄弟になっている」」


まさかの勇者たちが倒したケルベロスが、一人は真面目系、一人はワンコ系、一人は女性として生まれ変わってきていた。
これには頭を抱えるしかない。
そうか、ケルベロスは頭が三つあるからこそ、三つ子で生まれてきたのか!!


「学校中にあなた様の匂いを感じました」
「嗚呼、またこうして出会えたことに感謝したいです!」
「魔王様ああああん!!」


泣きながら駆け寄ってくる三人に思わず――。


「座れ」


と指示を出すとザッと膝をついて座った。
周りから見れば異様な光景だろうが、サッサと済ませるに限る。


「今後、親しい者たちにしか我の事を魔王と呼ばれる気はない。お前達が我の許でグループを作ると言うのであれば問題はないが、他人には【東くん】と呼ぶように」
「「「はい」」」
「分かればいい。立て」
「「「はい」」」
「クラスと名を言え」
「はい、我々は2組に所属しております、竹内宗次郎」
「俺は竹内幸次郎」
「アタシは竹内マリア」
「名は覚えた、我は1組に所属する東祐一郎である。忘れるな」
「「「はい!!」」」
「それと、既に両親を待たせている。明日学校で話をしよう」
「「「分かりました」」」


こうしてその場を急いで魔法使いと共に去る事にしたのだが――。


「四天王じゃなくて、犬が来てたね」
「ケルベロスです」
「ケルベロスって魔王にとっては」
「可愛がっていた犬ですね」
「だよね、あの四天王より凶暴なのが三人とか……恐怖なんだけど!!」
「諦めて下さい」
「もう中学やだ―――!!」


絶望する魔法使いには悪いが、駆け足で両親の許へ向かい車に乗り込むと、我たちは家に向かい走り出しだしたが――。
何時までも忠犬の様に佇む三人を見て、溜息が零れたのは言うまでもない。
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