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俺の婚約者 sideアルフレッド

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 リリーナに初めて会ったのは7歳の時だった。
 側近と婚約者を決めるお茶会を王宮庭園で開いたあの日、運命に出会った。




*11年前




「アルフレッド」
「母上!」

 王宮庭園でお茶会を開いた後、お茶会の報告をしに母上の住む後宮へとやってきた。5歳まで僕も住んでいた場所。よく共に過ごした東屋で母上が迎えてくれた。

「ふふ。いい事がありましたか? 嬉しそうな顔をしています」
「はいっ! すごく可愛い子に会いました」

 テーブルに着き、後宮料理人が作ったチーズのタルトを母上が取り分けてくれた。僕の住む王宮の料理人が作ったものの方が美味しいけれど、母上の好みに合わせた甘さ控えめのチーズのタルトは懐かしい気持ちにさせてくれる。

「とっても可愛くて…僕の運命の相手はリリーナです! あの子を僕の婚約者にしたいです!」
「あらあら。でも陛下には、何人かの婚約者候補を決めるようにと言われていたでしょう?」
「ですが、父上にも妃は母上しかいないではないですか。僕もリリーナだけがいいのです」

 父上には、母上以外にも婚約者候補が何人かいたと執事に聞いたことがある。でも、何人も候補がいたって結婚するのは一人だけなんだから、何人もいなくたっていいじゃないかって思ってるんだ。

「お子が産まれなければ他の方とも婚姻関係を結ばなければならないのですよ? 陛下のおっしゃっていた通り、候補を数人決めなければなりません」
「いえ。母上がなんと言おうとリリーナだけがいいのです。リリーナ以外はいりません。父上のことも説得してみせます」

 僕の子供なんてまだまだ先の話なのに、お子、お子、ってみんなうるさい。母上は僕の味方だと思っていたのに。1つしか年が変わらない弟はそんな事言われないって言っていたのに、なんで僕だけ…。





「アルフレッド殿下、陛下が執務室へ来るようにとのことです」

 明くる日、母上から話を聞いたのか早速父上に呼び出された。丁度いい。何を言われたってリリーナだけがいいんだと伝えよう。

「父上、アルフレッドです」
「来たか」

 執務室に入り、僕がソファーに座ると人払いをした父上。

「アルフレッド。王として問おう。婚約者候補を一人に絞ると報告が来た」

 射抜くような鋭い目を向けられ、怯みそうになるのをぐっと堪える。

「はい。ウィリアムズ公爵家の長女、リリーナと婚約したいと考えております」
「他の候補は」
「必要ありません」

 顎に手を当て考えるような仕草をした父上。なんてことのない仕草なのに手に汗を握ってしまう。

「ウィリアムズ公爵家は嫡男のレオニールが側近候補として名乗りを上げている。それにあの家は王族の血筋だ。そこから婚約者も選べば力が強くなりすぎてしまう。他の貴族とのバランスを考えるのであれば、ベルナール侯爵家のアマンダあたりがちょうどいいだろう」

 アマンダ? リリーナしか覚えていないな。

「レオニールを側近にしません」
「優秀だと聞いている」
「ですがっ」
「ウィリアムズ家の令嬢と婚約したいのであれば、私を納得させてみよ」

 ここでもう下がれと言われるんじゃないかって思ったけれど、どうやらまだ説得する時間をもらえるようだ。

「側近は誰でも構いません。ぼ、私が王子じゃなきゃ近寄ってこないような人しかいません」
「それを見極める力を持たなければならない」
「…………。リリーナがっ! リリーナがいてくれれば頑張れます。人を見極める力もつけます。勉強も剣ももっともっと頑張ります! リリーナを守るのは僕がいい…」

 そう言うと先程とは打って変わってにこやかな表情になり、気が緩んでしまう。

「リリーナも王子だからとお前を利用するかもしれないぞ」
「リリーナになら利用されてもかまいません」
「はははっ。そうか。利用されてもいいのか」

 そう目元をほころばせ、王から父の顔になった。

「意志が強いようだな」
「はい」
「アルフレッド。王太子はまだ決まっていないが、誰がなるにせよ、王族との婚姻は元々筆頭公爵家のウィリアムズ公爵家をさらに強くさせることに変わりはない。何度でも言うがあの家は王族の血筋、王位継承権を持つ家なんだ。その家が力を持つということはどういう事か分かるな? リリーナを婚約者にしたいのであればウィリアムズ公爵家に忠誠を誓わせろ」


 早くしなければ、誰かにリリーナを奪われてしまうのではないかと思えてすごく恐ろしい。
 だからまだ何の策もないけれど、父の名で早馬を使い、公爵に手紙を出してもらうことにした。



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