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俺の婚約者② sideアルフレッド
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手紙を出した数日後のこと。忠誠を誓わせるなんてどうすればいいのか何一つ策が浮かんでいないのに、ウィリアムズ公爵と会う日になってしまった。
「殿下。ウィリアムズ公爵閣下がご到着されたようです」
どうしよう。
***
「失礼します」
部屋に入ると既に父上と公爵が談笑しており、くつろいでいた。
……。思っていたより和やかな雰囲気だ。
「お待たせしました」
「早速で悪いが、息子が君に頼みたいことがあるようでな」
!!!!
さ、策がないのにっ!
「お伺いします」
「リ、…レ、……。リ、リリーナと婚約したいと思っている。だからレ、レオニールを側近にはできない」
「ほう。さようですか」
公爵が何を考えているのか全然読めない。父上は黙ってみているだけで、助けるつもりはなさそうだ。
ここからどうやって忠誠を誓わせればいいのだろう。
「レオニールが側近になれない理由をお聞かせいただいても?」
「そ、それは…、リリーナが婚約者になると、その、ウィリアムズ公爵家の力が強くなってしまうからで」
「ではリリーナを婚約者候補から辞退させましょう。そうですねぇ、オスメント公爵家の子息と婚約させるのも悪くないですね。あぁ…それだと我が公爵家の力は強いままですね。いっそ隣国に嫁がせましょうか。国にとっても利点ですし、我が家は隣国の公爵家と親戚関係ですのでツテもありますし」
「それはだめだ!」
リリーナが辞退するなんて、だめに決まってる!
「では、どういたしましょうか」
腕を組み、全身で困っているように見せているが、これは演技なのだろうか。本当に困っているようには見えない。
「レ、レオニールが私に忠誠を誓うのであれば側近にしてやってもいい。そ、そのかわり! リリーナは私の婚約者だ。リリーナが婚約者にならないのであれば、レオニールの側近の話もなしだ」
「よいのですか? 我が公爵家の力が強くなりますが」
「いい。忠誠を誓うのであれば問題ない」
そう言うと、ほんの少し口角を上げた公爵。
「承知いたしました。では、レオニールに忠誠を誓わせます。契約書が作成でき次第婚約の手続きを行いましょう」
*
*
何故こんなにも上手く行ったのだろう、あまりの展開の速さに混乱している間に、公爵は帰ったようだった。
「アルフレッド。忠誠を誓わせろと言ったが、まさかそのまま言うとは思わなかったぞ」
「申し訳ありません…」
「今回はお前を試しただけだったから良かったものの、今後はしっかりと策を練って行動せねばならん」
試しただけ…
「ウィリアムズ公爵家が王族の血筋であり王位継承権を持っているのは事実だ。だがあの家は既に王家に忠誠を誓っておる」
「ではリリーナとの婚約は初めから反対ではなかったのですか?」
「候補の一人になるだろうと踏んでいたからな」
僕が部屋に着く前に公爵にも話を通していたようで、他に嫁がせると言い出したのも本気じゃなかったようだ。
「アルフレッド、ここからは父として話そう。リリーナのどこが良かったんだ?」
「はい。庭園についてすぐリリーナを見つけました。可愛いくて、名を知りたいと思いました。側近候補のテーブルを回っている際に彼女の妹が間違えて庭園に入ってきてしまったのですが、そのせいで僕がリリーナのいるテーブルについた時、困ったような顔をしていて。眉を下げて妹が申し訳ありませんと言われましたが、リリーナは悪くないのに謝れるなんていい子です。それに、困った顔も可愛くて…。一番可愛かった。いえ、リリーナだけが可愛かったんです。それに」
「まだ続くのか」
「はい。リリーナの隣に席を用意してもらったんですが、ずっと困った顔で、スイーツにも紅茶にも手を付けていなかったんです。気にしなくてもいいのにと思い、タルトが美味しいよって教えてあげたらベリーのタルトを手にして。本当はチーズのタルトがオスススメだったんですが、ベリーのタルトを食べた時、すっごく美味しそうに食べていたのが可愛くて。リリーナという名前もピッタリですし、それに! 可愛いだけじゃなくいい匂いもしたんです。でも他のテーブルにも回らないといけなくて、全然お話できなかったんですが」
「そ、そうか」
まだまだ話足りないのにもう下がって良いと言われてしまった。
ふふん。リリーナと婚約できるっ! 早く会いたいな。
「殿下。ウィリアムズ公爵閣下がご到着されたようです」
どうしよう。
***
「失礼します」
部屋に入ると既に父上と公爵が談笑しており、くつろいでいた。
……。思っていたより和やかな雰囲気だ。
「お待たせしました」
「早速で悪いが、息子が君に頼みたいことがあるようでな」
!!!!
さ、策がないのにっ!
「お伺いします」
「リ、…レ、……。リ、リリーナと婚約したいと思っている。だからレ、レオニールを側近にはできない」
「ほう。さようですか」
公爵が何を考えているのか全然読めない。父上は黙ってみているだけで、助けるつもりはなさそうだ。
ここからどうやって忠誠を誓わせればいいのだろう。
「レオニールが側近になれない理由をお聞かせいただいても?」
「そ、それは…、リリーナが婚約者になると、その、ウィリアムズ公爵家の力が強くなってしまうからで」
「ではリリーナを婚約者候補から辞退させましょう。そうですねぇ、オスメント公爵家の子息と婚約させるのも悪くないですね。あぁ…それだと我が公爵家の力は強いままですね。いっそ隣国に嫁がせましょうか。国にとっても利点ですし、我が家は隣国の公爵家と親戚関係ですのでツテもありますし」
「それはだめだ!」
リリーナが辞退するなんて、だめに決まってる!
「では、どういたしましょうか」
腕を組み、全身で困っているように見せているが、これは演技なのだろうか。本当に困っているようには見えない。
「レ、レオニールが私に忠誠を誓うのであれば側近にしてやってもいい。そ、そのかわり! リリーナは私の婚約者だ。リリーナが婚約者にならないのであれば、レオニールの側近の話もなしだ」
「よいのですか? 我が公爵家の力が強くなりますが」
「いい。忠誠を誓うのであれば問題ない」
そう言うと、ほんの少し口角を上げた公爵。
「承知いたしました。では、レオニールに忠誠を誓わせます。契約書が作成でき次第婚約の手続きを行いましょう」
*
*
何故こんなにも上手く行ったのだろう、あまりの展開の速さに混乱している間に、公爵は帰ったようだった。
「アルフレッド。忠誠を誓わせろと言ったが、まさかそのまま言うとは思わなかったぞ」
「申し訳ありません…」
「今回はお前を試しただけだったから良かったものの、今後はしっかりと策を練って行動せねばならん」
試しただけ…
「ウィリアムズ公爵家が王族の血筋であり王位継承権を持っているのは事実だ。だがあの家は既に王家に忠誠を誓っておる」
「ではリリーナとの婚約は初めから反対ではなかったのですか?」
「候補の一人になるだろうと踏んでいたからな」
僕が部屋に着く前に公爵にも話を通していたようで、他に嫁がせると言い出したのも本気じゃなかったようだ。
「アルフレッド、ここからは父として話そう。リリーナのどこが良かったんだ?」
「はい。庭園についてすぐリリーナを見つけました。可愛いくて、名を知りたいと思いました。側近候補のテーブルを回っている際に彼女の妹が間違えて庭園に入ってきてしまったのですが、そのせいで僕がリリーナのいるテーブルについた時、困ったような顔をしていて。眉を下げて妹が申し訳ありませんと言われましたが、リリーナは悪くないのに謝れるなんていい子です。それに、困った顔も可愛くて…。一番可愛かった。いえ、リリーナだけが可愛かったんです。それに」
「まだ続くのか」
「はい。リリーナの隣に席を用意してもらったんですが、ずっと困った顔で、スイーツにも紅茶にも手を付けていなかったんです。気にしなくてもいいのにと思い、タルトが美味しいよって教えてあげたらベリーのタルトを手にして。本当はチーズのタルトがオスススメだったんですが、ベリーのタルトを食べた時、すっごく美味しそうに食べていたのが可愛くて。リリーナという名前もピッタリですし、それに! 可愛いだけじゃなくいい匂いもしたんです。でも他のテーブルにも回らないといけなくて、全然お話できなかったんですが」
「そ、そうか」
まだまだ話足りないのにもう下がって良いと言われてしまった。
ふふん。リリーナと婚約できるっ! 早く会いたいな。
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