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事件の結末③

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 ルーシーが無事に修道院に送られ、平和な日常が戻りつつある日に、お兄様に話があると執務室に呼ばれた。

「メアリーについてだが…」

 対面に座るお兄様が言うには、メアリーの今後について私の意見が聞きたいとのこと。

 今までの嫌がらせについては、喧嘩の域を超えていないから謝らせることしかできない。ただ、成人になる一生で一番大事な誕生日パーティーで問題を起こしたことや、アルフレッド様に違法薬草を使おうとした事は無視できない。私が攫われた件についても、知らなかったとはいえ情報を与えてしまった。

 反省すれば何でも許されるわけではないし、公爵令嬢としても意識が低すぎるため罰を与えるつもりだそう。

「早々に婚約者の元へ嫁がせるか、卒業まで隣国へ留学させ侍女なし寮生活をさせるか、そのどちらかにしようと思っている」
「嫁ぎ先から学園へ通わせるのですか?」
「その辺は相手側に任せるつもりだ」

 確か婚約者の方はメアリーと同じ年の伯爵家嫡男。 ――この国は男女共に16歳になれば結婚ができる。推奨年歴は18歳以上だけど―― そして…伯爵夫人は王妃教育でお世話になった私の恩師。とても厳しい方で、前世を思い出さなければ私のために厳しくしてくれていると気付かず逃げ出していたでしょうね…。

 侍女なし寮生活は…公爵令嬢として生きてきたメアリーにはキツイかもしれないわね。

「貴族としての責任感を早々に持たせたいのであれば、嫁がせるのが一番いいと思いますが、お母様と離したいのであれば隣国への留学が良いかと。隣国ってお祖母様の祖国でしょう?」
「そうだな。どちらにせよ嫁げば夫人の教育は行われるし、留学させようか。母上にも反省が必要だしな」

 ルーシーに脅されて傷心したメアリーは、環境を変え心を癒やすために留学すると学園へ報告するそう。まぁいずれ帰ってくるわけだし、脅されていた事にする方が公爵家のダメージがないものね。

「言っておくがリリーナのためだからな。メアリーに罰を与えるのは」
「えっ?」
「いずれ王妃になった時、妹に問題があったらアルとリリーナが困るだろう。母上も同じ理由だ」

 えっ、驚きなんですけど。確かにお兄様とは普通に話せるし、最近はメアリーを溺愛している様子もなかったとはいえまさか私のためとは。なにか企んで……?

「何も企んでいないからな。俺はどれだけ冷酷な人間だと思われていたんだ」
「あはは…」


 お母様もメアリーも酷いし、許すまでには時間がかかるかもしれない。でも、転生メアリーみたいに姉妹仲を良くしようと私は動かなかったし、お母様との関係修復も諦め距離をおいていた。今思えば、前世を思い出す前はお母様ともう少し話をしていた気がする。だからこうなってしまったのは私にも原因があるのよね。

 私はまだ18歳だし、これから関係修復する時間はたくさんある。2人をもう少し許すことができたら私から歩み寄ってみようかなと、ほんの少し思うことができた。



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