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18.不法な侵入
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同日、夜。
私は、森の民の正装である黒に近い緑の布地に、黒い縁取り、金色の刺繍がされているローブを身にまとい、シグルド殿下への部屋へと向かう。
森の民が宮殿に出入りしていると分かれば騒ぎになりかねない。
「ルイーズ様は、正式に正面から入ってください」
「私だって!!」
2階にあるシグルド殿下のバルコニーの下で、ルイーズ様は大きな声を出すから、私とランバールはシーと指を立て、無言のまま追い出すように手を振って見せ追いたてて見送る。
「ランバール、抱っこ」
「はい」
どこか嬉しそうにランバールは私を姫抱っこし、バルコニーに飛び乗った。
「お嬢様は可愛らしいですね」
「ローブに隠れ姿なんか見えない癖に」
「可愛らしい重さと、可愛らしい匂いがします」
「なんだか、微妙だわ。 そういうのはもっと本音で語って?」
「本音ですか?」
「もう少し肉付きがある方が女性として魅力的よね?」
「お嬢様がお嬢様である限り、私にとっては魅力的ですよ」
「口の上手い人なんだから」
なんて、無駄口を交わしながら、私達は警備をかいくぐりシグルド殿下の寝室のバルコニーへと降り立った。 通行証であるルイーズ様が居ない事もあり、私は開錠のための魔法を使う。
「誰だ」
声をあげたのは、シグルド殿下。
「ランバール、そこで待っていて」
そして私は扉を開き、低く落ち着いた声を作りながらシグルド殿下に告げる。
「殿下、貴方を救いに来ました……」
「必要ない」
冷ややかな声だった。
寝室らしい部屋の向こうからは、部屋に入れろと叫ぶルイーズ様とソレを止めようとする侍女達と護衛騎士の声が響いている。 別に、邪魔者を引きつけておいて欲しいと言う意味ではなかったのだけどと、思わず苦笑してしまった。
部屋の中に足を進めると、押さえてはいるが感情の込められたシグルド殿下の声。
「入ってくるな。 俺は今、気が立っている」
「なら、余計にこの杜撰な警備は問題ですわ」
「俺に警備等必要ない」
イラっとしているのが分かった。
声の方向を見れば、シグルド殿下は月の光が差し込むロッキングチェアに座り瞳を閉ざしていた。
「森の民か?」
シグルド殿下は、私をヴェルディ・ルドリュかと聞かなかった。 ソレでいいのだけど……だって、私は森の民として、ルドリュ伯爵令嬢と同一人物である事を隠そうと、声を押さえ大人ぶっていた。
「えぇ、貴方の共生者ですわ」
「帰れ」
「ですが、ルイーズ様が心配なさっておいでですわ」
扉の向こうから、聞こえる怒鳴り声が近づいてきた。
「通しなさい。 なぜ、私が貴方達に足止めをされなければなりませんの?!」
そして侍女も護衛騎士も押しのけて部屋へと入ってくれば、シグルド様の大きく大げさな溜息の音。
「あぁ、カワイイ私のシグルド。 どうしたの、何処が悪いの。 私の私のカワイイ子」
ルイーズ様は、何かを確認するようにシグルド様の身体をまさぐった。
「止めろ!!」
そう言って、近寄るなと押しのけられてもルイーズ様は退かなかった。 彼女もまたオークランド国の民であり、姫君なのだから。
「あぁ、どうして!! どうして!! こういう事になってますの!! 神の前で誓約を交わしたのに、なぜ、私の子の身代わりとして機能しておりませんの?! 私のカワイイ子が、私の子が……視力を失ったなんて!!」
ルイーズ様は、不意に私の方を向き責めだした。
私は、森の民の正装である黒に近い緑の布地に、黒い縁取り、金色の刺繍がされているローブを身にまとい、シグルド殿下への部屋へと向かう。
森の民が宮殿に出入りしていると分かれば騒ぎになりかねない。
「ルイーズ様は、正式に正面から入ってください」
「私だって!!」
2階にあるシグルド殿下のバルコニーの下で、ルイーズ様は大きな声を出すから、私とランバールはシーと指を立て、無言のまま追い出すように手を振って見せ追いたてて見送る。
「ランバール、抱っこ」
「はい」
どこか嬉しそうにランバールは私を姫抱っこし、バルコニーに飛び乗った。
「お嬢様は可愛らしいですね」
「ローブに隠れ姿なんか見えない癖に」
「可愛らしい重さと、可愛らしい匂いがします」
「なんだか、微妙だわ。 そういうのはもっと本音で語って?」
「本音ですか?」
「もう少し肉付きがある方が女性として魅力的よね?」
「お嬢様がお嬢様である限り、私にとっては魅力的ですよ」
「口の上手い人なんだから」
なんて、無駄口を交わしながら、私達は警備をかいくぐりシグルド殿下の寝室のバルコニーへと降り立った。 通行証であるルイーズ様が居ない事もあり、私は開錠のための魔法を使う。
「誰だ」
声をあげたのは、シグルド殿下。
「ランバール、そこで待っていて」
そして私は扉を開き、低く落ち着いた声を作りながらシグルド殿下に告げる。
「殿下、貴方を救いに来ました……」
「必要ない」
冷ややかな声だった。
寝室らしい部屋の向こうからは、部屋に入れろと叫ぶルイーズ様とソレを止めようとする侍女達と護衛騎士の声が響いている。 別に、邪魔者を引きつけておいて欲しいと言う意味ではなかったのだけどと、思わず苦笑してしまった。
部屋の中に足を進めると、押さえてはいるが感情の込められたシグルド殿下の声。
「入ってくるな。 俺は今、気が立っている」
「なら、余計にこの杜撰な警備は問題ですわ」
「俺に警備等必要ない」
イラっとしているのが分かった。
声の方向を見れば、シグルド殿下は月の光が差し込むロッキングチェアに座り瞳を閉ざしていた。
「森の民か?」
シグルド殿下は、私をヴェルディ・ルドリュかと聞かなかった。 ソレでいいのだけど……だって、私は森の民として、ルドリュ伯爵令嬢と同一人物である事を隠そうと、声を押さえ大人ぶっていた。
「えぇ、貴方の共生者ですわ」
「帰れ」
「ですが、ルイーズ様が心配なさっておいでですわ」
扉の向こうから、聞こえる怒鳴り声が近づいてきた。
「通しなさい。 なぜ、私が貴方達に足止めをされなければなりませんの?!」
そして侍女も護衛騎士も押しのけて部屋へと入ってくれば、シグルド様の大きく大げさな溜息の音。
「あぁ、カワイイ私のシグルド。 どうしたの、何処が悪いの。 私の私のカワイイ子」
ルイーズ様は、何かを確認するようにシグルド様の身体をまさぐった。
「止めろ!!」
そう言って、近寄るなと押しのけられてもルイーズ様は退かなかった。 彼女もまたオークランド国の民であり、姫君なのだから。
「あぁ、どうして!! どうして!! こういう事になってますの!! 神の前で誓約を交わしたのに、なぜ、私の子の身代わりとして機能しておりませんの?! 私のカワイイ子が、私の子が……視力を失ったなんて!!」
ルイーズ様は、不意に私の方を向き責めだした。
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