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31.デートと言うには騒々しい 01
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手探り状態で作られた庶民の街は、最初の街、始まりの街だけあってシンプルに石造りの箱型が多い。
整備された道を馬車で行く。
ヴィズ、セグ、セリアには緊張が見られた。
牧草地を抜け、農業地区を通る。
王都周辺で作られているのは、小麦、サトウキビ、香辛料を中心に栽培。
「そう言えば、塩って何処から来るの?」
ギルモアには海が無いが、塩には困った事はない。
「塩は昔からギルモア一族の長が管理している」
そう答えたのはヴィズで、私が首を傾げると、溜息と共に言葉が続けられた。
「塩は貴重だからな、王が管理し、民に配給している。 例え、父上の大切な天使殿であっても気安く教える事はないだろう」
「シア、聞いて見ろよ。 簡単に教えてくれるかもだぞ?」
ラースがからかう様に言えばヴィズが睨みつけた。
「塩は他国から、何かを購入する時にも使える貴重なものだぞ!」
結果だけを言えば、アッサリと教えてもらえ……ヴィズはまた落ち込む事になるが、それは別の話だ。
農業地区を離れ、商業地区へと入る。 その向こうには工芸地区、住居地区と続くが今日の所は訪れる予定がない。 でも、いずれ日を改めて見学する事も大切だろう。
立派な馬車で商業地区に乗りつければ、王城で何かがあったと感じ取っただろう住民たちはピリピリとした緊張を伴い馬車を眺めた。
緊張感とは別に……誰も話をする者はいない。
3人の王子が馬車から降りれば、いっそう冷ややかな視線が注がれる。
それは恐怖なのだが……。
「どうにも、私達は嫌われているようだな」
そう視線を伏せながらヴィズは言うが、馬車の中のシアを抱っこしながら外に出し、その後にアズが姿を現せば、それこそ民の表情に大輪の花が咲いた。
歓喜のこもった声で声があがる。
「姫さまぁああ!! よくご無事でした」
「心配したんですよ~」
馬車を囲むように平服する民。
アズを取り囲みだす若い女性達。
余りの勢いにヴィズはアズを守った。
「もしかして、アズ様の王子様ですかぁ?」
「えぇ」
きゃぁああ!! と悲鳴が上がり、ヴィズは混乱していた。 それでもアズを守らなければと言う思いで、アズを背に隠せば、周囲はクスクスと笑った。
「ご心配なさらないでください王子。 もし、アズ様を害する方がおりましたら、私達が身をていしてでも守りますから」
「……それは、ありがたい……」
ヴィズは得意そうなアズの視線を横に、ぎこちなく微笑んで見せた。
シアの周りはそれこそ老若男女問わず集まっていた。
「姫様、よくぞ街まで来てくださいました」
注意をしないと、人獣と比べかなり小柄なシアは人並みに攫われるのでは? と、心配になったラースは、慌ててシアをしっかりとだけど潰さないように抱きながら隠そうとしていた。
「姫様、その方は?」
「えっと……夫……です」
少し言いにくいが、嘘をついてランディの名を呼べば、上手に嘘をつけないシアの言動はぎこちなくなるだろうからと、王様に言われた返事である。
「あらあらまぁまぁ!!」
「おめでとうございます」
「結婚はずっとしていましたわ」
「そりゃ、そうだがね。 わたしりゃには王族の決まりはわからないからねぇ……。 姫様が幸せそうに夫となる人とよりそって初めて、あぁ姫様はこの国の方と結婚したんだなと、喜べるんですよぉ!!」
そうだそうだと声が上がる。
「私達の姫様を頼むよ、王子様」
「言われずとも。 むしろ俺は、アンタ達に大切な妻を奪われるのではとヒヤヒヤしている最中だ。 手加減してくれ」
「それは、期待に応えられるか」
「だねぇ、何しろ姫様は滅多に王都に戻らないからねぇ」
「でも、ダメ、俺の愛すべき妻なのだから」
抱き上げ腕に乗せ、その頬を撫で、チュッと頬に口付けて見せれば、若い者から黄色い悲鳴があがり、年配者からはあらあらとほのぼのとした笑みが向けられる。
「姫様、わたしゃ嬉しいよ」
「愛されて良かったね」
次々贈られる祝福の言葉が……少しくすぐったく……夫だった人と違うんだけどと思えば、爪の先ぐらいは罪悪感を覚えた。
「余り、からかわないでくれよ……ようやく、仲良くしてもらえたんだからさぁ」
「はいはい、お祝いに馳走させてくださいな。 とは言え、まぁ、何時も出しているものですが。 皆!! 姫君と王子達を、おもてなしするよ!!」
おぉおお!!
なんて掛け声を上げられ……。
ヴィズも、セグも、セリアも……そして色んな街を歩いて回ったラースまで圧倒されていた。
アズはその景色にフフフと笑う。
アズは、少し離れた場所で女性特有の病の相談を受けていた。
アズがお茶や香辛料専門の店を開いたきっかけは、アズ自身が女性特有の病に悩まされていたためだ。 シアが色々と相談に乗っているうちにその分野に興味を持ったアズは勉強し、実験し、様々な結果を出し。 今では王族、貴族、庶民問わず女性達から高い支持を得ている。
「ヴィズ兄さん、アズ義姉様を見て下さい。 負けてますね。 色々と」
「ウルサイな……」
セグは笑い、そして言葉を続けた。
「アズ義姉様のような素敵な方は、滅多にいない……。 本当、果報者ですよ。 もう、馬鹿はやらないでください」
「分かってる……あぁ……本当に、早く目を覚まして、俺の味方になってくれ……弟二人の毒がキツイ……」
しみじみと祈るヴィズはランディの復活を望むのだった。
整備された道を馬車で行く。
ヴィズ、セグ、セリアには緊張が見られた。
牧草地を抜け、農業地区を通る。
王都周辺で作られているのは、小麦、サトウキビ、香辛料を中心に栽培。
「そう言えば、塩って何処から来るの?」
ギルモアには海が無いが、塩には困った事はない。
「塩は昔からギルモア一族の長が管理している」
そう答えたのはヴィズで、私が首を傾げると、溜息と共に言葉が続けられた。
「塩は貴重だからな、王が管理し、民に配給している。 例え、父上の大切な天使殿であっても気安く教える事はないだろう」
「シア、聞いて見ろよ。 簡単に教えてくれるかもだぞ?」
ラースがからかう様に言えばヴィズが睨みつけた。
「塩は他国から、何かを購入する時にも使える貴重なものだぞ!」
結果だけを言えば、アッサリと教えてもらえ……ヴィズはまた落ち込む事になるが、それは別の話だ。
農業地区を離れ、商業地区へと入る。 その向こうには工芸地区、住居地区と続くが今日の所は訪れる予定がない。 でも、いずれ日を改めて見学する事も大切だろう。
立派な馬車で商業地区に乗りつければ、王城で何かがあったと感じ取っただろう住民たちはピリピリとした緊張を伴い馬車を眺めた。
緊張感とは別に……誰も話をする者はいない。
3人の王子が馬車から降りれば、いっそう冷ややかな視線が注がれる。
それは恐怖なのだが……。
「どうにも、私達は嫌われているようだな」
そう視線を伏せながらヴィズは言うが、馬車の中のシアを抱っこしながら外に出し、その後にアズが姿を現せば、それこそ民の表情に大輪の花が咲いた。
歓喜のこもった声で声があがる。
「姫さまぁああ!! よくご無事でした」
「心配したんですよ~」
馬車を囲むように平服する民。
アズを取り囲みだす若い女性達。
余りの勢いにヴィズはアズを守った。
「もしかして、アズ様の王子様ですかぁ?」
「えぇ」
きゃぁああ!! と悲鳴が上がり、ヴィズは混乱していた。 それでもアズを守らなければと言う思いで、アズを背に隠せば、周囲はクスクスと笑った。
「ご心配なさらないでください王子。 もし、アズ様を害する方がおりましたら、私達が身をていしてでも守りますから」
「……それは、ありがたい……」
ヴィズは得意そうなアズの視線を横に、ぎこちなく微笑んで見せた。
シアの周りはそれこそ老若男女問わず集まっていた。
「姫様、よくぞ街まで来てくださいました」
注意をしないと、人獣と比べかなり小柄なシアは人並みに攫われるのでは? と、心配になったラースは、慌ててシアをしっかりとだけど潰さないように抱きながら隠そうとしていた。
「姫様、その方は?」
「えっと……夫……です」
少し言いにくいが、嘘をついてランディの名を呼べば、上手に嘘をつけないシアの言動はぎこちなくなるだろうからと、王様に言われた返事である。
「あらあらまぁまぁ!!」
「おめでとうございます」
「結婚はずっとしていましたわ」
「そりゃ、そうだがね。 わたしりゃには王族の決まりはわからないからねぇ……。 姫様が幸せそうに夫となる人とよりそって初めて、あぁ姫様はこの国の方と結婚したんだなと、喜べるんですよぉ!!」
そうだそうだと声が上がる。
「私達の姫様を頼むよ、王子様」
「言われずとも。 むしろ俺は、アンタ達に大切な妻を奪われるのではとヒヤヒヤしている最中だ。 手加減してくれ」
「それは、期待に応えられるか」
「だねぇ、何しろ姫様は滅多に王都に戻らないからねぇ」
「でも、ダメ、俺の愛すべき妻なのだから」
抱き上げ腕に乗せ、その頬を撫で、チュッと頬に口付けて見せれば、若い者から黄色い悲鳴があがり、年配者からはあらあらとほのぼのとした笑みが向けられる。
「姫様、わたしゃ嬉しいよ」
「愛されて良かったね」
次々贈られる祝福の言葉が……少しくすぐったく……夫だった人と違うんだけどと思えば、爪の先ぐらいは罪悪感を覚えた。
「余り、からかわないでくれよ……ようやく、仲良くしてもらえたんだからさぁ」
「はいはい、お祝いに馳走させてくださいな。 とは言え、まぁ、何時も出しているものですが。 皆!! 姫君と王子達を、おもてなしするよ!!」
おぉおお!!
なんて掛け声を上げられ……。
ヴィズも、セグも、セリアも……そして色んな街を歩いて回ったラースまで圧倒されていた。
アズはその景色にフフフと笑う。
アズは、少し離れた場所で女性特有の病の相談を受けていた。
アズがお茶や香辛料専門の店を開いたきっかけは、アズ自身が女性特有の病に悩まされていたためだ。 シアが色々と相談に乗っているうちにその分野に興味を持ったアズは勉強し、実験し、様々な結果を出し。 今では王族、貴族、庶民問わず女性達から高い支持を得ている。
「ヴィズ兄さん、アズ義姉様を見て下さい。 負けてますね。 色々と」
「ウルサイな……」
セグは笑い、そして言葉を続けた。
「アズ義姉様のような素敵な方は、滅多にいない……。 本当、果報者ですよ。 もう、馬鹿はやらないでください」
「分かってる……あぁ……本当に、早く目を覚まして、俺の味方になってくれ……弟二人の毒がキツイ……」
しみじみと祈るヴィズはランディの復活を望むのだった。
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