49 / 60
49.神の作りし精神の間
しおりを挟む
白い世界。
そこは賢者の集う『精神の間』
私達賢者は影のような姿で現れる。
そこは特別な夢で、特別な現実。
知り合いの賢者同士であれば特殊な魔法で連絡も取れるし、特殊な空間を使い荷物のやり取りもできる。 だが、この『精神の間』は過去も未来も現在も関係なく世界中の賢者が神の定めた基準に集い情報を交換する場所なのだ。
このような情報交換の場があるにもかかわらず、文明が停滞したままなのは……きっと賢者個人の力によるものだと思えば……人も、賢者も……賢者を作る神もまた変わらないのかもしれない。 等と、しみじみ思ったりするわけだ。
白い空間を歩けば、いくつもの影が見えた。
「人が多い……」
何時もは2.3人の賢者がいるだけなのに、今、私の目の前には数十人の賢者が集まっていた。 不思議……。
「あの~~」
声をかければ叱咤に近い声が返される。
「黙ってくれないか!! 今日は運よく感染症を語る空間に繋がったんだから」
病気の治療法かぁ……とシアは興味なさげに心で呟いたが、神の繋いだ空間だ……何か答えがここにあるのだろうと立ち止まり話を聞く事にした。
「彼は、前置きが長い」
そうぶつぶつ言う者もいるが、実際には人々の前に立つピラカと言う賢者の言う事は、神の意志に最も近いだろうとシアは考える。
「時の流れと共に、神が与えて下さった英知の塔はその数を減らしております。 私達は魔法に頼りすぎる事なく、正しい知識を世に広めなければなりません。 でなければ世界は再び原初へと戻るでしょう」
「そんな事より、魔法を!!」
一人が叫べば次々と叫んだ。
押され、ビックリしたシアが数歩後退りし倒れそうになれば、背後にいた1人の賢者が支えてくれた。
「大丈夫?」
優しい女性の声に大きく私は頷いて見せた。 女性は騒ぐ人々に巻き込まれないように身体を支えるようにしながらも、私の困惑を理解しているかのように、彼女は現状を説明してくれた。
「何処の時代でも撲滅が不可能で、定期的に流行る病の1つです。 私よりも以前の人が治療法を確定してくれれば、私は楽が出来るのだけど」
そう言って可愛らしく笑って見せた。 私より少しばかり先に生きる人なのだろうか? と、私も笑い返す。 まぁ、顔は見えないんだけど。 私は他の人の邪魔にならないよう一緒になって話を聞き、そして……彼の配る魔法を受け取る列に並んだ。
ギルモアで定期的に流行る性感染症は、菌と呼ばれる生物が原因なため普通の治癒魔法では効果がなく、感染原因となる病原菌に対する魔法が必要だと言う事だった。
この魔法を手に入るのはラッキーとしか言いようがない。
「流石、知積の賢者ピラカ殿だ……」
賢者ピカラは額に指をあて、魔法とそして薬の作り方が知識として流し込まれてくる。 結構難しいけれど、魔法で補助をすればいけなくもないと言う本末転倒……だから、医療として広がらないのだろうなと、魔法を授かると同時に消える人々を眺めながら思うのだった。
とは言え、私の目的はソレではなく……。
お互いの顔も見えないのに、私は賢者ピラカに愛想笑いをし、彼から魔法を受け取った人々に聞くのだ。
「すみません、人獣の共感に詳しい方は居ませんか~」
そう声をかけ続けた。
直ぐに声をかけてくれたのは、私を支えてくれた女性と、もう1人の女性だった。
「それで、どうしたのかな?」
「実は……」
私はドーラの状態を話し、何処かで聞いたことがないかと問いかけた。 ピラカ自身は専門外との話だったが、側に居た賢者が反応をしてくれた。
「状況だけで言えば、ソレは憑依ではないでしょうか?」
「でも、人が死ねば魂は神に召されるわ」
シアが首を傾げれば、目の前の影の女性も首を傾げた。
「死んで居なければ魂は召されませんよ」
「死んでいても、魂に合った身体があれば憑依は可能ですよ」
「生きている場合でも、思いの強さと才能があれば、原理的には可能なはずです。 私達もほら、今のこの状態は魂の状態ですから」
「ふむふむ……それを排除する術は、浄化魔法でしょうか?」
「浄化は魔喰には聞きますけど、人は人ですからねぇ……」
等と話しているうちに、私の姿が薄まって行った。
「シア、起きなさい」
そう言って私の身体を抱えているのは王妃様。
動揺と恐怖が顔に現れていた。
それと同時に、明らかな暴力の音が聞こえた。
ガンッ。
ドンッ。
ガツッ。
ランディに暴行を加えている……ジルの姿があった。
そこは賢者の集う『精神の間』
私達賢者は影のような姿で現れる。
そこは特別な夢で、特別な現実。
知り合いの賢者同士であれば特殊な魔法で連絡も取れるし、特殊な空間を使い荷物のやり取りもできる。 だが、この『精神の間』は過去も未来も現在も関係なく世界中の賢者が神の定めた基準に集い情報を交換する場所なのだ。
このような情報交換の場があるにもかかわらず、文明が停滞したままなのは……きっと賢者個人の力によるものだと思えば……人も、賢者も……賢者を作る神もまた変わらないのかもしれない。 等と、しみじみ思ったりするわけだ。
白い空間を歩けば、いくつもの影が見えた。
「人が多い……」
何時もは2.3人の賢者がいるだけなのに、今、私の目の前には数十人の賢者が集まっていた。 不思議……。
「あの~~」
声をかければ叱咤に近い声が返される。
「黙ってくれないか!! 今日は運よく感染症を語る空間に繋がったんだから」
病気の治療法かぁ……とシアは興味なさげに心で呟いたが、神の繋いだ空間だ……何か答えがここにあるのだろうと立ち止まり話を聞く事にした。
「彼は、前置きが長い」
そうぶつぶつ言う者もいるが、実際には人々の前に立つピラカと言う賢者の言う事は、神の意志に最も近いだろうとシアは考える。
「時の流れと共に、神が与えて下さった英知の塔はその数を減らしております。 私達は魔法に頼りすぎる事なく、正しい知識を世に広めなければなりません。 でなければ世界は再び原初へと戻るでしょう」
「そんな事より、魔法を!!」
一人が叫べば次々と叫んだ。
押され、ビックリしたシアが数歩後退りし倒れそうになれば、背後にいた1人の賢者が支えてくれた。
「大丈夫?」
優しい女性の声に大きく私は頷いて見せた。 女性は騒ぐ人々に巻き込まれないように身体を支えるようにしながらも、私の困惑を理解しているかのように、彼女は現状を説明してくれた。
「何処の時代でも撲滅が不可能で、定期的に流行る病の1つです。 私よりも以前の人が治療法を確定してくれれば、私は楽が出来るのだけど」
そう言って可愛らしく笑って見せた。 私より少しばかり先に生きる人なのだろうか? と、私も笑い返す。 まぁ、顔は見えないんだけど。 私は他の人の邪魔にならないよう一緒になって話を聞き、そして……彼の配る魔法を受け取る列に並んだ。
ギルモアで定期的に流行る性感染症は、菌と呼ばれる生物が原因なため普通の治癒魔法では効果がなく、感染原因となる病原菌に対する魔法が必要だと言う事だった。
この魔法を手に入るのはラッキーとしか言いようがない。
「流石、知積の賢者ピラカ殿だ……」
賢者ピカラは額に指をあて、魔法とそして薬の作り方が知識として流し込まれてくる。 結構難しいけれど、魔法で補助をすればいけなくもないと言う本末転倒……だから、医療として広がらないのだろうなと、魔法を授かると同時に消える人々を眺めながら思うのだった。
とは言え、私の目的はソレではなく……。
お互いの顔も見えないのに、私は賢者ピラカに愛想笑いをし、彼から魔法を受け取った人々に聞くのだ。
「すみません、人獣の共感に詳しい方は居ませんか~」
そう声をかけ続けた。
直ぐに声をかけてくれたのは、私を支えてくれた女性と、もう1人の女性だった。
「それで、どうしたのかな?」
「実は……」
私はドーラの状態を話し、何処かで聞いたことがないかと問いかけた。 ピラカ自身は専門外との話だったが、側に居た賢者が反応をしてくれた。
「状況だけで言えば、ソレは憑依ではないでしょうか?」
「でも、人が死ねば魂は神に召されるわ」
シアが首を傾げれば、目の前の影の女性も首を傾げた。
「死んで居なければ魂は召されませんよ」
「死んでいても、魂に合った身体があれば憑依は可能ですよ」
「生きている場合でも、思いの強さと才能があれば、原理的には可能なはずです。 私達もほら、今のこの状態は魂の状態ですから」
「ふむふむ……それを排除する術は、浄化魔法でしょうか?」
「浄化は魔喰には聞きますけど、人は人ですからねぇ……」
等と話しているうちに、私の姿が薄まって行った。
「シア、起きなさい」
そう言って私の身体を抱えているのは王妃様。
動揺と恐怖が顔に現れていた。
それと同時に、明らかな暴力の音が聞こえた。
ガンッ。
ドンッ。
ガツッ。
ランディに暴行を加えている……ジルの姿があった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2,331
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる