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1章
04.カラスが導く先 03
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貯水槽の上から晃を見下ろし、騒々しいほどに追いたてるように鳴きだすカラス。
呼ばれているような、助けを求められているような、そんな気がして貯水槽を上がる梯子に手をかける。 貯水槽の中を見下ろす扉は開いていて、水が流れ入る音に中を覗き込めば、白い花、花、花……惜しげもなく、散らされた花々と少女が一人、水の中にいた。
その姿は神秘的で……美しく、葬送を連想した。
なぜ、こんな所に……。
沈む左足は、拘束するための鎖が伸びており、その鎖はコンクリートの塊から延びている。
「おい、起きろ……。 諦めるな、ちゃんと立っていろ!!」
声をかければ、虚ろな視線がユックリと晃へと向けられる。 晃は、建設作業員の工具が置かれているだろう場所へと向かおうとした。
「余計な事をしないでよ!!」
そう叫ぶのは貯水槽の下にいる眼球がえぐり取られた少女。
あーー!!
一羽のカラスが、晃の思考を読んだようにペンチを持ってくる。 分かって持ってきたのかと思えば、ペンチだけでなく電動ドライバーやら、目についた工具と言う工具を手当たり次第運んできているのだから、理解はしていないのだろう。
その一つを手に取り晃は、コートを脱ぎ貯水槽の中へと飛び降りた。 水は冷たく、少女を肩に抱き上げるようにしながら、工具で足首を拘束していた鎖を捩じり壊す。
救急車と、他にも複数台の車両がやってくるのが音で分かった。
「大丈夫だ」
ボンヤリとしている少女に話しかけ、肩に担いだまま梯子を昇り外にでれば、少女に脱ぎ捨てておいたコートを着せる。
今も、本庄の叫び、泣く声が聞こえた。
反してカラスは恐ろしく静かに見守り、飛び回る。
救急隊員だろう人々が、カラスの誘導を追うように彼方此方捜索しているのが分かった。 そんな様子が音から伺え、そして数人の人間が貯水槽の側にまで来ていた。
警察官に似せた制服を来た男と、私服姿の男。
私服姿の男は、制服警備員に眼球を失った少女を連れていくように命じ、そして晃に声をかけてくる。
「大丈夫ですか?」
「いや、水に沈められ冷え切っている。 呼吸は浅く、鼓動は遅いが……命に別状はない」
そう告げながら、今度は貯水槽を降りていけば、声をかけてきた男は少女の顔を見て、首筋に触れる。
「彼女なら、問題はありません。 朦朧としているのは薬を飲まされたようですね。 そちらもすぐに効果は切れるでしょう。 住まいの方にお連れします。 貴方も、彼女も」
そう告げる青年は、全てを理解しているとでもいうようで晃はイラついた。 が、ソレは自分が触れている少女にとって必要な措置だからと、脳裏を駆け巡る言葉を飲み込んだ。
「大丈夫だから」
聞いているのか? 聞いていないのか? それでも晃は囁いていた。 その囁きにボソリと冷え震えた声が返される。
それは、とても甘く匂いたつような声だった。
「ありがとうございます……」
呼ばれているような、助けを求められているような、そんな気がして貯水槽を上がる梯子に手をかける。 貯水槽の中を見下ろす扉は開いていて、水が流れ入る音に中を覗き込めば、白い花、花、花……惜しげもなく、散らされた花々と少女が一人、水の中にいた。
その姿は神秘的で……美しく、葬送を連想した。
なぜ、こんな所に……。
沈む左足は、拘束するための鎖が伸びており、その鎖はコンクリートの塊から延びている。
「おい、起きろ……。 諦めるな、ちゃんと立っていろ!!」
声をかければ、虚ろな視線がユックリと晃へと向けられる。 晃は、建設作業員の工具が置かれているだろう場所へと向かおうとした。
「余計な事をしないでよ!!」
そう叫ぶのは貯水槽の下にいる眼球がえぐり取られた少女。
あーー!!
一羽のカラスが、晃の思考を読んだようにペンチを持ってくる。 分かって持ってきたのかと思えば、ペンチだけでなく電動ドライバーやら、目についた工具と言う工具を手当たり次第運んできているのだから、理解はしていないのだろう。
その一つを手に取り晃は、コートを脱ぎ貯水槽の中へと飛び降りた。 水は冷たく、少女を肩に抱き上げるようにしながら、工具で足首を拘束していた鎖を捩じり壊す。
救急車と、他にも複数台の車両がやってくるのが音で分かった。
「大丈夫だ」
ボンヤリとしている少女に話しかけ、肩に担いだまま梯子を昇り外にでれば、少女に脱ぎ捨てておいたコートを着せる。
今も、本庄の叫び、泣く声が聞こえた。
反してカラスは恐ろしく静かに見守り、飛び回る。
救急隊員だろう人々が、カラスの誘導を追うように彼方此方捜索しているのが分かった。 そんな様子が音から伺え、そして数人の人間が貯水槽の側にまで来ていた。
警察官に似せた制服を来た男と、私服姿の男。
私服姿の男は、制服警備員に眼球を失った少女を連れていくように命じ、そして晃に声をかけてくる。
「大丈夫ですか?」
「いや、水に沈められ冷え切っている。 呼吸は浅く、鼓動は遅いが……命に別状はない」
そう告げながら、今度は貯水槽を降りていけば、声をかけてきた男は少女の顔を見て、首筋に触れる。
「彼女なら、問題はありません。 朦朧としているのは薬を飲まされたようですね。 そちらもすぐに効果は切れるでしょう。 住まいの方にお連れします。 貴方も、彼女も」
そう告げる青年は、全てを理解しているとでもいうようで晃はイラついた。 が、ソレは自分が触れている少女にとって必要な措置だからと、脳裏を駆け巡る言葉を飲み込んだ。
「大丈夫だから」
聞いているのか? 聞いていないのか? それでも晃は囁いていた。 その囁きにボソリと冷え震えた声が返される。
それは、とても甘く匂いたつような声だった。
「ありがとうございます……」
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