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1章
06.カラスの導く先 05
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「はいはい、濡れたものはゴミ袋に突っ込んでおくか?」
こういったのは、作業現場となっているその場所に、派手な色をしたゴミ袋を発見したから。 数枚貰ったところで、窃盗だとかどうとか言われる事はないだろう。 言われたら本庄のせいにしようと心に決めて、3枚のゴミ袋(大)を引っ張りだしてきた。
「助かります」
後部座席、少女の横に乗り込む。
「ズボンは履かなかったのか?」
「えっと……。 その、下着を履いていませんから……」
恥ずかしそうに俯かれた。 気にするなと言って良いのかどうか……なんて考えていると、少女は会話を変えたかったらしく、少し前の質問に対する説明をしてきた。
「その……。 エリィの上司は私を保護してくださいましたの」
保護となれば、その裏に何かがあるのだろうがこれ以上聞くのも尋問染みている。 聞くつもりなら事情を知っている本庄に先に聞いた方が良いだろう。
「本庄の奴に、イジメられはしていないか?」
そう聞いたのは、過剰なまでの感情の揺らぎを見たから。
人が死んだのだから仕方がない。 そう言うものだ。 そう答える者は多い。 大半の者はそうだろう。 ただし、刑事をしていた晃にすれば、容姿を見れば家族には見えない相手のために激高するほど嘆き悲しむ事に違和感を覚えた。
彼女の嘆きは、誰か特定の人物ではなく血に濡れていた全員に向けられていたし、晃にとっては過剰で演技がかっていると思わずにいられなかった。
憐れみ深い?
同調性が高い?
身内なのか?
亡くなった少年少女。
助かったと言われた少年少女。
ソレ等に向けられた愛情とも思える反応と比べ、雫に向けられた感情が冷ややかに思えた。
……いや、流石にソレは考えすぎだな……。
「イジメ、ですか?」
僅かに赤味の差してきた顔で、雫は不思議そうに見つめ返してくる。
「えっと、ソレはどういう意味の言葉でしょうか?」
声に警戒が混ざっており、シマッタと思った。
「いや、俺自身が、騙されて連れてこられたんでね。 軽く悪戯ぐらいないなら日常的にしているのでは? と、思ったんだ」
「ぁ、えっと……鞍馬……晃さんですか?」
「ぇ、そうだが。 どうして?」
「お待たせ!!」
陽気な様子で新見が戻ってくれば、会話が止まった。
「先に彼女を送ってやってくれ。 いや、事情聴取があるのか?」
「事情を聞くのは後でいいから、まずは風呂でしょう風呂。 後、先に送らなくても寮の隣室同士だから、そこらへんは気にしなくていいよ。 で、自己紹介は済ませた?」
「いえ、今、鞍馬さんだと知ったので……」
「まだ、話辛そうね。 じゃぁ、俺が代わりに。 その子は児珠雫ちゃん。 彼女はアンタが護衛する相手ですよ。 呼び方は、雫ちゃんとか、姫とか、まぁ……色々ですね。 そこは好きに呼んでいいんじゃないかな? で、俺は新見親良、一応彼女の……本庄エリィの上司やってます」
「ほぉ、ならオマエがあの神経に障る計画を立てた相手か?」
「いや、ソレは現場に任せているから」
慌てた様子で逃げているように感じた。
「あ、あの、姫は、止めてくれると嬉しいです」
縋るように言われて、意識が新見から雫へと移った。
「ぇ、ぁ、まぁ、馬鹿にされている感じがするよな」
「……」
「いや、馬鹿にしている訳ではないんですよ。 小さな頃から知っているからですよ。 それに、親に姫と名付けられた子に謝ってください」
「……そうね……そういう名前の人と出会ったら、謝っておくわ……」
「じゃぁ、俺もそういう事で」
肩を竦めながら言えば、少しだけ笑っていた。
この時点で、死者4名、重軽症4名。
気にはなる事は多いが……元刑事だったからこそ、何にでも口出しをする事がためらわれた。
こういったのは、作業現場となっているその場所に、派手な色をしたゴミ袋を発見したから。 数枚貰ったところで、窃盗だとかどうとか言われる事はないだろう。 言われたら本庄のせいにしようと心に決めて、3枚のゴミ袋(大)を引っ張りだしてきた。
「助かります」
後部座席、少女の横に乗り込む。
「ズボンは履かなかったのか?」
「えっと……。 その、下着を履いていませんから……」
恥ずかしそうに俯かれた。 気にするなと言って良いのかどうか……なんて考えていると、少女は会話を変えたかったらしく、少し前の質問に対する説明をしてきた。
「その……。 エリィの上司は私を保護してくださいましたの」
保護となれば、その裏に何かがあるのだろうがこれ以上聞くのも尋問染みている。 聞くつもりなら事情を知っている本庄に先に聞いた方が良いだろう。
「本庄の奴に、イジメられはしていないか?」
そう聞いたのは、過剰なまでの感情の揺らぎを見たから。
人が死んだのだから仕方がない。 そう言うものだ。 そう答える者は多い。 大半の者はそうだろう。 ただし、刑事をしていた晃にすれば、容姿を見れば家族には見えない相手のために激高するほど嘆き悲しむ事に違和感を覚えた。
彼女の嘆きは、誰か特定の人物ではなく血に濡れていた全員に向けられていたし、晃にとっては過剰で演技がかっていると思わずにいられなかった。
憐れみ深い?
同調性が高い?
身内なのか?
亡くなった少年少女。
助かったと言われた少年少女。
ソレ等に向けられた愛情とも思える反応と比べ、雫に向けられた感情が冷ややかに思えた。
……いや、流石にソレは考えすぎだな……。
「イジメ、ですか?」
僅かに赤味の差してきた顔で、雫は不思議そうに見つめ返してくる。
「えっと、ソレはどういう意味の言葉でしょうか?」
声に警戒が混ざっており、シマッタと思った。
「いや、俺自身が、騙されて連れてこられたんでね。 軽く悪戯ぐらいないなら日常的にしているのでは? と、思ったんだ」
「ぁ、えっと……鞍馬……晃さんですか?」
「ぇ、そうだが。 どうして?」
「お待たせ!!」
陽気な様子で新見が戻ってくれば、会話が止まった。
「先に彼女を送ってやってくれ。 いや、事情聴取があるのか?」
「事情を聞くのは後でいいから、まずは風呂でしょう風呂。 後、先に送らなくても寮の隣室同士だから、そこらへんは気にしなくていいよ。 で、自己紹介は済ませた?」
「いえ、今、鞍馬さんだと知ったので……」
「まだ、話辛そうね。 じゃぁ、俺が代わりに。 その子は児珠雫ちゃん。 彼女はアンタが護衛する相手ですよ。 呼び方は、雫ちゃんとか、姫とか、まぁ……色々ですね。 そこは好きに呼んでいいんじゃないかな? で、俺は新見親良、一応彼女の……本庄エリィの上司やってます」
「ほぉ、ならオマエがあの神経に障る計画を立てた相手か?」
「いや、ソレは現場に任せているから」
慌てた様子で逃げているように感じた。
「あ、あの、姫は、止めてくれると嬉しいです」
縋るように言われて、意識が新見から雫へと移った。
「ぇ、ぁ、まぁ、馬鹿にされている感じがするよな」
「……」
「いや、馬鹿にしている訳ではないんですよ。 小さな頃から知っているからですよ。 それに、親に姫と名付けられた子に謝ってください」
「……そうね……そういう名前の人と出会ったら、謝っておくわ……」
「じゃぁ、俺もそういう事で」
肩を竦めながら言えば、少しだけ笑っていた。
この時点で、死者4名、重軽症4名。
気にはなる事は多いが……元刑事だったからこそ、何にでも口出しをする事がためらわれた。
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