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5章

61.コレクター 02

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「どう、見ますか?」

 新見の問いかけを無視して、晃は、飾ってあるのは18体の像に近寄って行く。

 薄暗い明かりの中、仏像が身に着けているようなインド風の法衣を着ていたため、仏像を模していると思っていたが……近づけはソレがもっと奇怪な存在だと分かる。

「手が多い、顔が覆いのが可愛くすら見える……」

 身体中に穴があけられ、瞼がつくられ目や宝石のようなものが嵌め込まれている。 まぁ、当然……義眼だし、宝石ではなくガラスだ。 肌には模様が入れられている。 仏教に詳しくはないが……多分何の意味も持たないだろう。

「誰もが分かるような事しか、わからんよ俺は……」

 晃は溜息をつく。

 後ろから、雫が腰に手を回して抱き着いたまま。

 死体の群れに落ち着かず、イライラと不安定になり……自分が自分ではなくなるような感覚が、雫のぬくもりによってギリギリ止められているような感じがしていた。

「新見」

「なんですか?」

「こんなものを見て、良く正気でいられるな」

 晃の言葉に新見だけではなく、他の者達も声に出さずに笑う。 何かオカシイ事をいったか? と不安になるが、腰に回された手が、俺の気持ちに反応するかのように不安を告げてくるのだ……。

「大丈夫だ」

 そういうしかないだろう。

 本当なら怖いなら戻っていろ。 そう言ってやれないのが辛いところだ。

「分からなくても確認ぐらいにはなります。 ソレにアナタにとっては貴重な人生経験になるでしょう」

「こんな人生経験なんて、いらねぇよ」

 頭をポリポリとかく……。

「まず、犯人は医者じゃねぇ。 少なくとも、刃物を使い慣れてはいないし。 肉を切る事にも慣れていない。 最初と新しいのでは断面が違う。 ここに飾れるようになるまでにも、多く殺している。 最初と、多分、次の奴……肉、皮の切り方、縫い合わせ方、彫り方、装飾品の出来具合、全てにおいて成長がみられる。 全部犯人のお手製だ。 最初はもっと酷くて、犯人が作りたいものは作れなかっただろうな……最初のですら、形を成したのは奇跡だし、彫りが放棄されている。 いや……本人としては納得いかなかったが、時間が無かったのか?」

 鑑識から手袋を借り、晃はそっと法衣を脱がせた。

 後ろに隠れて抱き着いている雫の腕に力が込められるが……晃の意識はまっすぐに死体に向かっていた。

「はっははははは、コレは勘弁して欲しいな……」

 笑うしかない。

「どうした?」

「中心部分に使われている人間は、骨格から見て男だ。 だが、ほら見てくれ、股間にあるべきものが無い。 犯人が目指したものは無性と言う存在らしい」

 背後からもうへぇと言う声が聞こえる。

 他の部屋を調べていたらしい新見の部下が報告をする。

 他の部屋には、ばらされた、手、足、頭……ようするに、装飾品として使われているのが発見されたと言う話だった。

「なぁ、ちょっとアンタ……」

 側にいる鑑識に声をかけた。

「なんですか?」

「この装飾品を調べてくれないか……もしかすると、人間の骨で作られているのかもしれない……」

 スンッと晃は匂いを嗅ぐ。

「内臓は抜かれ、香木が入れられているようだな……。 内臓はどうした?」

 晃は新見へと視線を向ける。

「病院が引き取っていると言う事はありませんね。 新しい死体は、ほら……入れ墨を掘られ、色々埋め込まれてはいますが、本来の顔の面影がある。 加工自体を変えたのでしょう。 この人は……末期のがん患者でした覚えがあります。 分かる分だけでも、照合をかけて下さい」

 晃は全体を見渡すために、正面を向いたまま後ろに下がりだせば、今も抱き着いたままの雫も一緒にバック状態で一緒に下がり、そして足をカクンとつまづかせ転びそうになり、晃が抱えあげた。

「気をつけな。 部屋は綺麗に作られているが。 所詮は岩盤を掘って作られた空間だ」

 雫が躓いた足元を見れば、その部分だけ岩が滑らかになっている……ような気がする。

「コレは、犯人にとって信仰の対象物って事か?」

 ソコで幾度となく人が座っていたのだろう。 地面の具合が他とは違う。

「いや、違う……。 死体の視線が一点に、ココに集まっている。 もし、アレ等が犯人にとって神なら、とても嫌な気分になるだろう。 犯人にとっては自分こそが神を生み出した創造主なのか?」

「あの……」

「あぁ、悪い持ったままだったな」

「いえ、そうではなく……私、コレを見た事があります」

 一斉に視線が集まる。

「何処で?!」

 彼方此方から声が雫に投げかけられた。

「多分、ここに居る何人かは身に覚えがあると思いますよ……」

 言われて誰もが理解した。



 これは、岬加奈子の絵を真似ているのだと……。

 真似だ。
 真似でしかない。

 ただ、この時点で岬加奈子自体が手を下したと言う可能性は0だ。 年齢的にも難しいが、岬加奈子自体本人の芸術活動が忙しく、授業以外の時間を、ここに居る雫と共に過ごすと言う事が多かったからだ。
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