戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石

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第14話 『よく頑張ったな』

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あたしは、まず村の人たちに助言をする。

「皆さん!こちらが優勢になりました!!2人がかりで戦ってください!!」

「「「分かりました!!」」」

村の人たちが襲撃者1人に対して2人一組で相対する。

「しゃらくせぇ。てめぇら、やっちまえ!!」

「「おう!!」」

アニキ分の激に答える子分たち。

「あなたたち、覚悟しなさい!」

あたしは、目の前の敵の注意を引くために挑発をする。

「ふん。馬鹿が。こっちにはまだ大勢いるんだ。誰がビビるってんだよ」

「ぐっ」

アニキ分が良い終えるとあたしを吹き飛ばす。

すぐに態勢を整えないと!

あたしは、急いで追撃に備える。

だが、相手はあたしのところに来ずに既に他の村人の方に向かっていた。

まさか!あたしは急いで追いかける。

「だめぇぇぇ!」

「おらぁ!」

「ぐぁぁぁぁ」

あたしの叫びもむなしく、アニキ分は村人の1人を斬りつけ戦闘不能にすると、
それに乗じて別の襲撃者がもう1人の村人を斬りつけた。

「ぐふっ」

もう1人の村人も戦闘不能になる。

「おい!あとのやつらもやっちまえ!」

「へい!アニキ!!」

襲撃者に指図し、アニキ分が駆けつけるあたしに向き直る。

「いい戦法を教えてくれてありがとよ!さぁ、お寝んねの時間だ」

そういうと、これまでがお遊びだったかのような殺気を出し、あたしを見据えてきた。

「くっ」

あたしの意思に反して手が震えだす。

「どうしたぁ?早くかかってこいよ」

アニキ分が一歩踏み出す。

逆にあたしは恐怖で一歩下がってしまう。

その繰り返しでとうとうあたしの背に木が当たるところまで追いつめられてしまった。

・・・ここまでか。

何とかのらりくらりとやり過ごしたかったが、やはり相手の方が数段上だったようだ。

時間さえ稼げれば、アリスが呼びに言ってくれている増援が間に合うかもという淡い期待をしていたが世の中そんなに甘くなかったみたいだ。

そんなときだった。現実はもっと厳しいと思い知ったのは。

「「「ぐぁぁぁぁぁ」」」

突如として悲鳴が響き渡る。

残った3人の村人が一斉に矢によって戦闘不能になったのだ。

「な!」

あたしが驚愕の声を上げる。

アニキ分はちらっと後ろを見るとニヤリと笑い。

「おう、遅かったなお前ら」

襲撃者の増援を笑顔で迎え入れた。

「お前たちこそ、遅いぞ。村人たちが立てこもっているあの建物の裏側を制圧して中に押し入る手はずだったのに、あまりに遅いから周辺の警戒網を薄くしてまで来てしまったじゃないか」

出てきた増援は5人。皆弓を携えていおり、その中の1人が文句を言う。

「悪かったな。変なガキが余計なちょっかい掛けて来てな。ちょいと時間がかかってしまった」

「ほう」

アニキ分の言葉に増援組の1人があたしを舐めるように見る。

ぞわ

あたしは生理的な嫌悪で鳥肌が立つ。

「上玉だな。気絶させて俺に寄越せ」

「なんだぁ、おめぇやっぱり変態だな。ガキが趣味なのか?」

「ああ。この位が丁度良い」

あたしを見て舌なめずりまでしてくる。

冗談じゃない。あんなやつの慰みものになるくらいなら潔く戦って死ぬ。

「ぐあぁぁぁぁ!」

あたしは、手近にいた襲撃者の1人の虚をついて斬りつける。

そしてもう1人に向かう瞬間、あたしの左足に何かが当たる。

「うぐっ」

見やると矢が刺さっていた。認識すると痛みがどんどん増してくる。

「くくく。お転婆だな」

変態野郎が楽しそうに笑う。

あたしは痛みをこらえ、もう一人の襲撃者を斬り伏せる。

「ぐぅ」

今度は、左腕に鋭い痛みが走る。

「しぶといな」

変態野郎がそれでもなお楽しそうに笑う。

あたしはもう一度歯を食いしばり、遠巻きに成り行きを楽しそうに見ていた襲撃者に渾身の力で剣を投擲して戦闘不能にする。

「おいたが過ぎるな」

「がはっ」

今度は右足に痛みが走り、立っていられなくなり地面に倒れる。

あたしは、すぐさま短剣を抜き、構える。

「おい。もう我慢の限界だ。俺が殺す」

アニキ分が前に出る。

「なんだと!?」

変態野郎が突っかかるが、アニキ分が睨みをきかすと途端に大人しくなる。

「てめぇはやり過ぎた。大人しくしていれば、この変態に可愛がられて死ぬことだけはなかったというのにな」

アニキ分が鉈を振り上げる。

(お父さん、お母さん、親不孝な娘でごめんなさい。あたしは、最期まで勇敢に戦って逝きます!)

鉈が振り下ろされると同時にあたしは痛みを堪え、飛び掛かりながら防御など考えず、相討ち覚悟で短剣を突き出す。

眼前に迫る鉈。流石に怖くなって目を瞑る。その代わり右手の短剣を前に出す。

とその時だった。

野太いながらも包み込むような優しい・・・一生忘れられない声が聞こえたのは。



「よく頑張ったな。大した娘だ」


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