「完全分離のはずでしたが、義妹が毎日子供を置いていきます」

「完全分離のはずでしたが、義妹が毎日子供を置いていきます」

玄関は、別
鍵も、別
水の音も、食卓の匂いも
交わらないはずの設計図

けれど朝になると
境界線はやわらかくなる

ピンポンは鳴らない
ノックもない
ただ、開く音だけがして
小さな靴が、こちら側に増える

「ちょっとだけ」
その言葉は
日付のない約束みたいに
毎日を連れてくる

机の上の仕事は
途中で息を止める
画面の向こうの誰かに
謝る回数だけ、私が減っていく

完全分離、という言葉を
何度も口の中で転がしてみる
角ばっていたはずの意味は
いつのまにか丸くなって
どこへでも転がっていく

「家族でしょ」
そう言われるたび
私の輪郭が、少しずつ薄くなる

ドアは、閉めている
鍵も、かけている
それでも毎日
こちら側に置かれていくものがある

子供と
時間と
名前のない役割

境界線は、見えない
けれど確かに
踏み越えられている

私は今日も
その線をなぞり直す

消えないように
消されないように
自分のために

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