『首輪を贈られた花嫁は、本物の聖女でした ~奪われた魔力と心を取り戻します~』

『首輪を贈られた花嫁は、本物の聖女でした』

婚約の日、
あなたは指輪といっしょに
首輪をくれた。

「守るためだよ」と
やさしい声で。

その声が
いちばんきつく
私の喉を締めつけていたなんて
あの頃の私は知らなかった。

夜ごと熱を帯びる金具。
朝には立てない体。
減っていく魔力を
「努力不足」と呼ぶあなた。

光に包まれる幼馴染は
涙を浮かべて言った。

「かわいそうに。
あなたには祝福がないのですね」

祝福がないのは
どちらだったのだろう。

私の胸は空っぽになっていった。
時間も、労働も、愛情も、
目に見えない魔力も。

すべて
あなたたちの光の燃料になっていた。

やがて心が消えた日、
私は森へ歩いた。

逃げたのではない。
ただ、もう
縛られる力が残っていなかっただけ。

森は静かだった。
誰も数値を測らない。
誰も期待しない。
誰も嘲らない。

そこで初めて、
私は自分の鼓動を聞いた。

「これは吸収の魔術だ」

穏やかな声が告げる。
首輪の内側に刻まれた
契約の文字。

守るためではなく、
奪うための祝福。

外された瞬間、
世界が息をした。

光が溢れたのではない。
ただ、
私の中にあったものが
私のもとへ戻ってきただけ。

森が揺れ、
精霊がひざまずき、
空が澄んだ。

そのときようやく知った。

聖女は
光を与えられる者ではない。

奪われてもなお
消えなかった者だ。

王都であなたは叫ぶだろう。
「僕が守ってやっていた」と。

違う。

私は
奪われていただけ。

指輪も、首輪も、
もういらない。

私の喉は自由だ。
私の魔力は私のものだ。
私の光は
誰かのために燃やされる薪ではない。

祝福は
選んで差し出すもの。

私は今日、
はじめて
自分を祝福する。

首輪はもうない。

それでも私は、
まだ
こんなにも
光っている。

24h.ポイント 1,790pt
0
小説 739 位 / 218,342件 ファンタジー 114 位 / 50,613件

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

王子様への置き手紙

あおき華
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯ 小説家になろうにも掲載しています。

地味な私では退屈だったのでしょう? 最強聖騎士団長の溺愛妃になったので、元婚約者はどうぞお好きに

有賀冬馬
恋愛
「君と一緒にいると退屈だ」――そう言って、婚約者の伯爵令息カイル様は、私を捨てた。 選んだのは、華やかで社交的な公爵令嬢。 地味で無口な私には、誰も見向きもしない……そう思っていたのに。 失意のまま辺境へ向かった私が出会ったのは、偶然にも国中の騎士の頂点に立つ、最強の聖騎士団長でした。 「君は、僕にとってかけがえのない存在だ」 彼の優しさに触れ、私の世界は色づき始める。 そして、私は彼の正妃として王都へ……

あなたの愛はいりません

oro
恋愛
「私がそなたを愛することは無いだろう。」 初夜当日。 陛下にそう告げられた王妃、セリーヌには他に想い人がいた。

幼馴染を溺愛する旦那様の前からは、もう消えてあげることにします

睡蓮
恋愛
「旦那様、もう幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

嫌われたと思って離れたのに

ラム猫
恋愛
 私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。  距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。

真実の愛を見つけた王太子殿下、婚約破棄の前に10年分の王家運営費1.5億枚を精算して頂けます?

ぱすた屋さん
恋愛
「エルゼ、婚約を破棄する! 私は真実の愛を見つけたのだ!」 建国記念祭の夜会、王太子アルフォンスに断罪された公爵令嬢エルゼ。 だが彼女は泣き崩れるどころか、事務的に一枚の書類を取り出した。 「承知いたしました。では、我が家が立て替えた10年分の王家運営費――金貨1億5800万枚の精算をお願いします」 宝石代、夜会費、そして城の維持費。 すべてを公爵家の「融資」で賄っていた王家に、返済能力などあるはずもない。 「支払えない? では担保として、王都の魔力供給と水道、食料搬入路の使用を差し止めます。あ、殿下が今履いている靴も我が家の備品ですので、今すぐ脱いでくださいね?」 暗闇に沈む王城で、靴下姿で這いつくばる元婚約者。 下着同然の姿で震える「自称・聖女」。 「ゴミの分別は、淑女の嗜みですわ」 沈みゆく泥舟(王国)を捨て、彼女を「財務卿」として熱望する隣国の帝国へと向かう、爽快な論理的ざまぁ短編!

地味で無才な私を捨てたことを、どうぞ一生後悔してください。

有賀冬馬
恋愛
「お前のような雑用女、誰にでも代わりはいる」 そう言って私を捨てたディーン様。でも、彼は気づいていなかったのです。公爵家の繁栄を支えていたのは、私の事務作業と薬草の知識だったということに。 追放された辺境の地で、私はようやく自分らしく生きる道を見つけました。無口な辺境伯様に「君がいなければダメだ」と熱烈に求められ、凍っていた心が溶けていく。 やがて王都で居場所をなくし、惨めな姿で私を追いかけてきた元婚約者。 「もう、私の帰る場所はここしかありませんから」 絶望する彼を背に、私は最愛の人と共に歩み出します。

処理中です...